新体操W杯サンクトペテルブルグ大会レポート1

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8月16~17日の2日間にわたり、新体操W杯サンクトペテルブルグ大会個人総合、団体総合が行われた。
■個人
個人総合には、キエフ世界選手権日本代表(8月28日~9月1日)、早川さくらと皆川夏穂が出場した。
1種目目のボールには、まず皆川が登場。難度には粘りが出てきたが、中盤のもぐり回転でのキャッチで落下。他は落ち着いて15.433。
早川もボールの種目から。落下しそうになる箇所を落ち着いて処理し、全体にうまくまとめた。皆川と同様、難度を最後まで粘る感じが出てきており、難度の後始末も非常に良くなっている。16.450と好スタートを切った。
2種目目はフープ。皆川は全体としては非常に良いが、ひねり回しで落下してしまう。15.666
早川のフープもリスクで落下してしまい、15.483。初日を終えて、早川が23位。皆川は30位につけた。
初日トップに立ったのは、Mamun Margarita(ロシア)。最初の種目、ボールで、アチチュードのローテーションから逆イリュージョンに入ったとき、足がぐらつき、ヒヤッとした。しかし、なんとか踏ん張り、ていねいな美しい演技で18.000。フープでは、痛めた左足にテーピングをしてきたが、大事には至っていないようだ。音楽のメリハリに合わせ、フープにもスピード感を持たせて、動き全体に強さが出てきた。18.333
初日2位はStaniouta Melitina(ベラルーシ)。ボールではラストの視野外、手以外、座での受けで落下したものの、大きさのある演技で17.616。フープでも伸びやかな演技を見せ、17.950。
それをわずか0.016差で追っているのが、韓国の、新体操界のキム・ヨナ、Son Yeon Jae。ボールもフープも、実施減点が少なく、難度の終末もすばらしい。ボール17.600、フープ17.950と安定した力を見せた。
ロシアのKudryavtseva Yanaは、得意のボールで落下ミスがあり、またフープでは巧みな手具操作を見せながら、ラストの転がしキャッチで場外。手具なしでポーズして、16.533。5位で折り返すこととなった。
そして本日(17日)後半種目が行われ、皆川はリボンから。この種目も、全体的にはとても落ち着いていながら、背中転がしで落下。目に見える大きな落下が各種目1回あり、良いところまで行きながら、もうひとつ得点を伸ばすことができない。15.750しかし、最終種目のクラブでは良く踏ん張り、落下ミスもなく、また難度も粘って、16.500という点数を得た。
早川のリボンは、少し前に伴奏音楽を変更。まだ音楽に合っているとは言い難いが、大きさはあった。リスクでスティックではなく、リボンの部分をキャッチするミスが出たが16.083。クラブは、教科書通りとでもいうような丁寧な演技で16.516。
二人とも順位を大幅に上げ、早川が16位、皆川が23位という結果だった。50人出場しての16位は大健闘であり、早川も皆川も難度の大きさが格段にレベルアップした。あとは動きの大きさやメリハリ、音楽に対する表現などが磨かれてくれば、トップ10入りも夢ではないかもしれない。まずはコンスタントに16点台後半を目標にいくことで、評価はもっと上がっていくことであろう。
個人総合優勝はMamun Margarita。回転しながらリボンを足で蹴る技で、うまく蹴れずにリボンが落下したが、カナエバを彷彿とさせる、しなやかな動きで18.083。クラブでは緩急の効いた演技で18.433という高得点をたたき出した。
2位にはそのままStaniouta Melitinaが入った。リスクが切れる箇所やアチチュードのローテーションでの跳びなど、わずかなミスはあったがエネルギーのある演技だった。
Kudryavtseva Yanaは、初日の5位から順位を上げ、銅メダルを獲得した。どの種目も、大技、小技と息を抜く場所がなく、誰もやっていないキャッチを行うYanaは、クラブでは18.466と、Mamunを上回る得点だった。
4位にはSon、5位にはブルガリアのMiteva Sylviyaが入った。二人とも4種目を通じて落下ミスがなく、安定感のある演技を見せた。6位のDurunda Marina(アゼルバイジャン)は、安定感もあるが、踊り心があり、華のある選手である。スターになる要素を十分に兼ね備えており、表彰台に昇る日も近いであろう。
今大会にはウクライナ勢、中国のDengが参加していないが、落下ミスがあれば、容赦なく減点される現ルールでは、誰が表彰台に乗れるか、本当にわからない。
ロシアの内容の深さや質の高さは群を抜いているが、それでも一つのミスが命取りになるわけで、キエフ世界選手権での表彰台争いも見物である。
■団体
団体総合は日本からフェアリージャパンPOLAが出場。クラブでは最初の交換が真上に上がり、走ってかろうじてキャッチした。直後の足投げ交換が定位置に戻れず、3mほどの距離になってしまったが、そこもどうにか乗り切った。しかし、ジャグリングの下をくぐるジャンプ前転キャッチで落下。中盤の4本投げが流れ、続くリフトの下をくぐる2回前転では、これもクラブが真上に上がり、人をよけながらキャッチするなど、リズムが狂ったままとなった。リスクでも落下し、これが場外。ミスが続いて14.550。初日は23チーム中、15位と苦しいスタートとなった。
初日1位はロシア。連係で落下し、場外となってしまったが、クラブが手の中にある時間がほとんどなく、多彩な操作を見せつけた。17.466。
2位はベラルーシ。キャッチの移動はあったものの落下ミスはなく17.416。0.05差でロシアを追う。
3位はブルガリア。こちらも落下ミスはなく17.116。4位はスペイン。交換で落下し、16.950。イタリアはリスクと交換で落下し、16.016で5位と出遅れた。
そして二日目はボール&リボンの種目。日本は、とにかく気持ちを切り替えて伸びやかに演技することを目標にしたが、その通り、前日とは打ってかわって安定した演技をした。一箇所、リボンを跳ね返すところで、プログラム通りにはいかずにもたついたが、今大会が代表初出場の国井が落ち着いて処理した。全体的にも落ち着いた演技だった。16.216。世界選手権までには落下ミスを何としても防ぐこと、難度、投げの精度を上げることなど、課題はつきないが、今回ミスが出たことを生かして、大会までの日々を貴重に使っていかなければならない。インナコーチも動きや内容に手を加えると言っており、最後の最後までよりよいものにする努力をしていく必要がある。結果は、前日の15位から順位を上げ9位に。ボール&リボンは6位で種目別決勝に残った。
団体総合を制したのはロシア。ボール&リボンでは落下ミスなし。どこがどうなっているのかわからないほどの複雑な連係をこなし、難度も大きさがあり18.200。ロシアは頭ふたつ、三つ抜けている印象である。
2位はベラルーシ。キャッチに移動があり、連係がやれない箇所などのミスで16.900。
3位にはスペインが入った。パンシェのローテーションで一人が崩れ、リスクでも落下。15.916で、ボール&リボンの種目別決勝には残れないという波乱。それでも前日の貯金で3位となった。
初日3位のブルガリアは、スタートの連係で場外。予備手具に差し替えて、あとはよく取り戻したが、15.266。総合4位となったが、ブルガリアもボール&リボン種目別決勝には出場できない。
5位からドイツ、ギリシャ、スイス、アゼルバイジャンと続くが、いずれもミスが少なかった国々である。
初日5位のイタリアは、とんでもないことになった。前半から中盤と、リスキーな技を次々と行っていたが、後半の連係で一人がキャッチにもたつき、場外に出そうになるボールを押さえ込んでいた。どうにか場外は免れたが、そこに次の連係のボールが跳んできた。そのボールはキャッチできずに場外へ。ボールが2個しかないことに気づいた二人が(3個必要)、同時に予備手具をつかみ、演技を始めようとして、今度はボールが4個あることに気づき、また同時にボールを外に出してしまった。そのため、一人がリボンを持ったまま、場外にボールを取りに行き、そんなこんなで後半は演技にならず、12.250。イタリアでもこうなってしまうところが、団体の難しいところ。上位国であればあるほど連係を密にしているので、一つ歯車が狂うとどうにもならなくなってしまう。イタリアは総合でなんと17位に沈んだ。
個人競技と同様、ひとつ落下ミスが出れば、2点ぐらいの点数を失う。そのことを肝に銘じて、しかし恐れることなく、堂々と演技してもらいたい。
明日の種目別決勝には、日本はボール&リボンのみ出場する。
日本のクラブ出場者
畠山愛理
サイード横田仁奈
松原梨恵
杉本早裕吏
熨斗谷さくら
ボール&リボン出場者
畠山愛理
サイード横田仁奈
松原梨恵
杉本早裕吏
国井麻緒