第32回世界新体操選手権現地レポート1
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8月28日、第32回世界新体操選手権キエフ大会が開幕した。
大会初日は個人総合前半種目(フープ、ボール)と同種目の種目別決勝が行われ、日本からは特別強化選手の早川さくら、皆川夏穂の2名(各国最大2名)が出場した。日本勢で先に登場したのは皆川。フープの種目は、ジャンプ中の転がしが不明確になり、その後MGキックをした際に、足をくじいたのではないかと思うほど、足がよれた。直後のDER(回転を伴う投げ技=以前のリスク)の投げが遠くに行きすぎ、中盤の動きやM(マステリー=一般的ではない技)も、不明確となった。どうにか落下は防いだが、中盤が不明確となったため、点数は14.816と伸びなかった。そして早川もフープの種目から。全体的には丁寧な演技であったが、Mの箇所で落下。練習中からずっと引っかかっていた箇所で、何度も練習していたが、心配な箇所がそのまま試合に出てしまった。足持ちでのローテーションもやや回転不足となり、14.683。皆川のボールは、プログラム通りではない箇所もいくつか見られ、背中転がしで落下をしてしまったが、なんとか踏ん張って演技をしている感じであった。15.266
早川のボールは高い難度の際に落下してしまい、そのあとも手につかない箇所があり、15.000。
二人とも難度の大きさがあり、質は非常にいいのだが、まだ作品を堂々と見せるというところまではいっておらず、皆川が35位、早川が39位と苦しいスタートとなった。
初日を1位で折り返したのはMamun Margarita(ロシア)。ボールではピアノの旋律をたおやかに表現。フープではアチチュード+パッセのローテーションから逆イリュージョンをするところで少し乱れたが、ボールとは違った気品のある強さを見せた。
2位は同じくロシアのKudryavtseva Yana。ボールでは転がしながらのキャッチを幾度も入れ、ほぼ完璧な演技を見せた。フープも伸びやかな演技を見せて、Mamun Margaritaをわずか0.051差で追っている。
3位はRizatdinova Ganna。地元ウクライナのエースということで、耳をつんざくような声援の中、堂々と演技。表現力も豊かで、観客を魅了した。
4位はベラルーシのStaniouta Melitina。ボールでは視野外での座キャッチは行わず、安全策をとり、とにかく丁寧に演技した。フープでも丁寧に、かつエネルギッシュに演技してメダルを狙える位置を確保した。
5位にはこれも表現力豊かなウクライナのMaksymenko Alinaが入り、6位に韓国のSon Yeon Jaeがつけている。Sonは、いつになく緊張しており、どこかリズムに乗り切れていない感じであった。メダルへの重圧がそうさせているのかもしれない。
7位にMiteva Silviya(ブルガリア)、8位に中国のDeng Senyueと、お馴染みの顔が揃った。
明日は個人総合後半(クラブ、リボン)が行われ、個人総合決勝進出者24名が決定する。皆川と24位内との差は、1.5程度。
皆川や早川の力からすれば、まだまだ可能性がないわけではない。
現在6位のSonも、2010年のモスクワでの世界選手権では32位だった。中国のDengも同大会で予選24位。現在3位のRizatdinova Gannaも2009年世界選手権三重大会では23位だった。みな、数年かかってジリジリと上に上がってきているのである。昨年は全日本ジュニア選手権に出場していた16歳の二人がいきなり世界選手権に出場するのは少し荷が重いかもしれないが、経験こそが宝である。どん欲に、そして一歩一歩進んでいってもらいたい。
種目別決勝フープはロシアをおさえてRizatdinova Gannaが優勝。ロシア勢も決して悪くなかったが、地元のパワーをしっかりと受け、気迫の演技をしたRizatdinovaが0.011差で勝利を手にした。2位がKudryavtseva Yana、3位がMamun Margarita。
ボールはMamun Margaritaが優勝。2位にKudryavtseva Yana、3位にはStaniouta Melitinaが入った。フープで金メダルを取れなかったロシア勢は、ここでなんとしても金メダルがほしいところ。StanioutaやRizatdinovaらは経験豊富だが、ロシアの二人はまだ走り始めたばかり。それでもロシアの威信をかけて、ぎりぎりのところで踏ん張っている感じが見てとれた。
「隙を見せたら負け」
種目別決勝はそれほど熱い戦いだった。ほんの少しの操作ミスやほんの少しのぐらつきでメダルが遠のいてしまう。そんな行き詰まる熱戦の中、気持ちを引くことなく難易度の高い技に挑戦する様は、すばらしいの一言であった。
明日も、ロシア対ウクライナの戦い、そしてそこにベラルーシや、アジア勢がどうからんでくるか、非常に楽しみである。
Hiroko Yamasaki