第36回世界新体操選手権レポート6
9月15日、第36回世界新体操選手権ソフィア大会6日目は、団体総合が行われた。
団体総合は1種目が単一種目、もう1種目がアンサンブルとなっており、昨年と本年は単一種目がフープ、アンサンブルがボール&ロープとなっている。
本大会には36か国が出場。
東京オリンピックへの予選(第1チャレンジ)となっていて、上位3か国がその切符を手にすることができる。
日本は開催国割り当てで出場できるが、やはり自分たちの力で切符を手にしたいところ。
ロシア、イタリア、ブルガリアと3強の壁は厚いが、今季開催されたW杯やWCCでは何度かメダルを獲得しており、ミスがなければ戦える位置にまで来ている。
その日本(フェアリージャパンPOLA)は、試技順抽選によりAグループ(18か国)に出場し、フープの演技から。
出だしの複数投げで一本がコースを外れたがすばやく対応。
2本投げも少々コースが外れるが、それもなんとか対応。
足投げによる3本投げは2本投げに変更されていたが、2本のフープ同士が寄って飛んできたため、それも対応。
リズムが悪い中を、なんとか落下なしでしのいでいた。
しかし、一番最後の交換でフープとフープが空中で当たり、1本落下。
最後に大きなミスが出て、19.750(D難度点13.000 E実施点6.750)
ボール&ロープは全体的に安定していたが、足で2個のボールをける箇所で、ひとつがうまく飛ばず、落下。
そのほかは踏ん張ったが、やはり落下ミスが出てしまった。
20.900(D13.100 E7.800)
2種目合計40.650。
出場選手
杉本早裕吏
松原梨恵
熨斗谷さくら
横田葵子
鈴木歩佳
フープに関しては、カザン大会以降、いくつか構成の変更をしていた。そのうちのひとつが、足での3本投げから2本投げに変えていたところ。
成功の確率がカザン大会以降のロシア合宿で低くなったために変更したようであるが、3本を投げる力と2本を投げる力はまったく違う。
3本投げでずっと練習してきていたのだから、2本投げの感覚が身につくには時間が足りなかったのであろう。
実施ミスを減らすための安全策が、かえってリズムを壊す要因となったとも考えられる。
いずれにしても日本がミスなしで演技して、かつ3強に大きなミスが出ることでやっと3位以内に食い込めるかどうかという実力の日本は、ミスが出た時点でメダルが遠ざかった。
同じグループのベラルーシも、フープの足投げの連係で落下。
交換でも落下とミスが出て、20.000(D13.000 E7.000)
ボール&ロープでも連係で落下し、19.200(D12.500 6.700)
2種目合計39.200。
3強のひとつイタリアも同グループ。
イタリアは、フープではほぼミスのない演技を見せた。
団体同時性も高く、作品のテーマ、音楽の使いもすばらしい。
難しい技も次々と決め、お見事!と言える内容であった。
22.775(D14.400 E8.375)
ボール&ロープでは若干の移動キャッチや加点対象の操作をやらないなどの点は見えたが、全体的にはこちらも素晴らしい出来で、22.025(D13.400 E8.650)
2種目合計44.825でAグループのトップに立った。
Aグループの2位は日本。
3位はベラルーシ。
Bグループにはウクライナ、ロシア、ブルガリアが控えている。
ウクライナのボール&ロープは大きなミスはなく、ダイナミックな演技をした。
21.250(D13.300 E7.950)と高い点数を出し、総合点で日本を上回る勢い。
フープでは連係で落下ミスが出たが、19.900(D13.000 E6.900)。合計41.150で日本を抜いた。
ロシアは、今季はさほど良い状況ではないと感じていたが、フープでは大きなミスなく演じ、23.250。
最初は22.950と表示されていたが、インクワイヤリが出されたかどうかよくわからないまま点数が上がったので、会場からはブーイングが巻き起こった。
ライブリザルトでも、<(D14.200 E8.750)合計23.250> と、中身と合計が合わないものが表示されているため、1位を狙うブルガリアの観客にとっては、納得のいかないものだったのであろう。
ボール&ロープの演技をするためにロシアが登場すると、会場からはふたたび大きなブーイング。
ブルガリアに勝ってもらいたいという気持ちはわかるが、観客としてのマナーはいかがなものかと思っていたが、ロシアはそんなブーイングをものともせず、自分たちの演技に集中した。
結果、大きなミスもなくまとめ、23.050(D14.100 E8.950)。
合計46.300で、イタリアを抜いてトップに立った。イタリアとロシアの出来は大差なかったが、BD(身体難度=ジャンプ、バランス、ローテーション)の大きさでロシアが勝った(まさった)。
この時点で1位ロシア、2位イタリア、3位ウクライナ、4位日本となり、日本のメダルはなくなった。
最後に控えている3強のひとつは地元ブルガリア。
ボール&ロープはキャッチする相手が違うなどの若干のミスは出たが、構成を壊すほどのものではなく、22.350(D13.600 E8.750)。
イタリアを抜けるか、ロシアにどこまで迫れるのかは、フープの出来にかかった。
そして鳴りやまぬ大歓声の中、ブルガリアが登場。会場中でブルガリアの国旗が振られ、隣の人と話すのも容易ではないほどであった。
始まりのポーズをとっても鳴りやまない応援の声。
するとひとりの選手が動き出し、ハッとした表情を見せる。
歓声により伴奏音楽が良く聞こえなかったのであろう。動き出しに戸惑いが見えた。
それでも落ち着いて最初の連係をこなしていたが、リズムは崩れていたのか、フープの跳ね返しなどがやれなかったり、R(リスク=手具を投げ上げ、2回転以上の転回を行う)に乱れが生じたりと、ポロポロとミスが出始めた。
直後、フープを床上に滑らせて相手に渡す予定が、フープのコースが悪く、しかも速いスピードで滑らせる技のため、フープはそのまま場外に。
機転をきかせて、すぐそばにあったほうの予備手具を使ったが、1位を狙うにはあまりにも大きなミスが出てしまった。
その後はがまんして演技したが、19.700(D12.500 E7.500 P場外ペナルティ -0.3)
合計42.050で、ボール&ロープの貯金により、どうにか銅メダルには食い込んだ。
応援は選手の力になる。
しかし、ポーズをとる前には一瞬の静寂が必要である。
ポーズをとる前やとったあとの応援は、かえって選手の集中力をそぐことになる。
今回は、集中力云々の話ではなく、音楽が聞こえなかったのだから、熱狂的な応援が仇になった形である。
結果
1位ロシア(東京オリンピックへの切符獲得)
2位イタリア(東京オリンピックへの切符獲得)
3位ブルガリア(東京オリンピックへの切符獲得)
4位ウクライナ
5位日本
6位ベラルーシ
7位アゼルバイジャン
8位フランス
終わってみれば、やはり3強は強し!という感じであろうか。
日本はウクライナの上には行きたかったが、5位入賞(36か国中)は決して悪い順位ではない。
8位入賞を争っていた位置から、メダルを狙う位置にアップしてもいる。
5位では満足できなくなったことこそが、底力が上がってきた証でもあろう。
来年は第2チャレンジのオリンピック予選。上位5か国(すでに切符を獲得した国は除く)に出場権が与えられる。
常にメダルを狙って、3強のミス待ちではなく、3強にミスがなくても日本がメダルを狙えるというところまでいかなければならない。
明日は大会最終日。種目別決勝が行われ、日本は両種目に出場する。