新体操W杯ペサロ大会2021レポート

報告者:日本体操協会

「大岩千未来選手、東京オリンピック個人競技2枠目の獲得を確実に!!」
FIG正式発表・大岩選手コメント*FIGの正式発表がまだのため、記載は手元の計算によるものです。

5月28日、29日はイタリア・ペサロ(ペーザロ)にてW杯シリーズ最終決戦が行われた。
個人競技は東京オリンピックの予選ともなっており、今大会は日本がもう1枠を獲得できるか否かの重要な大会であった。
今大会と合わせてW杯4大会中ベスト3大会の獲得合計ポイントにより、上位3名にオリンピックへの切符が与えられることになっていた(1枠を獲得済みの日本は国枠)。またすでに2枠を獲得している国の選手は除くため、上位3名に入ることは可能性がないわけではなく、特別強化選手の大岩千未来と喜田純鈴が、その任務を任された形となった(皆川夏穂は、1枠を獲得した選手のため対象外)。

しかし、これまで大岩はソフィア、タシケント、バクーと戦ってきて、1戦目のソフィア大会こそ、対象国の中で1位を獲得して50ポイントを稼いだが、2戦目、3戦目は枠取りを意識したせいか動きが硬くなり、思うようなポイントが取れなかった。喜田純鈴はタシケントに出場しておらず、高ポイントも獲得していないため、最終戦で3位に入る望みは消えていた。
3大会を終えて、対象国の獲得ポイントランキング1位はスロベニアのVEDENEEVA、2位がウズベキスタンのTASHIKENBAEVA。コンスタントに高ポイントを積み上げており、この2名は当確。
残り1枠をめぐって、3位ハンガリーのPIGNICZKI、4位ルーマニアのVERDES、5位日本の大岩、6位ラトビアのPOLSTJANAJAあたりが戦うことになる。
大岩が3位となって枠を獲得するためには、今大会で3位以内に入り(最低40ポイント)、しかもハンガリー、ルーマニアの選手らができるだけ下位にいるという構図が成立しないと難しい。
そのためには当確の2名、スロベニア、ウズベキスタンの選手にはなんとしてもがんばってもらい、高ポイントの枠を埋めてもらわなければならず、大岩のがんばりだけではどうにもならない状況であった。

そして戦いは始まった。
<初日>
大岩はCグループに出場。
同グループにはハンガリーのPIGNICZKIがいる。
先に演技したのはPIGNICZKI。枠取りの緊張感からか、フープではADで落下。22.600
ボールもエカルテのバランスやADで落下して21.700

対する大岩はのフープは伸びやかな演技であったが、中盤にもたつきがあり、ラストにワンバウンドの落下。得意のローテーションは決まったが、惜しいミスが出た。23.525
しかしボールは、初戦のソフィア大会で見せたような流れがあり、ほぼミスのない演技。25.250で、25点台に乗せてきた。

喜田は数日前に腰を痛め、思うような練習ができていないが、ライバル選手の中に割り込むという役目もあるため、少々無理をしての出場となった。
どちらの種目もADを抜いたりしているが、フープ22.100、ボール23.850とまずまずの点数を獲得した。

スロベニアのVEDENEEVAは今大会も安定感を見せ、フープ23.250、ボール25.000。順調な滑り出しである。

AグループにはウズベキスタンのTASHIKENBAEVA、ラトビアのPOLSTJANAJAが出場。
TASHIKENBAEVAは大きなミスはなく、ボールでは24.150となかなかの点をたたき出した。フープはもたつきがあり、22.250。
ラトビアのPOLSTJANAJAはボールでは操作のもたつきがあり、22.700、フープはジャンプ時の落下があり、21.750。

初日を終えて大岩は対象国1位。しかも全体でも8位という好ポジション。
2位はスロベニアのVEDENEEVA(全体9位)
3位にギリシャのKELAIDITI(全体14位)
4位にスペインのGARCIA(全体16位)
5位にウズベキスタンのTASHIKENBAEVA(全体18位)
6位に喜田(全体19位)
7位ギリシャのMAGOPOULOU(全体21位)
8位ルーマニアのVERDES(全体22位)
9位スペインのBEREZINA(全体23位)
10位韓国のKIM(全体24位)
11位ラトビアのPOLSTJANAJA(全体25位)
12位ジョージアのPAZHAVA(全体26位)
13位ドイツのKOLOSOV(全体27位)
14位ハンガリーのPIGNICZKI(全体28位)

ウズベキスタンのTASHIKENBAEVAが3位以内に入っていないのは想定外だが、ギリシャのKELAIDITIが代わりに入ったことで、問題はない。この流れがこのままいけば、大岩は50ポイントを獲得し、ルーマニアのVERDES、ハンガリーのPIGNICZKIは低いポイントしか得られないため、逆転できる。

<2日目>
しかし、勝負はそう甘くない。
まず、ウズベキスタンのTASHIKENBAEVAが、リボンの出だしで結び目を作り、予備手具と差し替え。その後も投げが安定せず、落下するなどでなんと11.500。
今大会でポイントを獲得できなかったとしてもTASHIKENBAEVA自身は問題ないが、どのポジションに位置してくれるかによって、他の選手に与えられるポイントが違ってくるため、日本にとっては不利な状況。
また日本の喜田は数日前に痛めた腰が悪化。選手生命を終わらせる可能性がなきにしもあらずの状態で、是が非でも出場させるわけにはいかず、棄権。
となると、ルーマニアのVERDESやハンガリーのPIGNICZKIが上がってくる可能性もある。

ギリシャのKELAIDITIはリボンで2か所の落下17.700。クラブでは大きなミスなく25.100でなんとか日本にとっての好位置に踏みとどまった。
ルーマニアのVERDESはクラブでは大きなミスなく、23.850。リボンは投げが乱れて落下もあり、18.700。

ハンガリーのPIGNICZKIのクラブはADでの落下があったが24.050と高得点。しかしリボンでは2度の落下があり、19.150。

そして大岩が登場。
クラブではいくつか危ない箇所はあったが落下はしのぎ、ローテーションも前日に続いて見事に決まり、25.550。
リボンでは1箇所落下があり、結び目も作ってしまったが、ローテーションに入る前にほどくことができて、19.900。

スロベニアのVEDENEEVAは、クラブの投げが不安定になる箇所があり、ADも抜けて22.950。
リボンは大きなミスなく22.350。

間に割り込んでほしいスペインのGARCIAやジョージアのPAZHAVAも健闘し、結果、大岩は4種目合計94.225というパーソナルベストで対象国1位となった(全体10位)。
2位はスロベニアのVEDENEEVA。93.550(全体11位)。

3位はギリシャのKELAIDITI
4位はジョージアのPAZHAVA
5位スペインのGARCIA
6位ルーマニアのVERDES
7位ハンガリーのPIGNICZKI
8位ラトビアのPOLSTJANAJA

FIGからの正式発表を待つばかりであるが、合計獲得ポイントで大岩はハンガリーのPIGNICZKI、ルーマニアのVERDESを抜き、逆転で日本に2枠目をもたらした。
ブルガリア勢のトップは不在であったが、ロシアのAVERINA姉妹、ベラルーシ、イスラエル、ウクライナ、イタリア、アメリカなど強豪国のトップが勢ぞろいする中での10位も見事であった。
対象国3位に入ることがどちらかというと困難な状況であったがゆえの無欲の勝利ともいえよう。
大岩はボールとクラブで種目別決勝の出場も決めた。

6月19日、20日には皆川夏穂も含めた3人での日本代表選考会が行われる。
1日4種目を2日間行うというオリンピックの決勝までをイメージした戦いを行うが、2日間の4種目総合点を並べ、より高い点数を獲得した選手が日本代表選手に内定される。
3分の1の狭き門であったが道が、3分の2となった。
3人の力はさほど変わらない。
広いようで狭い道を通過できるのは誰なのか。決めるのはやはり”無欲”なのかもしれない。

★新体操W杯ペサロ大会2021大会情報
★6/19-20日本代表選考会予定