第35回世界新体操選手権大会レポート4

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【大会4日目】
第35回世界新体操選手権ペサロ大会4日目は、団体総合が行われた。日本からはフェアリージャパンPOLAが出場。今季のWCCグアダラハラ大会(スペイン)、アジア選手権(カザフスタン)、WCCミンスク大会(ベラルーシ)、WCCカザン大会(ロシア)と4つの大会でメダルを獲得している日本は、今大会でもメダル獲得を目標に練習を続けてきた。
しかし、ロシア、イタリア、ブルガリア、ベラルーシ、ウクライナと強豪揃いであり、日本がミスなく演技をした上で、ライバルチームが何かミスをしない限りはメダルには手が届かないという状況。D難度点は、大きな失敗がない限り、上位チームは10点になるはずであり、E実施勝負となることが予想された。
抽選によりAグループ(14チーム)とBグループ(15チーム)に分けられており、Aグループには地元イタリア、ブルガリア、そして日本が出場。
《Aグループ》
試技順2番で登場したのはイタリア。イタリアはロープ&ボールの種目からであったが、大声援の中、リスキーな技を次々と繰り広げた。
しかし中盤からリズムが狂い始め、投げのコースが逸れ始める。キャッチに移動が見られ、ラストの連係でもボールが逸れて、なんとかキャッチ。
得点は17.925(D10.000 E7.925)で、イタリアとしては低い点数からのスタートである。
ブルガリアはフープから。投げは少し乱れているが、一歩動く範囲でキャッチ。安定感のある力強い演技を見せた。18.650(D10.000 E8.650)
試技順12番の日本もフープの演技から。
いくつかキャッチの移動はあったが、うまく対処していて落ち着いている。ブルガリアと同様、安定感を見せた。18.400(D10.000 E8.400)
(出場選手)
杉本早裕吏
松原梨恵
国井麻緒
竹中七海
鈴木歩佳
1ローテーションを終えて、1位ブルガリア、2位日本、3位イタリアの順位。メダル獲得のためには、このグループ内で1位、せめて2位になっておきたいところであるが、ブルガリアと日本は実施減点が出やすいロープ&ボールの試技であり、イタリアは高得点が出やすいフープの試技。どうなるかまったく読めない状態であった。
2ローテーション目のイタリアは、底力を発揮して移動も少なくすばらしい演技を見せた。ラストの連係の足キャッチが危うかったが、座でのキャッチだったため事なきを得た。
得点は18.700(D10.000 E8.700)。総合得点36.625
ブルガリアは17.975でイタリアに並び、勝つためには18.000が必要。ミスがなければ問題なく得られる得点である。
だがブルガリアは交換でボールを落下。幸い、座でのキャッチだったために、移動せずに拾うことができた。得点は18.300(D10.000 E8.300)。総合点36.950
この時点でイタリアを抜き、トップに立った。
日本は18.225でイタリアと並び、18.250で勝てる計算であるが、ロープ&ボールはフープほど高い点数を得たことはなく、非常に難しい状況であった。
演技が始まってすぐに、ロープに乱れが生じ、続く連係でもキャッチでロープが乱れる。すぐに交換があるので、間に合わないとリズムが完全に狂ってしまうが、なんとか投げることができた。
中盤の足投げも短くなったが、あたかもプログラムどおりであるかのようかカバーも見られ、最後まで必死に耐えた演技であった。
完璧にやって実施点が8.300出るか出ないかの状況であり、この演技では7点台に落ちても仕方がないと思われたが、表示された得点は18.250(D10.000 E8.250)。総合点36.650でなんと0.025差でイタリアを下した。
(出場選手)
杉本早裕吏
松原梨恵
横田葵子
竹中七海
鈴木歩佳
日本がイタリアの上に行くと観客からブーイングがあったが、結局はロープ&ボールの出来が勝敗を分けることになった。
日本は0.1のロープの処理がいくつかあったのに対し、イタリアは0.3の移動キャッチが数回見られたこと。この差により実施点に差ができたのである。
なんにせよ、Aグループを終えて、日本はブルガリアに次いで2位。表彰台の可能性を残して、Bグループの演技を待つことになった。
《Bグループ》
Bグループにはロシア、ベラルーシ、ウクライナが顔を揃えている。
ロシアはよっぽどのことがない限り金メダルは堅いと見られ、ベラルーシ、ウクライナの出来で日本のメダル獲得が左右されることになる。
まずはウクライナのフープから。
中盤の連係でキャッチが不正確に。ステップ中にフープをくぐり抜ける際、足がフープに引っかかった。交換でも投げが乱れ、ふたつのフープが寄る形になり、ラストの連係もうまくいかなかった。17.450(D10.000 E7.450)
日本を上回るには19.200を超えなければならないが、この点数はロシア以外は出せないと見られ、この時点でメダル争いから脱落。
ロシアはロープ&ボールからであったが、ロープのキャッチが乱れても演技のように見せ、大きなミスを回避した。パワーもあり18.750(D10.000 E8.750)
この調子でいけば金メダルは間違いない。
ウクライナがメダル争いから抜けたとなれば、あとはベラルーシの出来によって、日本は3位になるか4位になるかが決まるが、ここまでくれば、なんとしてもメダルがほしくなる。
そのベラルーシのロープ&ボールは、とても良い演技であった。美しく伸びやかで、春先の試合で見たチームとは別チームのように仕上げてきた。
が、やはり移動キャッチが少しあったのか得点は伸び悩み、18.375(D10.000 E8.375)。ロープ&ボールの得点のみで見ると、日本を0.125上回っている。
総合点でベラルーシが日本を上回るには、フープの得点が18.275を超えること。ベラルーシの実力からすればそれは容易く、メダルへの夢が少し遠のいた。
2種目目のウクライナは交換の移動や不正確なキャッチなどで18.150(D10.000 E8.150)。総合点35.600
ロシアはフープも大きなミスはなく、18.950(D10.000 E8.950)。2種目とも危なげない演技で総合点37.700。ブルガリアを抜いてトップに立った。
現時点で
1位ロシア
2位ブルガリア
3位日本
あとはベラルーシのフープの演技を待つばかり。
そしてベラルーシの演技が始まった。
流れるような美しい演技で、まったくよどみがない。キャッチの移動も少なく、これは負けたとあきらめたときだった。R(リスク=手具を投げ上げ2回転以上の回転を行う)の投げが前に行きすぎ、1回転をしただけで走ってキャッチ。直後の連係も乱れ、交換でも投げが短くなるなど、あっという間にリズムが狂ってしまった。
Rの失敗はかなり大きいと思われたが、得点が表示されるまでの時間がかなり長く感じられた。
そして電光掲示板には18.050の数字が。
日本は42年ぶりの銅メダルを獲得した。
2位のブルガリアから5位のベラルーシまでの得点差は0.525。
3位の日本から5位のベラルーシまではたった0.225。日本とイタリアの差は0.025。いかに厳しい戦いであったかが、この点数に表れている。
1位ロシア 37.700
2位ブルガリア 36.950
3位日本 36.650
4位イタリア 36.625
5位ベラルーシ 36.425
6位ウクライナ 35.600
7位アゼルバイジャン 35.450
8位中国 34.250
念願であった団体総合でのメダル獲得をびっくりするほど冷静に受け止めてはいるが、2005年から選抜チーム制度を定常化させ、2006年から通年合宿に切り替え、2009年からはロシアに拠点を移すなどの策が、実を結んだと言えよう。
ここに至るまでに関わってくださったすべての選手、コーチ、スタッフ、関係者の皆様に改めてお礼を申し上げたい。
しかし、個人のメダル獲得と同じで、やっと戦いのスタートラインに立てたばかり。
どのチームもミスがなかった場合の日本は、まだメダルを手にできるレベルではない。
メダルをいつでも狙えるチームになるために、明日からまた歩みを進めていかなければならない。
明日は各種目ベスト8で競われる種目別決勝が行われ、日本は2種目とも出場する。