第29回世界新体操選手権日本代表決定競技会レポート

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 第29回世界新体操選手権大会(2009 三重)日本代表決定競技会が28日、東京体育館で行われた。
 この大会は、2次選考会の得点の半分を持ち点とし、今大会の得点との合計点で順位が競われた。
 見所は次の3点。
 1つ目は2次選考会でトップに立った日高舞(東京女子体育大学)がどれほど進化した姿を見せてくれるのか。
 2つ目は2番手グループの大貫友梨亜(東京女子体育大学OG)、井上実美(飛行船新体操クラブ・早稲田大学)、庄司七瀬(東京女子体育大学)、浅沼圭(東京女子体育大学)の熾烈な闘い。
 3つ目は、若手有望選手筆頭の穴久保璃子(イオン・流通経済大学)、中津裕美(東京女子体育大学)がどんな躍進を見せてくれるのか。
 日高は「最悪のコンディションだった」と本人が言うとおり、2次選考会ほどのエネルギーは感じられなかった。しかし、それでも難度の正確さや、ダイナミックさは健在で、悪くてもある程度の力を見せられるというのが、彼女の強さだろう。リボンの種目で、フェッテでの乱れ、結び目ができるなどのミスが出たが、ほかの種目はうまくまとめ、持ち点と合わせて1位となった。
 大貫は前半種目のロープ、作品を変えたばかりのフープも、彼女の持ち味であるのびやかな演技を見せた。後半の種目のリボンではキャッチミス、投げミスがあり、ボールでも投げをミスして終盤リズムを崩したが、最終的には2位争いから少し抜けた形となった。
 もっとも熾烈だったのは、3位争い。
 世界選手権には4名が出場できるが、うち一人は協会推薦となるため、今大会の1位から3位までが代表となる。その残り一枠をめぐって、井上、庄司、浅沼の三つ巴の闘いとなった。
 井上は前半種目フープ、ロープともに、ほぼミスのない演技を見せた。難度も正確で、非常に落ち着いていた。
 庄司もロープは、試技順一番という緊張した中でも、スピード感のあるピボットや手具操作で会場を沸かせた。フープは若干キャッチが不正確になり、投げをミスしてリスクが抜ける箇所があったが、全体的にはやはりスピーディーな演技であった。
 そして浅沼。「日本一印象に残る、もう一度見たいと思われるような演技をしたい」と言っていたが、その通り、小気味よく、エネルギッシュな演技を見せた。どの種目も浅沼の世界が十分に広がっていた。
 後半種目になると井上がリボンで落下ミス。キャッチミスでもなければ投げのミスでもなく、キャッチしたあと安心したのか、手からリボンのスティックがはなれてしまうというケアレスミス。ボールでも若干操作ミスがあったが、全体を通して落ち着いた演技が印象的であった。
 庄司はリボンはほぼミスなく演技。ボールは操作ミスと、ラストのもぐり4回転の大技で軸がずれて少々崩れたが、庄司も自信を持って4種目を演技した。
 結果、3位となって日本代表の切符を手にしたのは井上。正確な難度と美しいラインが勝因であったろう。
 若手の穴久保は171cmという身長を生かしてハイレベルな難度を展開。ロープやボールでは落ち着いた演技を見せ、庄司、浅沼を上回る得点も得た。しかしフープでは堅さが見え、フープの転がし時に落下。キャッチも不正確な箇所がいくつかあり、リボンでもからまりやキャッチミスが出ていた。
 中津はボールでは情感たっぷりに演技して23点台を出したが、残り3種目は難度や手具操作が不正確になり、リボンでは落下やからまり、結び目ができるなど大きなミスとなって18点台に沈んでしまった。
 ジュニア期から数年をかけて強化してきた選手たちであるが、その得点上位者を協会推薦とするということで、穴久保が協会推薦枠を手にした。若手はまだまだ4種目をコントロールしていくという点で未熟であり、今後の課題と言えよう。
 全体的には、みなこの試合に合わせて来たという感じは伝わってきた。
 緊迫した中で、最高の演技をできた選手もいた。
 しかしながら外国選手の演技と比較すると、手具の動きが少なく、手の中に収まっている時間が長いことが日本選手全体の課題。代表に選ばれた選手も選ばれなかった選手も、その点をクリアするべくがんばってほしい。
 三重世界新体操選手権は9月7日から13日まで、三重県営サンアリーナで開催される。
第29回世界新体操選手権大会(2009 三重)日本代表
<個人競技>
日高舞(東京女子体育大学)
大貫友梨亜(東京女子体育大学OG)
井上実美(飛行船新体操クラブ・早稲田大学)
穴久保璃子(イオン・流通経済大学)=協会推薦
日高舞コメント:最悪なコンディションで、ダントツで勝ちたかったのに、なんとか踊りきるのが精一杯という状態だったのが悔しいです。でも最悪な状態が世界選手権の日かもしれないし、「無理だと思うんじゃなく、最悪でもどうやってやれるかを考えてやれるようになったのは成長だと思います。前回のパトラスの世界選手権ではオリンピックの切符を勝ち取ることができずに悔しい思いをしたので、パトラスでの悔しさをはらしたいです」
大貫友梨亜コメント:2種目はうまくいったんですが、2種目はうまくいかず、納得はできていません。練習ではでないミスもあったりして、「試合でそういう状態になるということ」も今日改めて学びました。世界選手権ではそういった点も含めて課題をクリアしてがんばりたいです。
井上実美コメント:私は自分の世界に入り込んでいたので、どんな演技をしていたのかあまり覚えていません。帰ってからじっくりビデオで見たいと思います。ミスはあったんですが、それでもつなげてやれた点は納得しています。団体で世界選手権(2005 バクー)に出場したことはあり、今度は個人で出場したいと思っていましたから、とても嬉しいです。いまジャパンのユニフォームを着て、日本代表としての責任も感じています。
穴久保璃子コメント:協会推薦枠で選んでいただき嬉しく思っています。今日の演技はミスもあって納得できていません。だいぶ難度の正確さ等も上がってきたのですが、心の弱さが出たかなと思います。でも一日4種目を演技する中で、大崩れしなかったのは成長だと思います。とても責任も感じていますし、自分ができることを精一杯やって9月に間に合わせたいと思います。