新体操 WCCグルジュナポカ大会2024レポート
【主な出場選手: 個人のみ】
VARFOLOMEEV Darja(GER)/ KOLOSOV Margarita(GER)/ONOFRIICHUK Taisiia(UKR) ATAMANOV Daria (ISR)/ BAUTISTA Alba(ESP) / PIGNICZKI Fanni(HUN)/
KALEYN Boryana(BUL) / NIKOLOVA Stiliana(BUL)/ DOMINGOS Barbara(BRA) 等
パリオリンピック出場選手15名含む、42名、24カ国
鈴木菜巴 総合25位
●フープ D14.00 (DB7.90/DA6.10) A7.40 E7.05 P0.30 合計28.100
課題であったバランスは静止も見え順調に進めたが、2つ目のリスクの脚受けで、弾いてしまい、わずかにラインを超える。すぐに取り戻したが、次にくるリスクが練習でも不安定であったことに不安がよぎった。前に大きく投げてしまい、手で受けその後もなんとか踏ん張り、ラストに音楽が余りそうなところを、咄嗟の判断で軸回しのDAを追加し、音楽に合わせて終えた。
曲は、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』盲目の女性に起こる悲劇を描いた映画の主題歌である。
●ボール D14.90 (DB9.30/DA5.60) A7.70 E6.95 合計29.550
この作品は2年目となるが何度も練り直してきたものだからこそ自信もある。難易度の高いリスクや、課題であったジャンプやバランス難度においても、改善の成果がみえたが、フェッテバランスの転がしで落下。その中でも、続くラストの脚での突き返しのリスクは成功。長い年月諦めず取り組んできたことに、ようやく安定感が見えた。
●クラブ D14.50 (DB10.30/DA4.20) A6.50 E5.95 P0.15 合計26.80
自らの力で気持ちを切り替えて取り組んだ。2年目となる『ラ・ラ・ランド』であるが、少しずつ難易度を上げながら挑戦してきた。直前練習からキレも良く、挑戦も安定感に見えるほどであった。
各難度を順調にこなしていたが、2つ目のステップからポロリと落下が続き、音楽は残りわずか。最後に挑戦を決めていた技は、思いのまま動いてしまい、結果、手具なし、音楽不一致となり、大きく得点を下げることとなった。
●リボンD13.40 (DB9.20/DA4.20) A7.95 E7.60 合計28.950
最後の種目となり、やりきるしかない状況であった。動きは良い状態であったので、ひるまずフロアに向かった。落下なく演技を終えることができたものの、リボンの描きが不十分なところ、身体難度中の操作において不正確な箇所があった。
今大会、決して調子が悪いということではなかった。ミスの原因はいくつか見えている。次に修正することで、良い経験に変えていきたい。
鶴田芽生 総合27位
●フープ D14.30 (DB9.50/DA4.80) A7.40 E7.45 合計29.150
強い緊張感の中にも落ち着きがあり冷静に演技を進めた。ジャンプターンのリスクの投げがいつもより内側に入り、ヒヤリとしたがよく見て対応できた。側転のリスクの足投げで軌道が乱れたため、ミスを回避するために加点を無くした。
イリュージョンのリスクの足投げも前方へ流れてしまったことにより、加点が入れきれなかった。
粘り強く対応できていたが、全体的には落下ミスを防ぐための対処に追われる演技となった。
●ボール D16.20 (DB10.40/DA5.80) A7.90 E7.60 合計31.700
DBのフォームに意識しながら、まとめきることができた。リスクのキャッチでは、ミスを回避するために両手取りになることや当初予定していた加点が入り切らなかった。
転がしのDAでは、正確性に欠ける部分があり取りきれていない部分が見られたが、全体的にスピード感を出しながら伸びやかに演技することができた。良い緊張感を保ちまとめきることができたので、高評価に繋がったことは自信に繋げていきたい。
●クラブ D12.50 (DB9.00/DA3.50) A6.80 E5.25 合計24.550
足下からの2本投げのキャッチの角度が悪く振り上げた足に当たり投げ上げてしまった。普段起きたことのないミスに対して冷静さを欠いてしまった。そのミスから焦りが増し、リズムを崩すこととなり落下ミスを連発してしまう結果となった。
●リボン D11.30 (DB7.30/DA4.00) A7.40 E6.85 P0.05 合計25.500
リボンの描きの甘さからADの足下での描きが悪くパンシェバランスのプレパレーションでリボンの裾が絡まり、予定していたコンバイン難度から数カ所技が抜けてしまった。普段何気なくやっている操作でのミスが起きたことで冷静さを失った。
演技後半は、なんとか耐えようとしていたもののラストのリスクで投げは良かったものの取り損ねてしまった。
ひとつミスをすると冷静さを失い、切り替えることができていないことが課題である。どんな状況でもミスなくやり抜く強さを身につけられるよう改善していきたい。
【全体的な所感】
今大会は、パリオリンピック前の最後のワールドカップ。出場選手全42名中15名がパリオリンピックの出場者という貴重な大会であった。競技フロアの裏での直前練習は、いつもと変わりなく行われているように見えた。しかし、注目選手がコールされると、各国のコーチが、吸い込まれるように集まり、モニター画面を取り囲んでいた。その背中からでも感じるコーチの熱が、とても印象的であった。
今サイクルのルール集大成となるこの試合で見えたもの。それは、身体と手具操作、振り付けが新鮮であり、常に進化し熟成され続けていること。私達が挑戦している同じ技であっても、そのスピード・組み合わせ・つなぎ方・終末に違いがあり、一段と難しいであろう。D得点の価値は同じであっても、その得点を越えたところに芸術・実施の挑戦が見えた。
『何かが違ってみえる』 予想を越えるものが、ひとつではなく、数々散りばめられ、何よりもそこに選手の躊躇が見られない。余計な力は入っておらず、それなのに、強烈な強さとエネルギーがある。見る者の感情を通さず、ダイレクトに目に飛び込んでくるからこそ、演技の後に、素晴らしいという言葉の前に、余韻のある感動が残り続ける。ルールが求めるものを形にするのは、各国の選手とコーチであり、そのルールの着地点となるのがジャッジの評価である。今大会優勝したNIKOLOVA Stiliana(BUL)選手は、すべての力の結集なのかも知れない。