第70回全日本新体操選手権大会(女子レポート)3

報告者:

大会成績はこちら
大会最終日は種目別決勝が行われた。
●フープ
 優勝は河崎羽珠愛選手(イオン/早稲田大学)。
演技全体を通して、動きの繋ぎが滑らかになり表現力が豊かになった。流れる動きの中に徒手難度要素、手具難度要素が組み込まれ、熟練度を感じる演技であった。若干、徒手難度要素のフォームが不明確な場面もあったが最後まで大きなミスなく纏めた。D7.400 E7.850 得点15.250
 2位は立澤孝菜選手(イオン/国士舘大学)。
個人総合見事優勝に輝いた立澤選手、個人総合の演技よりもやや動きが硬く見えた。演技序盤のADで落下ミスが生じ、続いてローテーション難度で軸が取れず大きく崩れる。その後はプログラム通りの演技を演じた。リスクやADを随所に取り入れているが、演技が途切れる事無く音楽と動きの一致を感じる演技であった。D7.300 E7.550 得点14.850
 3位は大岩千未来選手(イオン)。
演技序盤はやや動きが硬く感じられが、後半に向けて取り戻す。ローテーション難度は踵の位置が高く回転のスピードも速く美しい実施であった。ローテーション難度の度に会場が沸いた。動きの繋ぎが滑らかで、しなやかで美しい動きが印象的であった。
D6.900 E8.200 得点15.050 
●ボール
 優勝は河崎羽珠愛選手(イオン/早稲田大学)。
ダンスステップコンビネーションから演技はスタート。表現力豊かな演技で観客を魅了した。河崎選手自身も「徒手難度要素が課題」とコメントしたように若干難度のフォームが明確に見えない箇所もあった。しかし動きの繋ぎの良さや音楽と動きの一致が感じられ、手具操作を巧みにこなした演技に引き込まれた。D7.600 E8.350 得点15.950
 2位につけたのは立澤孝菜選手(イオン/国士舘大学)であった。
演技は流れるようなダンスステップコンビネーションから始まる。しなやかな動きの中に難度要素が次々と組み込まれ途切れる事無く動きが繋がる。ジャンプ中に胸でボールを跳ね返した際に横に外れてしまったがキャッチ、ミスには繋がらなかった。演技終末の背面受けのリスクを見事に決め大きなミスなく演技を纏める。D7.300 E8.050 得点15.350
 3位は藤岡里沙乃選手(東京女子体育大学)。
独創的な音楽と演技構成に加え今大会、藤岡選手は難度要素の実施が明確であった。難度中の手具操作やリスクの回転の回数などがクリアに実施されていた。随所にADを組み込みほぼプログラム通りの演技を披露する。演技終末のADを成功させ会場から歓声があがった。D7.700 E7.500 得点15.200
●クラブ
 優勝は立澤孝菜選手(イオン/国士舘大学)。
難度要素の実施が非常に明確でほぼプログラム通りの演技を披露した。スピード感ある演技から中盤スローテンポにリズム変化し表現力豊かに演じる。ローテーション難度が美しく実施され歓声があがった。D7.500 E8.150 得点15.650
 2位は柴山瑠莉子選手(イオン)。
正確な演技に定評がある柴山選手。演技冒頭のクラブを転がすADを成功させ演技は波に乗る。テンポの速いリズムの中で次々と技を成功させる。リスクを受けるタイミングも明確にカウントでき、ローテーション難度は踵の位置が高く軸が引き上がっていた。演技終末の足で蹴り上げる難易度の高いリスクを成功させた。D6.900 E7.700 得点14.600
3位は植松智子選手(エンジェルRGカガワ日中)。
難易度の高い徒手難要素を組み込んだ演技構成で、バランス・ローテーション難度は軸がとても引き上がっていた。パンシェローテーション難度は軸にしっかりと乗り素晴らしい出来栄えであった。1つ1つの難度要素は明確に実施されていたが、動きの繋ぎが更にスムースになると得点がもう一息伸びてくるのであろう。D6.600 E6.900 得点13.500
●リボン
 優勝は立澤孝菜選手(イオン/国士舘大学)。
リズミカルで軽快な音楽に乗せて演技冒頭のリスクを成功させる。ジャンプターンで投げ上げられたAD受けで取り損ねる。すぐに取り戻したので大きなミスには繋がらなかった。演技を通して動きの繋ぎがスムースで、ローテーション難度が正確に実施されていた。D6.500 E8.200 得点14.700
 2位は藤岡里沙乃選手(東京女子体育大学)。
リボンが遠くで扱われ、伸びやかに美しく演じた。演技冒頭のローテーション難度は軸に乗れていない感じがあったが、その他はプログラム通りの演技を演じた。関節可動域が広いのでジャンプ難度やパンシェ難度は明確に見える。更に安定感やスピード感が加わるとスコアが伸びてくるのであろう。D6.500 E7.750 得点14.250
 3位には2名の選手が入賞した。
柴山瑠莉子選手(イオン)と古井里奈選手(国士舘大学)。
柴山瑠莉子選手は徒手難度要素は明確に実施されていた。ジャンプターン投げのリスクを受ける際足にリボンが引っかかりすぐに演技を繋げるが、次のADでもリボンの操作が少しもたついてしまった。D6.400 E7.600 得点14.000
古井里奈選手は演技冒頭のリスクを成功させ、流れの中で技が展開されていく。表現力に磨きがかかり、独特のリズム感でフロアを舞う。バランス難度、ローテーション難度も軸に乗り明確に実施されていた。怪我に悩まされる時期を乗り越えて、見事復帰した演技を魅せてくれた。D6.600 E7.400 得点14.000
<団体種目別>
●フープ5
優勝は国士舘大学。
今大会初のDスコア満点である10.000を叩き出した。5名の選手の息がピタリと合った演技と1つ1つの難度要素が明確に実施されていた。コラボレーションとコラボレーションリスクが次々と展開されるが、計算された演技構成は技の羅列ではなく音楽と動きの一致を感じた。D10.000 E6.750 得点16.750
 2位は駒場学園高等学校。
フープ5はインターハイ種目であり、高校生チームの完成度が高かった。
団体総合の演技よりも更に完成度が高い演技であった。1つ1つの難度要素が明確に評価できた。交換難度、コラボレーションリスクの受けにほぼ移動がなく大きなミスなくプログラム通りに演技を行う。音楽と動きの一致と大きさを感じる演技で会場が沸いた。D9.500 E7.100 得点16.600
 3位は常葉大学附属常葉高校/静岡RG。
会心の出来栄えで会場から大きな歓声があがった。試技順1番であったがとても落ち着いた様子でプログラム通りの演技を行う。随所にアクセントとなるリスキーなコラボレーションリスクを組み込み、交換難度もほぼ移動なく実施した。5名の選手の息が合った演技であった。D9.300 E6.400 得点15.700
●ロープ2&ボール3
 優勝は団体総合1位の日本女子体育大学。
演技冒頭のコラボレーションリスクを成功させ、次々とプログラム通りに演技を実施。選手5名の動きの同時性は群を抜いていた。無駄な移動がなく1つ1つの難度要素が明確に見えた。フープ5のミスを挽回し、最後まで集中力を切らすことなく会心の出来栄えで会場を沸かせた。D9.600 E7.050 得点16.650
 2位は国士舘大学。
演技序盤のコラボレーションリスクと交換が続くが、1つ1つを丁寧に実施。中盤のローテーション難度が少しばらつくが大きなミスなく演技を纏め上げた。ロープは形が一定でない手具であり、交換やコラボレーションの受けなどで実施減点なく行うためには熟練度が必要である。ロープが乱れる箇所が少なくロープ、ボール共に丁寧に手具の操作が行われていた。D8.900 E6.450 得点15.350
 3位は金蘭会高等学校/すみれRG。
今年のインターハイ優勝チームでフープ5の種目別では4位に入賞した。リスキーな投げ受けを交換難度とコラボレーションリスクに組み込み、息つく暇もないほど次々と見せ場が訪れる。演技後半の交換難度で1名の選手が移動するがキャッチする。交換は大きく移動してもキャッチすれば成立し、実施のみ減点となる。演技終末の複数投げコラボレーションリスクを成功させ、会場から大きな声援が沸いた。D8.700 E6.250 得点14.950
 3日間を通して健闘した全ての選手の皆さんの健闘を称えると共に、来年度に向けてさらにレベルアップした演技を期待したい。