ティエ新体操グランプリ現地レポート2
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フランス現地3月31日、ティエグランプリ種目別決勝が行われた。 団体は新生フェアリージャパンPOLAメンバーが出場。前日の団体総合ではボール&リボンで大きなミスが出てしまったが、この日の種目別決勝では、種目の出来が逆転した。1種目目のクラブでは前半良かったものの、中盤の足投げ交換が少し大きくなり、場外。 4本投げのキャッチで落下し、DERでも落下。ラストの交換でもキャッチが不正確となり、重要な箇所でのミスが響いて13.900(D7.300 E7.200 場外0.600)クラブは6位となった。中盤から集中力を欠き、気力も体力ももっていないなという感じであった。 しかし2種目目のボール&リボンは、連係の箇所でボールの落下があったが、前日のようなミスの連続ではなく、ある程度流れを見せることが出来た。まだまだキャッチの移動やボールの両手取りが多く、その分実施は低くなったが、クラブで大きなミスを犯しながら、気持ちを切り替えてボール&リボンに臨めたのは意義深いことである。 D8.000 E7.600 計15.600で5位。 ロシアは両種目とも17点台に乗せ、両種目とも制覇した。次々と曲が切り替わる伴奏音楽で、軽快なステップを踏んでいたクラブは17.700(D9.000 E8.700)。ボール&リボンでも今日は踏ん張り、17.733(D 9.000 E8.733)。しかし、ロシアもボールの両手取りが多く、まだまだバタバタしている印象であった。とにかく、ピンポイントで投げなければ成立しない技が多く、神経をすり減らすような感じである。でもそこに挑戦しようとしていることには頭が下がる思いである。 クラブの2位はスペイン。今日は現段階でできる最高の演技を見せた。音楽と動きもぴたりとはまり、空間の使用も絶妙で、非常に素晴らしい。ロシアにはあと一歩及ばなかったが、出来としてはロシアを上回る演技であった。(D8.650 E8.600 計17.250) クラブ3位はウクライナ。多少のミスはあったが、大きさを感じさせる演技であった。 (D8.600 E7.867 計16.467) クラブ4位は中国。前日と比較して落下ミスなどが出て乱れてはいたが、身体の難度はきっちりとカウントでき、15.567(D8.200 E7.367)となった。 クラブ5位はフランス。いくつかミスは出たが、昨日からすると雲泥の出来であった。D7.500 E8.000 計15.500。アゼルバイジャンは場外に出る落下ミスが2回あり、7位。D8.000 E6.800 場外1.200 計13.600。 ボール&リボンの2位は中国。リスクで落下したことと、細かい落下はあったが、全体的には大きく崩れることもなく、種目別でも表彰台に上った。16.650(D8.650 E8.000) 3位はウクライナ。一箇所連係で乱れたが、大きさと幅のある演技で16.067。(D8.500 E7.567) 4位はスペイン。交換時のリボンの落下ミスや、交換、連係時のキャッチの移動が大きい箇所が数カ所あり、15.767(D8.400 E7.367)。 5位が日本で6位がアゼルバイジャン。身体の難度が不明確で、ラストも曲に合わないなどのミスで15.567(8.200 7.667 場外0.300) 7位は地元フランス。独特な雰囲気の作品で興味深かったが、いくつかのミスが出て15.500(D8.200 E7.300) 日本はまだ、「悪くない」という状態であるように思う。ここからもう一段階上がっていくためには、強烈な個性が必要かもしれない。作品的には、少し抑揚が足りないのではないかという声も聞かれた。私自身客観的に他の国と比較して、音楽の抑揚もそうだが、空間の使用に関しても単調であり、平面的であるように感じた。今後すぐに作品を構成し直し、立体的な作品にしていきたいと思う。 とにもかくにも、ひとつ試合をこなし、多くの収穫があった。選手は今後さまざまな経験をしながら、強くなっていくだろうという可能性も見えた大会であった。 <個人総合 ティエグランプリ1日目> 個人競技は、果敢に難しい手具操作に挑戦する選手たちと、ダンス系に走る選手に二分された感じであった。カナエバやコンダコバ、ディミトリエバ、ガライエバらが引退し、誰が新しい女王になるのかが興味深い中、ロシアはMargarita MAMUN、Daria SVATKOVSKAYA、Alexandra MERKULOVAという3人の若手を出してきた。 MAMUNは若い頃のカナエバを彷彿とさせる選手で、気品があり優雅な演技をする。手具操作も抜群で、2種目を18点台に乗せ、金メダルを獲得した。 2位はDaria SVATKOVSKAYA。かつての名選手オクサナ・スカルディーナの娘であり、彼女と同様、チャーミングな演技で観客を魅了した。小技から大技まで実に凝っていて、見ごたえのある演技であった。 3位はAlexandra MERKULOVA。カナエバではなくカバエバ選手に似たタイプで、アピール性があり、ロシアは表彰台を独占した。 4位はSyviya MITEVA。ルールが変わり、彼女の流れるような演技は生かされているように思う。リボンだけはダンスステップが多く、手具が離れない印象であったが、それぞれの種目で違う味を出そうという気持ちが強く表れていた。 5位はNeta RIVKIN。相変わらず繊細で確実な演技を行っていた。 6位はMelitina STANIOUTA。昨年はケガに泣いたが、一時期より復活してきたように思う。 7位はCaroline WEBER。難しいことはほとんどやらず、音楽と動きをマッチさせることに徹している感じであった。フープで使用したマイケル・ジャクソンの曲ではムーン・ウォークなどを見せ、観客からは大きな拍手をもらっていた。 8位はViktoria MAZUR。昨年のロンドンオリンピックでは団体のメンバーに入っていたが、今季は個人に戻り、美しく軽やかな演技を見せた。 ほかに目立ったのはAlina MAKSIMENKO。いくつか大きなミスが出て12位に沈んだが、ダンス的な動きを多く入れ、観客を魅了した。ただ上位に位置している選手からするとリスキーさに欠け、演技会で踊っている感じにも見える部分があった。 フランスのKseniya MOUSTAFAEVAは果敢に難易度の高い技に挑戦していた。手具があまり手から離れることなく踊っている選手と、次から次へと手具を動かし難しい技を繰り広げている選手が同じ土俵で戦うのもかわいそうに思えるほどであった。 ほかにもアゼルバイジャンの Marina DURUNDA、カナダのPatricia BEZZOUBENKO、イタリアのVeronica BERTOLINIなど、若手の今後が楽しみな選手が多数出場していた。 日本からは参加しなかったが、現在、皆川夏穂、早川さくらの2名がロシアに留学し、ロシア人コーチのもと、練習をしている。作品を変えている段階ではあるが、ルーマニアのブカレストの大会には出場する模様。早い段階から多くの選手たちの中で揉まれ、強さを身につけていってもらいたい。