第32回世界新体操選手権現地レポート3

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8月30日、世界新体操選手権大会3日目は個人総合決勝が行われた。
予選の成績により、1位から12位がAグループ、13位から24位がBグループと二つのグループにわかれ、まずBグループからの演技となった。

Bグループでトップに立ったのはギリシャのFiliou Varvara。クラブの出だしのM(マステリー=一般的ではない職人技)で落下。その後クラブでは勢いがなくなってしまったが、他の種目は音楽に乗せて、軽快にステップを踏み、演技を楽しんでいるようだった。必死な感じがせず、余裕があり、観ている方も楽しめる演技だった。

アゼルバイジャンのYusifova Lalaは4種目を落下なしでまとめた。表現力も豊かで、クルクルと表情が変わり、身体は小さいがエネルギーのある演技であった。

ほかにも多彩な手具操作を見せるフランスのMoustafaeva Kseniyaや、コマ数の多い動きで身体のコントロールの良さを見せたグルジアのPhajava Salomeなどが目立ったが、他は難度の羅列に見える選手も多く、音楽を表現するというところまでは至らなかったように思う。

そしてAグループになると、演技も勝負も格段に面白くなった。まず1ローテーション目でトップに立ったのは、ウクライナのRizatdinova Ganna。ボールの種目から入ったGannaは、実施ミスの少ない演技で18.250の高得点をたたき出した。

対するロシアのKudryavtseva Yanaはリボンの種目から。足持ちのローテーションが1回転になるなどわずかなミスがあり、18.083で2位。

Mamun Margaritaはフープの種目からであったが、パンシェのローテーションの2回目で崩れた。それが緊張からなのか疲れからなのかわからないが、全体的に身体に芯がない感じがした。17.833でMamunは1ローテーション目は4位と出遅れた。

1ローテーション目で3位になったのはベラルーシのStaniouta Melitina。リボンの種目からで、ローテーションの回数が少なくなる箇所もあったが、全体的にはとても伸びやかであった。

2ローテーション目は、Kudryavtseva Yanaがフープの種目をミスなく終え、18.533。2種目目でトップに立った。Rizatdinova Gannaはクラブをほぼミスなく終えたが、難度点が上がらず17.975。2種目目は2位。Mamun Margaritaはボールの種目で18.350を出し、3位に上がった。

3ローテンション目はKudryavtseva Yanaが完璧な演技を行った。ボールが手に吸い付いているようで、身体に磁石でも埋め込まれているのではと空想するほどである。ボールのキャッチの仕方も実に多彩。自らが回転しながら、ボールを転がしながらキャッチするのであるが、ボールのわずかなハネもなく、神業としか思えない。18.550でRizatdinova Gannaを引き離しにかかった。Mamun Margaritaは3種目目のクラブで、2本投げのDER(身体の回転を伴う投げ技)で1本を落下。17.266で4位に後退。3位にはここまでミスなくまとめているStaniouta Melitinaが上がってきた。

そして最終種目。少しでもミスが出れば、順位は大きく変動するため、集中力が鍵。特にKudryavtseva Yanaは、Mamun Margaritaが崩れてしまったため、金メダルへの期待を一身に背負っている。ミスができない状況でどんな演技を見せてくれるのかと、皆が固唾をのんで見守った。しかし、当の本人は、そんなプレッシャーを感じているのか感じていないのか、とにかく伸び伸びと演技した。クラブが手の中にある時間がほとんどないほど、大技の中に小技が組み込まれていて、神経が持たないのではと心配してしまうが、これぞお手本という感じで、クラブを身体から遠いところで扱う。難しい技をさらりとこなして、18.700。今大会の最高点を出し、ロシアに金メダルをもたらした。
誕生日が来ていないのでまだ15歳。ジュニアから上がってきたばかりの選手であるが、リオオリンピックに向けて、もっともっと成長していく様を観られるのが楽しみである。

2位はRizatdinova Ganna。フープ以外は、さほど難しい手具操作が入っておらず、当然実施ミスが非常に少ないが、それでも地元開催で、メダルを獲らなければならないというプレッシャーの中を、強い精神力で乗り切った。女性らしいしなやかな動きや、キレのある動きを見せ、会場は大きな声援と拍手につつまれた。

3位にはStaniouta Melitinaが入った。4種目を通じてミスがなく、動きもダイナミックで、ベテランの味を見せた。

4位は中国のDeng Senyue。リボンでは腕転がしで落下する惜しいミスがあったが、圧巻はクラブ。ローテーションのすべてが軸がはまり、ジャンプも高さも開きも十分。完璧な演技で17.916。個人的には18点に乗ってもよかったなと感じるぐらい、素晴らしい出来であった。

5位は韓国のSon Yeon Jae。今大会は彼女本来の力は出せなかったが、予選よりは動きも良くなっていた。

表彰台こそ逃したが、アジア勢が4位と5位になったことは希望が持てる。日本人も負けてはいられないと思わせてくれる戦いぶりであった。

Mamun Margaritaは最終種目のリボンでも、DERのキャッチが不正確となったり、ローテーションからバランスの連続ではこらえきれずに床に手をついてしまったりと、らしからぬ演技で6位となってしまった。予選では1位であっただけに残念な結果であったが、繊細で美しい演技はこれからもより磨かれていくことであろう。

Maksymenko Alinaは7位となった。最初の種目クラブの出だしで落下してしまい、もぐり回転でも落下。クラブは最後までリズムが作れなかったが、他の種目は表現力豊かに舞った。

8位にはBグループでトップだったFiliou Varvaraが入った。

9位のブルガリアのMiteva Silviyaや10位のイスラエルのRivkin Netaは安定感が武器であるが、今大会はミスが多く、精彩を欠いた。

トップ10のうち、新人はロシア勢のみ。その新人の選手が優勝してしまうところが、ロシアの層の厚さ、強さであろう。ベテラン勢は、今後引退する選手も出てくるだろうし、若い選手もすばらしい選手がたくさん出てきている。リオオリンピックに向けて、熱き戦いは始まったばかりである。

明日は団体総合が行われ、日本からはフェアリージャパンPOLAが出場する。8月中旬に行われたサンクトペテルブルグ大会以降、内容やメンバーを変更したが、それがどの程度まとまるのか、が鍵となる。

山﨑浩子
Hiroko Yamasaki