第37回世界新体操選手権レポート3

報告者:山﨑浩子

現地9月17日、世界新体操選手権バクー大会2日目は個人種目別決勝。
この日、種目別決勝フープ、ボールが行われた。皆川はフープのリザーブ3であり出場できないのは残念であるが、コンディション的には個人総合決勝に体力を温存しておけると考えよう。

フープの出場者は
イスラエルのZELIKMAN
ベラルーシのHALKINA
ブルガリアのKALEAN
ロシアのDina AVERINA
イタリアのAGIURGIUCULESE
ベラルーシのSALOS
イスラエルのASHRAM
ロシアのSELEZNEVA
(試技順通り)

そうそうたる顔ぶれであるが、ブルガリアやイタリアも一人しか進出できていないし、ウクライナは一人も出場できていないことを考えると、いかにこの8名に入ることが難しいかが想像できる。どの選手も大きな落下ミスはないが、少しADが欠けたりして、21点台の争いであったが、ロシアのDinaが若干不正確な操作がありながらも23点台に乗せ、ほぼ優勝が決まりと思われた。
D1 4.9
D3 9.2
E  9.250 計23.350

SALOSは総合予選時に22点台を出していて、メダルの可能性もある。
前半は小気味よく演技していたが中盤のADでリズムが狂い、直後の足回しキャッチで場外。差し替えて演技することになってしまった。
D1 4.7
D3 7.5
E  7.350 計19.250

続いてASHRAM。
総合予選時よりパワーアップし、大きなミスなく演技。
得点が出て会場がどよめいた。
D1 5.4
D3 9.3
E  8.700 計23.400

絶対王者Dinaを0.05かわしてトップに立ったのである。
残る選手はロシアのSELEZNEVA。
総合時には23.400を出しているが完ぺきに演技しないと難しい。
そのSELEZNEVAは、落下こそないものの終始ガタガタしていて良い演技とは思えなかった。しかし得点が出てふたたび会場がどよめいた。
D1 5.1
D3 9.3
E  9.100 計23.500

ASHRAMを0.1上回り、ロシアの金メダルを死守した。
1位SELEZNEVA
2位ASHRAM
3位Dina AVERINA

種目別ボールの試技順は以下の通り。
イスラエルのZELIKMAN
ウクライナのNIKOLCHENKO
USAのGRISKENAS
イタリアのBALDASSARRI
イスラエルのASHRAM
ブルガリアのKALEAN
ロシアのArina AVERINA
ロシアのDina AVERINA

前半2選手が21.450で並び、GRISKENASが20.350
イタリアのBALDASSARRIは、非常に音楽を感じさせてくれる選手である。
ウクライナのNIKOLCHENKOも音楽が聞こえてくるが、BALDASSARRIは常に動きと技がともにあるような感じで、新体操らしさを感じさせてくれる。
ADで危ない箇所はあったが、
D1 5.2
D3 8.4
E   8.600 計22.200
E実施点の中には芸術点と技術点が含まれているが、BALDASSARRIの芸術点は0.6のマイナス。トップバッターのイスラエルのZELIKMANも同じく0.6のマイナス。
ふたつの作品を比べてみるとBALDASSARRIのほうがより芸術的に見えるが、全体的な作品の良さを評価する場所が少ないのがいまの新体操の欠点であろう。

続いてASHRAM。
前半のADで足でボールを押さえるところが不正確になったがうまくごまかした。
D1 5.1
D3 8.8
E   8.550 P0.05 計22.400

Arina AVERINA
若干投げが乱れていたがなんとか対応。
D1 5.1
D3 8.9
E   9.100 P0.05 計23.050

Dina AVERINA
落下なし。
D1 4.8
D3 9.6
E   9.100 計23.500

ボール結果
1位Dina AVERINA
2位Arina AVERINA
3位ASHRAM

種目別決勝を見ていると、みな手具操作の進化はすばらしく本当に次々とADをこなしている。しかし、ADは投げの高さによって点数が変わる(高い投げのほうが点数が高い)ため、みな手具を高く投げ上げる回数が多い。そうすると緩急の変化がつけづらく、作品の波がだしづらい状況になっている。観客側も、ただ高く投げ上げられた手具とクルクル回る選手の姿をずっと見ていることになり、どの選手もすごいのであるが、そのすごささえもマヒしてきてわかりづらくなってくる。

音楽表現や感情的な動きというものは、ほとんどの選手が持っていない。いや、あったとしてもそこに固執していては高い点数が狙えないのである。

テレビサイズを考えてみても、投げが高いと選手は米粒にしか映らないだろうし、選手に寄れば手具は映らないことになってしまう。このあたりを打開しなければ新体操が人気スポーツになるには少し遠いのではないだろうかと、戦いとは別の視点で考えてしまった種目別決勝であった。

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