2012モスクワグランプリ新体操国際レポート2
2月25日モスクワグランプリ 個人総合、団体総合が行われた。
<団体>
団体は3カ国(ウズベキスタン、ロシア、日本)だけの出場であったが、ロンドンオリンピックに向け課題をクリアし確実に精度を高めていかなければならない日本にとっては、どのような大会も大きな意味を持っている。
今大会、フープ2×リボン3で27.225、ボール5で27.000を獲得し、地元ロシアが優勝を飾ったが、実は試合数週間前にチームの要であった選手が怪我をしたことによりメンバー交代を余儀なくされ、公式練習においてもなかなか作品がまとまらない練習を繰り広げていた。毎日同じ体育館で練習を行っている日本団体チームの話によると、朝9時前からアップが始まり、休みなく夜8時まで練習を行うこともあると言う。世界選手権においてここ3年間1位の座を譲っているロシアだけに、ロンドンオリンピックでは何としてでも金メダルを死守すべく、選手は勿論のこと、コーチ陣からも気合いや気迫を感じる日々だそうだ。
ロシアの新しい作品は、昨年以上に5人が絡み合った複雑な連係や交換の連続である。これは、高得点を狙えると同時にハイリスクも背負うことは言うまでもない。しかし、練習ではミスが続くロシアだったが、試合ではミスを最低限に抑え両種目共にまとめ上げた。この本番に力を出し切る勝負強さは、練習量に加え、何が何でも絶対にやり切ると言った意地やプライドが集中力を最大限に高めているように思えた。この能力は、選手にとって最高の武器とも言える。今後この作品に精度が増した時、今以上に高得点が狙えると共に見応えのある演技になることは間違いない。
日本は、試合数日前に正メンバーであった深瀬菜月選手が体調不良の為、急遽三浦莉奈選手に交代しての試合となったのだが、多少のミスも素早い判断・対処でカバーし大きなミスをすることなく、2種目共にまずまずの出来であった。しかし、ボールにおいては両手受けが多く見られ、まだまだ熟練度に磨きをかけなければならない。そして交換や連係だけではなく、両種目共に難度一つ一つにこだわり、よりクオリティーの高い難度を実施することが高得点を狙う為の必須条件になるであろう。
<個人>
昨年の世界選手権覇者であるカナエバは、珍しくボールで場外してしまうミスがあり、0.6点の差で惜しくもコンダコバに金メダルを譲る結果となった。
今年1月中旬に行われたオリンピックテストイベント(ロンドン)では、新しい作品がまとまらず難度の不正確さやミスが目立っていたコンダコバであったが、今大会では前にも増した力強い演技で観客の心を熱くさせた。4種目を通じ、正に空気が動く演技であったと言える。
フープでは、ジャンプの形が不明確な箇所があったものの、不安を感じさせない安定した投げ技が決まり28.350点。ロンドン以降曲が変更されていたボールだったが、自分がどこを魅せたいのかがハッキリ感じ取れるほど、1‘30の中に緩急が感じられるまでに仕上がっていた(28.700点)。クラブでは多少手具がもたつく場面も見られたが、大きなミスはなく28.700点。昨年と同じ曲を使用していたリボンでは、スピード感が更に増し、アップテンポの曲にピタリと合った動きは他の種目とは違った印象で観客を沸かせ29.000点。
ピボットに定評のあるコンダコバであるが、昨年以上に回転数が増していることに加え、ピボット中でも上半身を自由に使いこなし表現出来る技術は格別であり、未来の新体操を物語っているようであった。
今大会では2位に甘んじたカナエバであるが、見る度に進化を感じさせる彼女の能力は底知れず、ロンドンオリンピックまでの過程がとても楽しみである。
フープでは、多少投げ技でごまかす部分が見受けられたが、止まらない手具の巧みな動きは、見る者を驚かせた(28.750点)。ボールでは、座での足取りにおいてキャッチのタイミングが合わず、足で蹴ってしまう形となり場外に転がってしまった(27.4500点)。だがこのミスを通じ、当たり前ではあるが彼女も皆と同じ人間であること、またミスのない演技は練習の賜物であることが証明されたようであり、少し勇気をもらえた気がした。クラブでは、本来の持ち味である生きた手具さばきで29.250点を獲得。続くリボンでは、昨年と同じ曲ではあるものの、その内容は更に複雑化されていた。転がしで一カ所落下ミスがあったものの、カナエバ選手が操るリボンは、生きているとしか思えないほど自由自在に操られており、まるでリボンを使い音楽を奏でているようにさえ感じるほどであった(28.700点)。
明日は種目別決勝が行われ、今日以上に白熱した演技が期待できる。