新体操W杯ウズベキスタン大会レポート3

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日本(フェアリージャパンPOLA)、ボール&リボンで銅メダル!! 3大会連続のメダル獲得!

現地5月24日、新体操W杯ウズベキスタン大会(タシケント)最終日は団体種目別決勝と、個人種目別決勝が行われた。昨日は、アゼルバイジャンの演技後、イタリアが随分と待たされて調子を崩し、総合6位に沈んだが、今日も大荒れの模様であった。

<団体種目別決勝・クラブ>
試技順1番はイスラエル。交換や連係で若干の移動はあったが、うまく抑えて17.050。
試技順2番はアゼルバイジャン。ほぼミスのない演技で17.150と、わずかにイスラエルを上回った。
試技順3番はウズベキスタン。連係や交換、DERでも落下し、14.050。
試技順4番はロシア。主力メンバーをケガで欠いているが、難易度の高い技に次々と挑戦していく。しかし、連係や交換の投げのスピードがあり過ぎるため(構成上)、選手たちは気が抜けない状態。せっかく楽しい曲なのに、矢のように飛んでくるクラブをキャッチするのに必死である。いくつか不正確なキャッチがあり、ついには交換で落下。落下したクラブが場外に出て、痛恨のミス。17.050で、この時点で2位タイとなってしまった。
試技順5番はイタリア。落下ミスはなかったが、クラブをキャッチする際の待ち姿勢に隙がある。キャッチに移動もみられ、16.900。
そして日本(フェアリージャパンPOLA)が登場。総合の時と比べると、前半からバラツキが見られた。交換が一カ所短くなり、走って移動してキャッチ。16.800。総合では落下したが、今日はなんとしてもキャッチしたため、16点後半の点数を得ることができた。
試技順の最後はベラルーシ。連係や交換で落下し、総合の時と同様、後半でガタガタと崩れていった。16.100。

クラブ成績
1位アゼルバイジャン 17.150
2位イスラエル 17.050
2位ロシア 17.050
4位イタリア 16.900
5位日本 16.800
6位ベラルーシ 16.100
7位ウズベキスタン 14.050

1位のアゼルバイジャンから5位の日本までの得点差が0.350という僅差の戦いとなった。

<団体種目別決勝・ボール&リボン>
試技順1番はベラルーシ。ステップ時にボールを落下。交換の前にもボールを落下し、交換が不正確になった。フェッテピボットもバラバラになり、そのほかリボンを落下したり、ラストもボールを落下するなど、作品の全体像がまったく見えない状況となってしまった。13.800
試技順2番はイタリア。連係から移動する際、リボンを置いてくる形になる場面があった。またリボンの両手取りやボールの両手取りが多く、16.750。日本にメダルの可能性が出てきた。
試技順3番はアゼルバイジャン。キャッチに移動は見られたが、落下ミスはなかった。が、選手の一人が、膝に黒いサポーターをしたまま演技しており、服装の減点が0.3入った。16.500。
試技順4番はイスラエル。総合の時と同様、大きなミスもなく、試合での強さを感じさせた。17.300で、この時点で1位。
試技順5番は日本。総合の時には両手取りが多かったが、選手たち自身が、「今日は片手に挑戦する」と決め、その通り、プログラム通りにやろうとする姿勢が見えた。足でキャッチする場所は足で、手以外で操作するところは手以外で、というふうに、ていねいに演技した。交換で若干移動があったが、17.000で、この時点で2位。イスラエルより上を行きたかったが、交換の移動の差が出たかもしれない。
試技順6番はロシア。交換の移動や、不正確なキャッチが2カ所ほどあったのと、DERで落下があり、17.300。なんとかイスラエルと同点の1位を獲得したが、ロシアとしては不本意な結果となった。
試技順の最後は地元ウズベキスタン。交換で大きく移動してキャッチしたり、連係での落下や移動が続き、14.000。作品は非常に工夫があり、エネルギーのある動きをしているので、ミスがなくなってくれば上位に食い込んでくるだろう。

ボール&リボン成績
1位イスラエル     17.300
1位ロシア 17.300
3位日本 17.000
4位イタリア 16.750
5位アゼルバイジャン 16.500
6位ウズベキスタン 14.000
7位ベラルーシ 13.800

日本はW杯リスボン大会、W杯ペサロ大会、W杯タシケント大会と3大会連続でメダルを獲得することができた。しかし、喜んでばかりもいられない。イスラエルやアゼルバイジャンの位置にはいけるはずであり、中堅のトップに立っていかなければならないだろう。
現在のルールでは、ミスに対する減点が厳しい。ロシアやイタリアといえどもミスが続けば、簡単に中堅の下になる時代となった。どのチームにもメダルの可能性があり、どのチームも下位に沈む可能性がある。こんな時代だからこそ、実施レベルを上げ、質の良いチームとなっていくことで、勝てるチャンスが大きくなってくると言えよう。

クラブ出場者
畠山愛理
松原梨恵
国井麻緒
熨斗谷さくら
横田葵子

ボール&リボン出場者
畠山愛理
松原梨恵
杉本早裕吏
国井麻緒
熨斗谷さくら

<個人種目別決勝>
ボールのファイナルに登場した早川さくら。両脚のかかとを上げた状態でポーズをとったが、曲がなかなか鳴らず、ずいぶん待った。しかし、音が鳴ってからは落ち着いて演技し、総合の時にはできなかった出だしのMもしっかりと決めた。伸びやかさや動きの大きさもあり、16.850。同じくミスをしなかったイスラエルのVeinbergを破り、順位をひとつあげた。(7位)
クラブのファイナルに出場した皆川夏穂。スケジュール的には、団体のクラブのあとの試技順1番であったが、昨日のイタリアチームと同様、ずいぶんと出番を待たされる形となった。団体のイスラエルチームが、レオタードに国旗をつけていない選手がいたとの情報があり、服装の減点を入れるか否かの検証をしているようであった。何度もビデオを見たりしているが、今回も会場、観客へのアナウンスがまったくないため、いつ準備に入ったらいいのかわからない。そして皆川は、前半のももでクラブをはじく技で落下。中盤の非常に難しい技、ジャンプ時にももでクラブをはじきながら、もう1本を投げ上げる技で、大きくクラブが分かれてしまった。1本は場外まで飛んでしまい、14.700。この種目では、イスラエルのRivkinやロシアのKudryavtsevaまでもが数回の落下ミスを犯したが、みな完全に試合へのテンポを失っているように見えた。
最後の種目リボンにも登場した皆川は、パンシェターンのぐらつきやリボンのからみなどがあったが、どうにか大きなミスは防ぎ、16.600で6位となった。

フープの種目を制したのはKudryavtseva。出だしのジャンプでフープをキャッチしながらくぐり抜けし、そのまま投げ上げる技で少しミスが出たが、全体的には工夫をこらした手具操作で観客を魅了した。
ロシアのMamunは、Kudryavtsevaよりも良い出来で、スピーディーでしなやかな演技を繰りひろげた。しかしラスト間際のフープの持ち替えで落下。フープが場外に出てしまうミスが出て、メダルを逃した。
ボールの種目を制したのもKudryavtseva。回転をしながら転がしながらのキャッチや、ジャンプをしながら逆手でのキャッチなど、あり得ないキャッチの数々を見せ、トップに立った。
Mamunは、ボールでも最後にミスが出た。ジャンプでの胸打ちでボールが前に行きすぎ、どうにかキャッチしたが2位となった。Mamunは難度の精度も動きの深さもエネルギーもすばらしく、気持ちも前に前にと向いているため、感情と動きとのバランスがほんの少し合っていない気がした。乗りすぎて失敗をするというパターンである。新体操のすばらしさを存分に発揮しているだけに惜しいミスであった。そのため、クラブでは少し押さえた感じで演技をしていた。物足りなさは感じたが、ミスはなく、失敗をしたKudryavtsevaにかわって、金メダルを獲得した。
そして最終種目リボンでもKudryavtsevaにミスが出た。Mamunは、動きのメリハリがあり、リボンが生き物のように動いており、「素敵」という言葉がぴったりの演技であった。Mamunがこのリボンを制し、MamunとKudryavtsevaで2種目ずつを分けた。

皆川、早川と2人そろってのファイナル出場は初めてのことであり、またひとつ階段を上がった。これからファイナル出場という目標からもうひとつ上に行くためには、しっかりと感情を表現しアピールしていくことも重要になってくるであろう。
今大会は、試合の運営の問題で、選手たちにとってはコンディションを整えるのが難しい大会であったろう。だが、どんな状況でもやれるという強さを養っていくことが必要なのかもしれない。

来週はW杯ミンスク大会が行われ、団体、個人の皆川、早川が出場する。

レポート 山﨑浩子

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