[レポート:新体操女子]SASAKI CUP 全日本新体操ユース

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5月25日~27日千葉ポートアリーナにて、SASAKI CUP・全日新体操ユースチャンピオンシップが開催された。
 これまでに、輝く未来のスター達を輩出してきたこの大会も今年で10回目を迎え、女子出場人数は過去最高の409名を記録した。
 その409名の中から、見事予選競技(クラブ・リボン)を突破した30名の選手により、27日決勝競技(フープ・ボール)が行われた。
※予選からの4種目合計得点により順位が決定される。
 今大会見事優勝を飾ったのは、台湾からの留学生であるコン・ユン選手(金蘭会高等学校)。彼女にとって初の全国大会であったが、長身を活かした演技はとてもダイナミックであり、自分の持ち味を分りながら演技しているように感じられた。今後、ダイナミックな動きに見え隠れする粗さが取れれば、より美しくなるように思う。
 残念ながら2位に終わったのは加畑碧選手(町田RG)。今年3月に開催された全国高校新体操選抜大会でタイトルを手にした加畑選手は、今まで以上に気迫と自信に充ち溢れているように見えた。
 しかし、最終種目フープでは落下ミスに加え、怖さからか全体的に小さく見えたのが惜しかった。他者を寄せ付けない力強い演技は、彼女の個性となり光を放っていただけにミスが悔やまれる。
 また、昨年に引き続き今年度も同じ作品だったこともあり、技や動きに磨きがかかっているのを感じたが、新たな作品や技に挑戦し今までとは異なった加畑選手が見られることも今後期待したい。
 前年度チャンピオンである池ヶ谷晴香選手(アンジュ)は、フープの投げ技での場外が点数に響き3位に留まった。今回はミスに泣く結果となってしまったが、彼女が今一歩他者から抜き出るには、彼女にしか出させない個性が欲しいところである。
 惜しくもメダルには届かず4位に終わった藤岡里沙乃選手(みやび新体操クラブ)だが、それぞれの作品を見事に演じ切っていたのが印象的であり、他選手には感じられない彼女の妖艶な表現力は、フロアーに余韻を残した。
 今大会はミスが多く、メダル争いには参加出来なかった皆川夏穂選手(イオン)だが、身体能力には磨きがかかっていたように思う。今は4種目共に作品を変え難しい技に挑戦している段階だが、この内容で仕上がることを考えると、この挑戦は評価に値するように感じられた。
 また、メダル圏外ではあるが、古井里奈選手(チェルシーRGC)は、身体能力が高い事に加え、まるでフロアーに華が咲いたように踊るその姿は、見ている者を引きつける力があった。まだ手足の緩みが気になるものの、今後の活躍を期待したい選手の一人である。
 新体操において音楽はとても重要である。また、音に合わせることはその作品を表現する上でとても重要視されており、作品の良し悪しや見栄えに左右するだけでなく、採点にも大きな影響を与えることは言うまでもない。
 新体操で言う“曲に合っている”は、ただ単に“曲のアクセントに投げのタイミングが合っている”、“リズミカルな曲のテンポにステップが合っている”だけでは足りないといされている。と言うのも、芸術的には勿論のこと、ルール上においても1‘30(個人)2’30(団体)の間、スタートからラストまで曲のテーマと作品のコンセプトが離れることがあってはならないとされているからである。つまり、選手が出来るからそのエレメント(投げ、難度、操作など)を作品に入れるのではなく、曲に合った投げ方や曲のニュアンスに合った操作を選択するようにしなければならない。究極を言えば、表現する為の一つの手段として投げや難度をするのであり、どの場面においても踊ることを忘れてはならず、人とは異なったエレメントに挑戦していかなければならないのである。
勿論選手によって能力は様々であり、出来ることに限りがあるのは避けられない事実である。しかし、その事を理解した上で構成された作品と、“点数を獲得する為”に構成された作品とでは大きく異なるように思う。そして、そこに表現力が加わった時、世界のレベルに大きく近づくことが出来るであろう。特に力を秘めているジュニア、ユース世代は守りに入らず、その一歩を大きく踏み出していく事が望まれる。
【大会結果はこちら】
⇒ https://www.jpn-gym.or.jp/rhythmic/2012/result/data/12ych.html