第35回世界新体操選手権大会レポート5

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【大会最終日】
第35回世界新体操選手権ペサロ大会最終日は、団体種目別決勝が行われた。各種目のベスト8が出場できるが、昨日団体総合で42年ぶりの銅メダルを獲得できた日本(フェアリージャパンPOLA)はフープ、ロープ&ボールともに4位で駒を進めた。
《種目別決勝フープ5》
試技順1番はウクライナ。
交換の移動や連係の移動が多くあったことと、パンシェのローテーションで1人が回りきれず、早く起き上がってしまう。
D9.500 E7.850 計17.350
2番はベラルーシ
エカルテバランスのキープが足りないことと、連係でキャッチするべき人ではない人がキャッチしたところがあったが、全体的には大きなミスがないように見えた。
しかし、難度点が伸びず、
D9.600 E8.425 計18.025
3番はアゼルバイジャン
スケールバランスの開脚度、ジャンプターンの開脚度が足りず、連係でもワンバウンド気味でキャッチした。
D9.600 E8.250 計17.850
4番は地元イタリア。
昨日日本に0.025足らず4位に甘んじたこともあり、なんとしてもメダルを手にしたいところ。
そしてイタリアは、1箇所の交換が乱れて足キャッチを手でのキャッチに変更したが、そのほかは大きな乱れはなく、音楽に合った緩急のある演技を見せた。
D10.000 E8.900 計18.900
の得点が表示されると、会場に歓声が鳴り響いた。
イタリアの観客は他の国の演技を、固唾を飲んで見守るという状況となった。いけないと思っても、他の国の失敗を願っているというところであろうか。
5番は中国。
大きなミスも移動も少ないが、ジャンプターンやエカルテバランスなどBD(身体難度=ジャンプ、バランス、ローテーション)がカウント(加算されない)できないと思われた。
D9.300 E8.050 計17.350
この大会では、トップの国と競うように得点が表示されるのであるが、現時点で1位のイタリアに対し、17.350の数字が出ると、大歓声である。
6番はロシア。
出だしの連係で乱れがあり、他の連係でもフープを床に接触させながらキャッチした場面があるなど前半はリズムが悪い。後半なんとか持ち直したが、
D10.000 E8.700 計18.700
イタリアが金メダルに近づいた。
そして7番に日本。
日本は交換で若干の移動はあったものの、昨日より出来は良く、非常に安定感があった。
D10.000 E8.600 計18.600
ロシアに0.100及ばなかったが、すばらしい出来であった。
ラストはブルガリア。
前半の滑り出しは良かったが、中盤のR(リスク=手具を投げ上げ、2回転以上の回転を行う)の前に、フープの操作がもたつく。
そして他の4人より遅れてフープを投げ上げたが、コースが逸れたのか、回転をせずに走ってキャッチすることとなった。
以前の大会で、この箇所で場外するキャッチミスを犯した選手だけに、なにか精神的な不安を抱えている箇所だったのかもしれない。
D9.700 E8.550 計18.250
結果
1位イタリア 18.900
2位ロシア 18.700
3位日本 18.600
4位ブルガリア 18.250
5位ベラルーシ 18.025
6位アゼルバイジャン 17.850
7位中国 17.350
8位ウクライナ 17.350 *同点の場合はE得点が高い方が上になる。
日本は団体総合に続いて、フープの種目でも銅メダルを獲得した。
(出場選手)
杉本早裕吏
松原梨恵
国井麻緒
竹中七海
鈴木歩佳
《ロープ2&ボール3》
試技順1番はアゼルバイジャン。2本のロープを回し、ダブルダッチ競技のようにひとりがロープの中に入って跳ぶところで、タイミングが合わずロープに引っかかった。座の足キャッチでも不正確となり、
D8.600 E8.100 計16.700
しかしインクワイヤリー(自国のD得点に納得がいかない場合、提出できる)が出され、ビデオチェックの結果、Dが0.4上がり、計17.100に。
2番はイタリア。
2種目目も当然メダルを狙っている。
中盤の、ロープを投げ上げ、回転をしながらボールを脚でころがして相手に渡して、ロープをキャッチするという難しい技で、ボールが低くなり、床にボールが接触しながらキャッチ。あとは連係の移動があったのと、前半と後半でボールの両手キャッチが多かった。ボールの両手キャッチはそのたびに0.1ずつ減点されるため、積み重なれば大きな減点となってしまう。
D10.000 E8.550 計18.550
3番は中国。
大きなミスがあったようには見えなかったが、春先の試合に出てきたときより、エネルギーに欠けるような気がする。
D9.000 E7.675 計16.675
4番は日本。
日本の演技はイタリアも関心のあるところであろう。拍手の中に若干のブーイングが混ざっていたが、イタリアにうかうかできないと思わせているのは、日本の成長の証である。
そして日本は昨日のミスをすべて修正した。
移動も少なく、ボールの片手キャッチも多かった。移動のミスも最小限に抑えて、伸びやかにいまできることはすべてやり尽くしたと言えよう。
D10.000 E8.650 計18.650
日本がイタリアに0.1上回ると、会場内に落胆の声が響いた。
5番はブルガリア。
ロープキャッチのもたつきや、交換の移動、パンシェへの入りの遅れなど、実施減点が多い印象であったが、
D9.800 E8.800 計18.600
日本がわずかに上回ったが、ブルガリアはインクワイヤリーを提出。
D得点が10点にでも上がれば、日本はメダルの可能性が少し低くなる。
しかし、ビデオチェックの結果、変更なし。
5チームを終えて、日本は1位をキープした。
6番はウクライナ。
パンシェのローテーションでは1人が大きく崩れ、全体的にばらついた印象。
D9.300 E8.200 計17.500
これで日本はロープ&ボールもメダルが確定した。あとはどの色になるのか。
7番はベラルーシ。
パンシェバランスが最後の瞬間だけ大きな開脚度を見せているので、そういった点がマイナスとなったのか、大きなミスはないように見えたが
D9.500 E8.500 計18.000
インクワイヤリーも出さなかったため、日本は銀メダル以上が確定。
ここまでで
1位日本
2位ブルガリア
3位イタリア
ラストのロシアの出来次第でイタリアはメダルを手にできない状況。
ロシアは、パンシェの崩れはあったが、大きなミスは回避して
D10.000 E8.900 計18.900で金メダルを獲得。
場内に再び落胆の声が響いたが、日本の活躍は彼らにとっても大誤算であったろう。
結果
1位ロシア 18.900
2位日本 18.650
3位ブルガリア 18.600
4位イタリア 18.550
5位ベラルーシ 18.000
6位ウクライナ 17.500
7位アゼルバイジャン 17.100
8位中国 16.675
(出場選手)
杉本早裕吏
松原梨恵
横田葵子
竹中七海
鈴木歩佳
日本は団体総合銅メダル、フープ5銅メダル、ロープ2&ボール3銀メダルと、出場したすべてのカテゴリーでメダルを獲得。これ以上ない結果を残した。
これは正しい練習の積み重ねによる勝利である。BDはより正確に、ボールは片手キャッチに執着して練習した。
作品の構成としては、イタリアやブルガリアの方がより複雑で難易度も高いと思われるが、今日の演技は正しい練習が形になったのだと胸を張って言える。
しかし、喜んでばかりはいられない。
日本になど負けていられるかと、各国がより本気になって練習をしてくるであろうし、ベラルーシやブルガリア、また今回は振るわなかったスペインなども若いチーム。チーム力が上がってくれば、よりミスもなくなってくるだろうし、ボリュームも増してくる。
日本はこれまで以上に質の良い練習を続けていき、強豪国の仲間入りを果たしていきたい。
個人競技の方でも、日本は特別強化選手の皆川夏穂が個人総合5位入賞、初出場の喜田純鈴も決勝進出を果たして12位。種目別決勝フープでは皆川銅メダル獲得 喜田7位入賞、ボール皆川8位入賞と大きな成果を上げた大会であった。個人・団体ともに選手たちのがんばりに拍手をおくるとともに、コーチングスタッフやメディカルスタッフ、審判員、スポンサー、その他関係者の皆様、現地に応援に来ていただいた方々、日本で応援してくださった方々、新体操の歴史を築いてきてくださった方々、すべての方に御礼を申し上げて、報告を終了したい。