第65回全日本新体操選手権 レポート 女子 種目別

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<フープ>
1位 山口留奈(イオン) 24.825点
前腕部での不正確な取りがありやや流れが止まる箇所も見受けられたが、以前よりも後半に向けての力強さが感じられるようになった。
2位 三上真穂(東京女子体育大学) 24.450点
総合を終え、程良く緊張感が抜けた彼女の演技は、一回り大きく、ダイナミックに見えた。
これだけの投げ技を、いとも簡単にやってのける精神力の強さは彼女の武器でもあるが、それが努力の積み重ねであることは、演技を見れば一目瞭然である。
3位 中津裕美(東京女子体育大学) 23.675点
総合ではリボンのミスが足を引っ張り大きく順位を下げる結果となってしまったが、彼女にしか表現出来ない世界観は、いつも観客の心を惹きつけるものがある。今後、動きから徒手難度へスムーズに移行出来るようになれば、演技の深みが更に増すように思う。
<ボール>
1位 穴久保璃子(イオン) 24.925点
大きな落下ミスもなく無難にまとめあげた。もう少し軽やかなジャンプが出来るようになれば、より繊細な表現が出来るようになるだろう。
2位 山口留奈 24.775点
総合の時よりも両手取りが目立ち点数を伸ばすことは出来なかったが、彼女の持ち味である正確なフォームでの難度は健在であった。
3位 大貫友梨亜(東京女子体育大学OG) 24.725点
このボールでは、ジュニアの頃に使用していた思い入れのある曲を編曲し直したということもあり、感情のこもった滑らかな動きは観ている者の心を熱くした。今の彼女にしか出来ない、今の彼女だからこそ出来たこの演技は、他選手とはまた異なった深みのある演技であった。
<クラブ>
1位 山口留奈 25.075点
今年はミスが続いた山口選手であったが、肩の力が抜けたこのクラブの演技は心地よい程に伸びやかで、彼女の魅力を存分に出し切れた出来であった。
2位 穴久保璃子 24.225点
クラブを胸で取るなど不正確な箇所があったものの、最後まで魅せ切った。今後、流れるような手具操作が出来るようになれば、体の動きと共に手具でも表現出来るように感じる。
3位 宮本枝実(飛行船新体操クラブ) 23.725点
確実な徒手難度に加え、流れのある自然な手具操作は引き込まれるものがあった。
<リボン>
1位 山口留奈 24.700点
難度のフォームが不確実な箇所もあったが、技や難度を音に上手く合わせたこの作品は、彼女の表現が一番明確に伝わってくるように感じた。
2位 大貫友梨亜 24.250点
大貫選手の武器であるピポットが光るこの作品は、後半に向け観客も彼女自身も盛り上がって行くのを感じた。種目それぞれに異なるカラ―が見せられるのも、ベテラン選手ならでは、である。
3位 池ヶ谷晴香(アンジュ) 23.575点
池ヶ谷選手の持ち味であるダイナミックな投げ技が決まり、得点に結びついた。
同点3位 三上真穂 23.575点
総合の時よりも一つずつが力強く感じられる演技であった。手具を遠くで操作出来ることも彼女の武器であるが、操作や投げにおいても表現出来るようになれば、作品としての芸術性が深みを増すように思う。
団体
<ボール5>
1位 東京女子体育大学 25.000点
チャンピオンの名にふさわしい勢いのある演技で、この種目でも首位に躍り出た。
力強い曲ではあるが、作品のどこかで滑らかな動きや呼吸が緩む瞬間があれば、観ている者を更に引き付けられる演技になるように思う。
2位 日本女子体育大学 24.850点
総合の時以上に溌剌とした演技は力強さを増し、この作品のコンセプトがより明確に感じられる演技であったが、連係での乱れが実施点に響いた。
<フープ2×リボン5>
1位 日本女子体育大学 24.775点
若干の移動があったものの、曲の迫力に負けない複雑な連係を確実にこなし、念願の優勝を手にした。
2位 東京女子体育大学 24.750点
交換での乱れが点数に響き完全優勝には一歩及ばなかったが、総合、種目別共にノーミスでやり切る揺るがない自信は、練習の賜物であり、チャンピオンとしての輝きを放っていた。
両種目において3位を獲得した武庫川女子大学は、団体の魅力でもある連係を次々とこなしていく作品を披露し、観ている者を飽きさせなかった。今後、手先や足先の美しさがより磨かれれば、今以上の点数が期待出来るであろう。(ボール5 24.475点 フープ2×リボン5)
新体操のルールはオリンピック周期ごとに改編される為、2013年からは新しいルールでの戦いが幕を開けることとなる。
いつも大幅な変更があり、その度にコーチも選手も頭を悩ませるのが実情なのだが、以前ロシアのコーチ、選手に「ルールが変わる度、そのルールに対応していくのは大変ですよね?」と質問したところ、次のような答えが返ってきたのを覚えている。
-「ルールが変わっても大変じゃないよ!どんなルールであったとしても、新体操を通じて私達が表現したい事、伝えたいことは何も変わらないから。」
その通りだと、目が覚める思いがした。勿論それは、高い能力を持っているからこそ言えることなのかもしれない。しかし、新体操が芸術スポーツである以上、曲と一体となり表現すること、美しく演技するとを忘れてはいけない。
その最低条件を満たした上でオリジナリティーを追求し、新しいルールに対応していかなければ世界に追い付くことは出来ないように思う。
種目別1位山口留奈
種目別2位大貫友梨亜