第64回全日本新体操選手権大会レポート[女子個人総合]

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日本国内で最も大きく、そして一年の締めくくりでもある全日本新体操選手権大会が、ここ幕張メッセにおいて11月18日~20日までの3日間行われる。
様々な思いを胸に終結した個人36名、団体14チームの選手たちによる華やかで、そして熾烈な戦いの幕が切って下ろされた。
<個人総合  18日、19日>
9月に開催された世界新体操選手権大会の日本代表メンバーであった、山口留奈選手、中津裕美選手、大貫友梨亜選手、また惜しくも世界選手権の代表には選ばれなかったものの、8月に開催されたユニバーシアード大会に出場した穴久保璃子選手の戦いに注目が集められた。
そんな中、世界選手権において唯一個人総合決勝に進出した山口選手が、ひと際強さを増した演技で4種目ともに最高得点をマークし、合計101.150点を獲得。初の全日本新体操選手権個人総合優勝を手にした。
ボールではやや両手受けが見られたこと、また中盤でのポロミスが響き25.175点。続くフープでは、難度の終盤まで見せ切るといった彼女の意地・プライドが光り、今まで以上に覇気を感じる演技で25.500。そして、リボンではドゥバンパンシェ(ピポット)で多少ぐらつきが見え25.100点にとどまったが、全ての大きな投げ技においてピタリと手に吸い付くようなキャッチは、見る者を圧倒した。クラブでは一カ所胸でキャッチしてしまう場面もあったが、物怖じしない高い投げ技や軸がぶれない難度は、チャンピオンの名にふさわしい演技であった。(25.375点)
続いて、今年初めて日本代表として大会に出場し、大きな経験を経て成長を遂げた中津裕美が合計97.475点を獲得し2位に入賞。全日本新体操選手権において初の表彰台となった。
フープでは硬さが見られ大きなミスはなかったものの、D1(徒手難度)の不確実さが目立ち24.700点。ボールでは、投げ技で若干の移動が見られたものの力強い演技で観客を魅了し24.675点。クラブでは投げ技に狂いが見られ、普段の勢いが出せないまま終わり23.700点。彼女自身以前は苦手と言っていたリボンだが、フェッテピポットで多少の移動が見られたものの最後までミスなく踊り切り24.400点。
日本では表現力に定評のある中津選手だが、今後プレパレーション(難度の準備)の時間を省いていくことで、曲調を生かした、より流れのある作品になるはずである。
様々な大会での経験や思いを糧に成長した穴久保選手は、総合95.875点を獲得し3位入賞。彼女もまた初の表彰台に笑顔がこぼれた。
大人の女性を演じたいと語っていたボールでは、その言葉通り一つ一つの動きや難度からにじみ出る表現力に、今までにない彼女の魅力を感じた。若干移動しての受けはあったものの上手くまとめて24.675点。フープでは、動きだけではなく難度においても確実性を見せていたのだが、終盤フープを転がそうと回した瞬間手からこぼれ落ちたフープが場外。23.300点と伸びなかった。リボンでは、中盤に結ばったリボンが上手く処理できずドゥバンパンシェでぐらつく場面もあったが、ラストまで何とか持ちこたえ23.500点。クラブではD1で多少ふらつきが見られたものの、しっとりとした曲に合わせミスすることなく綺麗にまとめあげ24.400点。
年々進化が見られる大貫選手だが、今大会においては「やり遂げたい」という彼女の強い思いと、体、手具とが噛み合わなかったように見受けられた。その為、大貫選手には珍しく大きなミスが連発し、合計95.825点で4位に泣く結果となった。
世界選手権後にプログラムを変更したフープでは、優雅な曲と以前にも増した美しい動きとが融合され、大貫選手の新たな魅力も垣間見られたが、投げ技でのキャッチミスから場外→予備手具を使用するという大きな減点があり23.725点。続いて落下ミスは防いだボールだが、終盤、手具を伴わずに実施した柔軟難度がカウントされず24.475点。クラブでは前半とても歯切れのよい難度、動きを見せていたのだが、中盤の投げ技とラストで落下し23.075点と大きく後退する結果となった。続くリボンでは大貫選手のピポットが光る演技で会場が湧く場面もあったが、まさかのポロミスから動揺が見られ、後半勢いを欠く演技に終わり24.550点。
個人競技終了後、プレナショナルのジュニア選手(国井麻緒(山形RG)、熨斗谷さくら(コナミスポーツクラブ本店)、宮本望来(イオン)、皆川夏穂(イオン))によるエキシビションが披露された。
今年の春先より、世界選手権日本代表枠をかけたシニア選手の熾烈な戦いの場であったCS(コントロールシリーズ)において、彼女たちもまたエキシビションとして参加し数多くの舞台を経験することで、大きな成長を遂げてきた。何故ならば、緊張感の中でパーフェクトに演技することの難しさ、日本国内の上位選手であっても26点を越えなければ代表にさえなれないという厳しさを、彼女たち自身が肌で痛感してきたからである。そして、そのプレッシャーに負けないよう、日々練習に励んできた成果であろう。
それ故今回は、4人ともにミスのない、全日本選手権に出場していたどの選手にも負けない力強さ、伸びやかさのある演技で会場を魅了し、未来の日本新体操界に明るい兆しを見せてくれた。
20日は、個人総合において上位8位までに入った、各種目のファイナリストによる種目別決勝が行われる。