2020新体操モスクワ・グランプリレポート2
8日、モスクワグランプリ2日目はインターナショナル後半、グランプリ個人総合後半と団体総合後半が行われた。
<グランプリ>
日本から出場している皆川夏穂はクラブの種目から。
前半から投げが不安定であり、R(リスク=手具を投げ上げ、2回転以上の転回を行う) ではキャッチを取りこぼしたように見えた。
数多くのAD(加点対象となる手具操作)を入れ込んでいるが、脚の不調からBD(身体難度)を入れた練習が思うようにできておらず、それによる疲労や感覚の違いが見て取れた。
あちらこちらと投げに振られる形で、MGキックのローテーションや、シカジャンプターンでの投げなども形が不明確になった。
まったく脚の踏ん張りがきいていないため、それが投げに影響していた。
D1(BD、Sステップ)3.40
D3(AD、R)6.55
E (実施)6.55
計17.55
リボンも同様で、リボンが体に近く、後半の投げが大きく乱れて走ってキャッチ。
ラストも曲に遅れて終了した。
D1 4.20
D3 6.00
E 6.60
計 16.80
4種目合計75.35
1位はロシアのDina AVERINA。
クラブは多彩なADを次々とこなし、
D1 4.90
D3 10.10
E 8.80
計 23.80
リボンでは表現にも力を入れ、Rでの投げの乱れはあったものの
D1 5.40
D3 7.80
E 8.50
計 21.70
4種目合計93.20
2位はロシアのTRUBNIKOVA。
BDも正確で美しく、ADも多彩、動きの抑揚もあり、それぞれのバランスが取れた素晴らしい選手である。
クラブ
D1 5.60
D3 9.20
E 8.60
計 23.40
リボン
D1 5.50
D3 7.20
E 8.75
計 21.45
4種目合計92.45
3位には昨日5位のKRAMARENKOが入った。
今日もパンシェローテーションからエカルテローテーションへの移行BDが見事に決まり、クラブでは高い投げをキャッチしながらMGキックローテーションを行うなど、見るからに難易度が高い技を行っている。
バックルでのパンシェローテーションは6回ほど回り、会場中の視線をくぎ付けにした。
リボンではADでの落下ミスはあったが、それでもD1で7.4を獲得した。
クラブ
D1 6.80
D3 7.70
E 8.20
計 22.70
リボン
D1 7.40
D3 5.80
E 7.90
計 21.10
4種目合計89.10
4位ロシアのSELEZNEVA、5位ロシアのPOBEDUSHKINA。
6位にはスロベニアのVEDENEEVA(クラブ21.50、リボン19.40 4種目合計82.00)
7位にジョージアのPAZHAVA(クラブ20.10、リボン19.45 4種目合計80.85)
8位ウクライナのPOHRANYCHNA(クラブ18.90、リボン18.75 4種目合計80.00)
9位ウクライナMELESHCHUK 78.70
10位ギリシャのKELAIDITI 77.95
11位ウズベキスタンのFETISOVA 76.55
12位ルーマニアのMAILAT 76.30
13位韓国のKIM 76.20
14位中国のZHAO 76.10
前日8位のベラルーシのSALOSは、クラブ、リボンともに落下ミスが多く
クラブ17.30、リボン16.80 4種目合計75.60で15位に沈んだ。
16位が皆川。
前日4位のArina AVERINAは棄権した(理由不明)、
6位から14位に位置している選手たちは、ウクライナ勢を除いてオリンピックの切符を獲得する可能性がある選手たちである。
どの選手もまだまだ大きなミスが出ている中、ロシア勢はそれぞれに個性もあり、ADやBDもほかの選手が取り組んでいないようなものを実施している。また完成度も非常に高い。
いまのルールでこれだけの個性を出せ、難易度の高いものに挑戦し、それをものにしているロシアはやはり凄いと言わざるを得ない。
皆川は、試合での体力と試合の運び方を考えていかなければ、後半種目でがたっと順位を落とすことが多い。
ADをたくさん入れ込んでもそれをやり切れなければ意味がないし、今後熟練していくことを期待する。
<インターナショナル>
大岩千未来のクラブは、出だしのパンシェローテーションは回転数も多く決まったが、後半のADで連続して落下。
作品を変えたことに対して、まだこなしきれていない状況である。
D1 5.20
D3 6.20
E 6.35
計 17.75
リボンでは出だしの引き戻しでキャッチミスを犯すと、リボンに結び目ができて予備手具に差し替え。
ローテーション時もリボンが体に近くなった。
D1 4.80
D3 4.50
E 5.85
計 15.15
4種目合計72.90
1位はロシアのSIMAKOVA。
2位から7位もロシア勢。
8位にベラルーシのHARNASKO。
9位ウズベキスタンのTASHKENBAEVA。
10位ブルガリアのDRAGANOVA。
11位ルーマニアのVERDES。
12位に大岩。
インターナショナルは各国1名の表彰のため、大岩は6位で表彰された。
クラブの曲は、彼女にしては少し重すぎるため、以前の曲への再変更も検討される。
いずれにしても4種目を変えてこなしきれていない状況が浮き彫りになったが、まずはコンディションを整えて、良い練習を積み重ねられることが重要であろう。
<団体総合フープ3&クラブ2>
団体総合1位はロシア。
フープ&クラブでは交換で転びながらキャッチ。
連係でも落下があった。
D1(BD身体難度、ED交換、Sステップ)6.70
D3(C連係、Rリスク=手具を投げ上げ、2回転以上の転回を行う)17.50
E(実施) 7.65
計31.85 2種目合計64.25
2位はベラルーシ。
非常に個性ある強い曲でしっかりとした作品になっていることを感じさせる。
交換で落下があり、
D1 5.50
D3 16.50
E 6.85
Pタイムペナルティ0.05 計28.80 2種目合計61.25
3位イスラエル。さほど多くの連係は行っていない。
D1 6.30
D3 15.00
E 6.65
計27.95 2種目合計57.40
4位ウズベキスタン。ボールと同様に多くの連係を入れ込んでいるが、フープのキャッチでの跳ね返しが逸れて場外。
差し替えて、他の箇所でも落下。ラストは連係を実施せずに終了した。
D1 6.00
D3 13.80
E 5.15
Pラインペナルティ0.3 計24.65 2種目合計55.50
5位ブラジル26.15 2種目合計52.55
6位トルコ26.60 2種目合計52.50
7位フィンランド27.80 2種目合計49.70
連係の数としてはウズベキスタンが一番多い気がした。
どの国もボールよりは少々少ない感じであるが、ミスはこちらの種目のほうが出やすい感じもあった。
ひとつ試合を終えたことで、点数の目標値も見えてきた。
今後はD3の戦いではなく、実施力の戦いとなるであろう。
日々の練習の中で、その実施力を磨いていかなければならない。
明日は種目別決勝が行われ、皆川はボールの種目に出場する。
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