第32回世界新体操選手権現地レポート4
8月31日、世界新体操選手権キエフ大会4日目は団体総合が行われた。
参加国は29チーム。技順の抽選により二つのグループに分かれ、日本(フェアリージャパンPOLA)は前半グループに入っていた。このグループにはロシア、スペイン、イスラエル、アゼルバイジャンなどがいるが、力から見て、どうにか3位で後半グループを待ちたいところ。
日本のすぐ前に登場したのはロシア。複雑な連係を武器に、団体でも金メダルを狙っていた。というより、落下ミスがなければロシアの優勝は間違いなかった。しかし、最初の種目、ボール&リボンの序盤でリボンの投げが短くなり、移動してキャッチ。体勢が整わないうちにローテーションに入ったために、不正確な難度となってしまった。連係でも落下し、17.450と、ロシアにしては不本意な得点となった。
直後に日本が登場。日本は8月の中旬に行われたW杯サンクトペテルブルグ大会以降、内容を変更したり、メンバーを変更したりと、試行錯誤を重ねてきた。選手のケガなどもあり、一日で何度も選手を入れ替えたりと慌ただしい日々を送ってきたが、インナ・ビストロヴァヘッドコーチの手腕と横地愛コーチのサポートにより、練習ではなんとかまとまりを見せてきた。サンクトペテルブルグ大会で初出場し、今大会もメンバー入りを果たした国井麻緒は緊張からか、リーダーの合図がある前にポーズをとってしまい、また手を下ろしてポーズを取り直すという一幕も。それでも演技が始まると、堂々と演技をしていた。中盤のDER(身体の回転を伴う投げ技)で、リボンの端が場外に出てしまったようで(見た目には確認できなかった)、0.3の減点は大きかったが、みな全体的には落ち着いて演技できていた。しかし、得点はD8.100、E7.733と意外に低い。場外の0.3を減点すると、合計で15.533。出来の割には、苦しいスタートとなった。
スペインは最初の種目クラブでは、非常にエネルギーのある演技をした。難度が少し甘いが、ほぼミスのない演技をした。17.133。
イスラエルやアゼルバイジャンにも一種目目に落下ミスが出て、日本はロシア、スペインに次いで3位で折り返した。
ロシアの2種目目はクラブ。出だしは好調だったが、上体を反らしたジャンプターンの前に落下。他の選手も直後にポトリと落とし、リズムが狂った。ステップコンビネーションのときにも落下し、16.775。合計34.226で、優勝するには難しい得点となってしまった。
キッス&クライでロシア選手たちが表情をなくしているときに、日本が登場。エカルテのバランスのキープが甘くなり、ステップコンビネーションで小さな落下。しかし、その後リズムを狂わせることなく、全体的には移動も少なく、踊り終えた。得点は16.116。合計31.649で、どうにか3位で折り返せそうであった。
ところが同グループ最終演技チームのアゼルバイジャンに高得点が出た。ボール&リボンではパンシェのローテーションでも開脚度がまったくなく、キャッチの移動、ばらつきも見られたが、予想外に得点が伸びた。16.116、合計31.832で日本の上へ行き、日本は4位。
後半グループはベラルーシ、ブルガリア、中国、フランス、スイス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、地元ウクライナと、上位を狙える国が多く、このままでは日本の入賞は難しいと思わざるを得なかった。
そして後半グループの演技がスタート。まずベラルーシが登場。クラブでは、パンシェのローテーションで少し乱れたが、団体同時性もあり、落下ミスもなく好調な滑り出しを見せた。17.783。
ブルガリアは連係でクラブを落下。ローテーションでも早くかかとがついてしまい、連係の投げが乱れて本来キャッチするべき選手がキャッチできないなどのミスがでて、15.783。
中国はボール&リボンから。交換で落下し、15.900。
フランスもボール&リボンで、連係で落下。キャッチに大きな移動があったり、スケールのバランスがFIXされていないなどのミスが出て15.133。
いつも手堅く演技するスイスも、クラブの演技では全体的には同時性があったが、DERで落下。15.866。
ドイツはボール&リボンで、パンシェで崩れ、交換では移動してやっとのことでキャッチ。ほかにもずいぶん走ってキャッチするなどミスが多く、15.158。
ギリシャのクラブは、非常にテーマ性も同時性もあり、素晴らしい演技を見せていた。しかし、最後のDERで落下。選手の足が場外にも出てしまい、15.183。
どの国も落下ミスや移動が多く、一種目目はみな苦しいスタートとなった。
そんな中でイタリアはクラブを落下なしで終え、17.600。表彰台、あるいは金メダルを狙える位置も確保した。
地元ウクライナはクラブを落下し、16.766。
後半グループの2種目目の出来によるが、日本は相変わらず入賞が難しい位置にいた。
後半グループ2種目目、ベラルーシはボール&リボン。パンシェのローテーションでまたも乱れたが、全体的にはエネルギーのある演技で17.925。合計35.708でロシアを抜いた。
ブルガリアのボール&リボンも、前半少しキャッチの移動があったが、落下ミスはなく、17.150。ブルガリアはスペインのあとにつけた。
中国のクラブは、連係で大きく移動してキャッチする場面はあったが、全体的には難度もクリアで、交換の移動も少なく、16.683。合計32.583で、ブルガリアのあとに続いた。
この時点で、1位ベラルーシ、2位ロシア、3位スペイン、4位ブルガリア、5位中国、6位アゼルバイジャン、7位日本。
イタリアとウクライナを加えると、日本はよくて9位。まだ演技を終えていないフランス、スイス、ドイツ、ギリシャも気になるところである。
そのフランスのクラブは、フェッテバランスで落下。大きな難度を失った。交換でも落下し、ローテーションにも乱れが出て、14.883。
スイスのボール&リボンは前半から好調に飛ばしていたが、一箇所投げが乱れて落下。リボンが場外に出てしまい、15.000。
ドイツのクラブはキャッチの移動、連係の落下があったが、予想外に得点が高く16.400。日本はドイツの上であったが、その差はわずか0.091だった。
ギリシャのボール&リボンは落下はなかったが、15.516ともうひとつ得点が伸びなかった。
残る強国はイタリアとウクライナ。この時点でも日本は7位で踏ん張っているが、両国が普通に演技すれば、9位に落ちてしまう。
そしてイタリアのボール&リボンは、エカルテのバランスでリボンが絡み、ジャンプターンのキャッチでも落下。どちらの種目もラフなやり方をしているように見えるが、17.133。合計34.733でロシアをかわし、2位に食い込んだ。日本はこの時点で8位。
残るは地元ウクライナ。ボール&リボンの序盤は、観客の声援にも助けられ、リズムに乗った大きさのある演技をしていた。しかし、中盤に空中でリボンとリボンが接触。落下して、人と人との接触もあり、そのあとに投げられたボールを誰もキャッチせず。しかもフロアーのそばに置いてある予備手具に差し替えればよかったのに、場外に出たボールを、選手が遠くまで追いかけてしまった。そのため、いくつかの連係や難度が行われず、後半でも落下があり、12.500。合計29.266で15位となり、日本は8位に踏みとどまった。
日本の出来は決して悪くなく、8位入賞は棚ぼたでも何でもないと思う。リーダーの畠山愛理、サイード横田仁奈、松原梨恵のロンドンオリンピック出場組、そして新メンバーの杉本早裕吏、国井麻緒も良く踏ん張った。国井は今大会で初めて2種目を演技した。
サイード横田は数年前に痛めた足がまた悪くなり、痛みと闘う日々だった。杉本も数日前にリフトから落下。足を痛めて同じく痛みをこらえながらの戦いだった。他の選手も故障があったが、この日を何とか迎えられた。今大会は見守るしかなかった加畑碧、熨斗谷さくらも、力の限りサポートに回った。ウクライナまで応援に来て、大声援を送ってくださったみなさま、日本で応援をしていただいた方々、コーチングスタッフ、メディカルスタッフ、審判員、総力で戦った世界選手権である。この場を借りて感謝申し上げたい。
とはいえ、日本はやっとスタート台に立てたばかり。難度の甘さや、投げ受けの甘さもあり、もっともっとエネルギーもほしいところ。質を磨き、心を強くして、リオオリンピックに向けて進んでいかなければならない。
明日は大会最終日。団体種目別決勝が行われ、日本は両種目に出場する。
山﨑浩子
Hiroko Yamasaki