第34回世界新体操選手権大会レポート7

報告者:

現地9月13日、世界新体操選手権シュトゥットガルト大会最終日は種目別決勝が行われた。前日、5位入賞でリオオリンピックの切符を獲得したとき、指揮官のインナヘッドコーチ(ロシア人コーチ)は5位を表すように五本指を広げると、親指、人差し指と折りたたみ、3本の指を残してニッコリと笑った。それはつまり、「種目別では3位ね」ということ。
それでも、やることはただひとつ。精一杯試合に向けての準備をして、精一杯いまやれることをやるだけ。選手たちは浮かれることなく真摯に、種目別決勝を迎えた。
リボンの種目の試技順1番はロシア。DERで大きく走った以外は予選より良い動きをしていたが、ラストの、4本のスティックにリボンを巻きつけて四角をつくり、その中に1人の選手が入り込むオリジナル技で、リボンが抜けてしまう。実施上は大きなミスではないが、難度点に影響して、17.850。
試技順2番は中国。リボンのたるみやリボンを踏んでしまう箇所はあったが大きなミスはなく、16.833。
試技順3番はスペイン。連係や交換での移動があり、フェッテのローテーションもバラツキがあった。リボンを足に引っかけて投げる技でも連係が乱れ、17.183。メダル候補がひとつ崩れた。
試技順4番はウクライナ。出だしの交換で移動。DERでは1人の選手がリボンを後ろに投げてしまい、回転ができず。リボンが他の選手の体に巻きついてしまうミスもあり、16.833。
試技順5番はブルガリア。ブルガリアは普通にやればメダルはかたい。しかし今日のブルガリアは交換での不正確なキャッチやパンシェバランスのぐらつき、交換で大きく走るなどのミスが出て、17.300。またもやメダル候補が崩れた。
試技順6番はイスラエル。予選より伸び伸びとした動きで大きなミスはなかったが、得点は伸びず、17.233。
試技順7番はいよいよ日本。あとにイタリアを残しているので、メダルを取るには17.300を超えるしかない。日本にとって17.300を超えるのはできないことではないが、ミスが出れば難しい。そして日本の演技が始まった。交換でのキャッチ移動があるなど、決して投げが完璧なわけではないが、チームがひとつにまとまって助け合いながら演技していることがよくわかる。最後は、予選ではあまりうまくいかなかった4本投げも見事に決まり、力強くポーズ。大歓声を浴びた。そして、電光掲示板に17.366の点数が掲示され、この瞬間、日本のメダル獲得が決定した。
試技順ラストのイタリアはミスなく演技して17.900。ロシアをわずかに抜いて金メダルとなった。
結果
1位イタリア
2位ロシア
3位日本
4位ブルガリア
5位イスラエル
6位スペイン
7位ウクライナ
7位中国
日本のメダル獲得は実に40年ぶりだということである。インナヘッドコーチが指で表した3の数字を現実のものとした。
続いてフープ&クラブ。試技順1番は地元ドイツ。大きな声援に送られて大きなミスもなく17.000
試技順2番はスペインのはずが、選手に故障があり、キケン。順番が繰り上がり、日本の登場となった。このときにリボンでのメダル獲得を知っていた選手も知らなかった選手もいる。知っていた選手は一瞬喜んだものの「まだ次がある。一(イチ)にリセット」と心を整えた。インナヘッドコーチから叩き込まれてきた試合へのアプローチの方法である。
そして日本は同時性も良く、ほぼミスのない演技であった。何よりキラキラと輝いており、その場がパーッと明るくなるような感じがした。17.500は今季チーム最高得点。
試技順3番はイスラエル。イスラエルもミスなく終えたが17.350。いつも競り合って負けてきたイスラエルに勝てたことも大きい収穫である。
試技順4番はベラルーシ。最後の連係にミスは出たが落下はなく、17.633。
試技順5番はブルガリア。後半、少しリズムが狂ったが迫力のある演技で、17.866。
試技順6番はロシア。狂ったような回転で飛んでくるクラブに必死で反応し、最後までこらえた。18.125
試技順7番はイタリア。難しい連係に挑戦し、それをこなして18.100。
試技順の最後はアゼルバイジャン。スペインのキケンにより、観客席にいたアゼルバイジャンの選手はあわてて準備した。連係で落下などがあり、16.566
結果
1位ロシア
2位イタリア
3位ブルガリア
4位ベラルーシ
5位日本
6位イスラエル
7位ドイツ
8位アゼルバイジャン
実力から言えば順当。しかし日本は予選、決勝と4回の演技を落下なしで、またエネルギーのある演技ができた。これは新体操では、簡単なようで、それほど容易ではない。また強豪との差も本当に少なくなってきた。日本は17点中盤を出せるチームに成長したこと、メダルを取れる位置にいるチームであることを世界にアピールできたことで、オリンピックでのメダル獲得に向けて、やっとスタートラインに立てたと言えよう。
そして、銅メダル獲得は奇跡ではない。他のチームのミスに助けられていても、選手たちがしっかりと準備してきたからこそ獲れたメダルである。薄紙を重ねるように、コツコツと積み上げてきた成果である。ミスが許されないというプレッシャーの中で助けとなったのは、日々の練習なのである。
こうして世界新体操選手権シュトゥットガルト大会は幕を閉じた。次は、個人も団体も日本代表入りの戦いがある。そしてオリンピックでのメダル獲得という目標に向けて、この大会で得た自信と誇りを胸に、新たな歩みがもうすでに始まっている。
最後に、これまで日本新体操の歴史を紡いできてくださった方々、支援してくださった方々、現地まで応援に駆けつけてくださった方々、日本で応援してくださったすべての方に感謝申し上げます。??-日本選手団一同
大会情報・結果へ