第49回世界体操レポート(男子予選)
すでにオリンピック団体出場権を得ている中国,ロシア,日本がミスを出しながらもトップ3になり,団体のメダルを争うことになった。以下,日本男子の予選について簡単にレポートする。
1種目めのあん馬。ポディウム練習で足首を痛めた谷川航選手が最初の演技者。怪我する前,もっとも好調だった選手がゆえに,心の影響を心配したが,大きなミスなく通して13.333を獲得。最初の演技者としての役割を果たした。萱選手,非常に落ちついた演技をまとめて14.633。谷川翔選手,ベルキでのゆがみ,ブスナリの流れのわずかな停滞など,緊張感の伝わるできばえだが落下せずにE難度下りを決めて14.633。彼の下りのひねり移動のリズムはアメリカの体操記者も非常にエレガントさを感じると評価。橋本選手,スピードを保ち,伸びのある演技でチーム最高の14.883を獲得。あん馬43.916。好スタートを切った。
2種目めのつり輪。萱選手,それぞれの力技を丁寧に収め,伸身新月面着地わずかに動き14.033。谷川翔選手,振り上がり倒立でわずかにゆがむ,新月面着地姿勢が低くなるが止めて13.633。谷川航選手,ほん転倒立でわずかにゆがむ,新月面着地,足の怪我の影響か後ろに大きくとぶ。13.966。神本選手,世界選手権デビューの演技,ほん転倒立でわずかにケーブルの揺れ,しかし伸身グチョギーからほん転中水平で動から静の表現をアピール,伸身新月面の着地動く,14.283。つり輪42.282。
3種目め跳馬。萱選手,ドリッグスの着地をほぼ止める。14.900。谷川翔選手,ロペスに挑戦するもしっかり高さと回転力を得ることができず横たわる転倒,ライン減点もあり12.466。ひねり不足の判定でドリッグスに判定されたことに対してインクワイヤリーを出すも認定されず。橋本選手,ポディウムでうまく合わせきれなかったロペスをまとめ14.766。神本選手,シューフェルト着地で動きライン減点もあり13.966。跳馬42.998。
4種目めの平行棒。萱選手,落ち着いた演技で前方かかえ込み2回宙ひねりの着地を1歩でまとめ14.800。谷川翔選手,モイで足をマットにする,終末技の着地姿勢が低くなるが止め14.633。谷川航選手,ヒーリー,棒下ひねりで少しゆがむ,着地で数歩後ずさり13.900。神本選手,リチャード倒立決めの表現ができずすぐに前振りツイスト,前方かかえ込み2回宙ひねりの着地大きく動くが持ちこたえ14.700。平行棒44.133。
5種目め鉄棒。萱選手,大きなミスなくまとめ14.066。橋本選手,臆することなくヤマワキ,カッシーナ,伸身トカチェフなどの手放し技を決め,ポディウム練習で止められなかった伸身月面の着地を止め14.366。谷川翔選手,カッシーナで落下,伸身月面着地を止めるも12.833。神本選手,アドラーひねり少し倒立を外す,カッシーナ,コールマン,伸身トカチェフを決める,アドラー1回ひねりで少しずれる,伸身新月面着地を止める14.033。鉄棒42.465。
最終種目ゆか。橋本選手,宙返りの着地を気持ちいいほど決めて14.433。萱選手,前方屈身2回宙で前に数歩動きライン減点,最後後方宙3回ひねり着地わずかに動く。13.933。谷川翔選手,全体的に宙返りの着地姿勢が低く,最後のタンブリングに入る前,タイムオーバーの合図に思わず掲示を振り返ったが,頭を整理する間もなく助走に移り,最後に後方伸身宙3回ひねりを行うが大きく後ろに動き転倒,タイム減点とライン減点があり12.566と得点を伸ばせず。神本選手,最後,後方宙3回ひねりの着地を止めて締めくくる。13.866。ゆか42.232。チーム得点合計258.026。この時点でロシアに次ぎ2位につけ,中国の登場する6班,ウクライナやイギリスなどの7班,そしてスイス,オランダの8班を待つことになった。
結局,中国もあん馬で2名落下,平行棒で優勝候補筆頭のZOU Jingyuanがバーの上に足をのせるミスを出すなど,決していい状況とは言えなかったが,最後の鉄棒で日本を上回り2位につけ,日本は3位,決勝で日本はあん馬スタートとなった。また,同じくあん馬から入るのは4位のウクライナとなった。
予選について総括すると,同一種目に大過失を集中させることなく演技を終えた点は評価できる。また,萱選手の習熟度を増した安定感,橋本選手のすがすがしいフレッシュ感は,絶対王者内村選手不在でも戦える日本の強さをアピールできたと思う。さらにある海外記者は「チームの息があっている。全員,同じ練習場で練習しているようだ」と言ってきた。日本人である私には思いつかなかったが,他国にはない日本の連帯感を感じ取っての感想だろう。
いずれにしても,団体決勝では一人のミスも許されない5-3-3形式(5名のエントリー選手の中から3名を選んで演技し,そのすべてがチーム得点となる形式)となる。谷川翔選手に大過失が集中してしまった点,谷川航選手のコンディションを2日後に合わせる点など,予選でわかった日本の課題をどのように克服していくか。団体決勝でその真価が問われる。
引き続き皆様の温かい応援をよろしくお願いします。