第65回全日本新体操選手権 レポート 女子 個人・団体総合
第65回全日本新体操選手権大会 レポート 女子 個人・団体 総合
11月16日から3日間に渡り、第65回全日本新体操選手権大会が開催される。
今大会では様々な全国大会において勝ち抜いてきた個人36名、団体14チームの選手達により、日本一の座を懸けた戦いが繰り広げられた。
<個人>
チャンピオンの座を勝ち取ったのは、前年度覇者でもある山口留奈選手。
ボールの両手取りが目立ったもののそつなくまとめ25.075点。
2種目目のフープでは、手具を胸で取る場面が見られたがスムーズに対処し24.750点。
リボンではスタートの引き戻し(ブーメラン)で落下ミスがあったが、その後崩れることなく確実に難度をこなし24.525点。
クラブでは、彼女らしい質の高い難度が決まり24.775点を獲得。彼女の意地とプライドが感じられた力強い演技だっただけに、ラストの落下ミスが悔やまれた。
動きに無駄がなく実施減点が少ない彼女の演技だが、世界で戦うためには独創性に富んだ表現力が今以上に必要であろう。
2位に輝いたのは、穴久保璃子選手。
1種目目のフープでは、一カ所流れが止めってしまう取りがあったものの、後半萎縮してしまうことなく力強い演技で24.225点。
続くボールでは、ジャンプ中胸でボールをつき返す技においておぼつかない場面があったが、素早い判断で落下ミスを防ぎ24.775点。
ミスなくまとめたクラブでは、24.325点を獲得。しかし、他の種目に比べやや動きが硬かったこのクラブでは、いつもに比べ優雅な曲調を表現し切れていなかったように感じられた。
最終種目リボンでは、落下ミスはなかったもののリボンの不正確な操作が目立ち点数を伸ばすことが出来なかったが、彼女の熟練されてきた表現力は魅力的であった。(24.000点)
3位には4種目ミスなく演技し切った三上真穂選手が入った。
高い投げ技を臆することなく全て見せ切ったフープ、ボールの演技は見事であり、練習の賜物であることが感じられた。(フープ24.100点 ボール24.125点)
続くクラブ、リボンでも大きなミスをすることなくまとめあげたが、前半種目に比べ若干手具操作、投げ技に追われ、曲を表現し切れていなかったように感じられた。(クラブ23.950点 リボン23.775点)
以前よりも滑らかさを増した三上選手の演技は、どの種目でも技術の高さを感じられる作品に仕上がっていた。今後この技術に加え技と技のつなぎにも工夫を凝らし、作品全体を通じて表現出来るようになれば、更なるレベルアップが期待出来るように思う。
4位には大貫友梨亜選手。
得意のピポットで会場を沸かせる場面も多く見られたが、各種目でのミスが目立ちメダルには手が届かなかった。
全日本ジュニアチャンピオンである皆川夏穂選手は、シニア勢の中で5位と言う成績を収めた。長い手足に加え、可動域の広い柔軟な股関節を武器とする皆川選手の演技は、他の選手にはない軽やかで伸びやかな演技が魅力的である。そして、シニア選手を勝るほどの徒手能力の高さは、今後の活躍に大きな期待が持てる。
また、皆川選手同様全日本ジュニアに出場していた猪又涼子選手の演技も印象的であった。まだミスの目立つ演技ではあったが、彼女の流れるような動きには無理がなく、見ていて心地よささえ感じられる。
このように、若い世代の選手の魅力も、また熟練度を増したベテラン選手の魅力も同時に味わえるのが全日本選手権の面白いところである。
世界を目指す上で“美しく”演技することは、日本人にとって重要課題である。
「難度が出来ればよい」、「ミスなく演技をすればよい」と言う意識から早く逸脱し、「より美しく難度をする」、「より美しく演技する」と言うことを日本全体が目指していかなければ世界は更に遠のくだろう。
しかしそれは、あくまでも最低条件であり、美しく行き届いた手足の動きに+α日本人らしい、またその選手らしい何かが必要であることは言うまでもない。
個人総合1位山口留奈
個人総合2位穴久保璃子
<団体>
2日間に渡り各チームの異なるカラーが光った演技は、観ている者を大いに楽しませてくれる戦いであった。
そのような中、前年度2位に涙を呑んだ東京女子体育大学が優勝カップを手にする結果となった。
ボール5では両手取りが目立ったものの、力強さと一糸乱れる呼吸のあった動きで24.825点を獲得。フープ2×リボン3では一カ所リスクで落下ミスがあったが、素早い対処で減点を最小限に抑え24.850点。
2位は日本女子体育大学。
1日目のボール5では、両手取りや交換での取りに移動が見られ24.625点。
2日目のフープ2×リボン3では演技後半に向け力強さが増していく気迫ある演技で、最高得点24.925点をマークし前年度チャンピオンの意地を見せつけたが、0.125点差で一位には一歩及ばなかった。
3位には、ボール5 23.950点、フープ2×リボン3 23.950点を獲得した武庫川女子大学が入った。定評のある複雑な連係に加え、今後実施減点を減らしていければより洗練された演技となり、魅力が増していくであろう。
フープ2×リボン3において、連係やリスク(投げ技)でミスが出てしまった国士舘大学は点数を伸ばすことが出来ず4位という結果に終わったが、5人全員が最大限に体を使い、最後まで踊り切る様は心に残るものがあった。特にボールの作品は、細部に渡り工夫が施されており2`30があっという間に感じられるほどであった。(ボール5 23.175点、フープ2×リボン3 22.625点)
明日は各種目上位8選手、8チームにより、種目別決勝が行われる。
東京女子体育大学
日本女子体育大学
Photo by terumi watanabe