2018ヒューストン国際ジュニア大会報告
2018ヒューストン国際ジュニア大会(リッキーカップ)報告
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■派遣者
<コーチ>
梅本英貴(清風高等学校/U18強化本部員),吉田隼也(市立船橋高等学校),小林亮介(朝日生命)
<審判>
田沼寛文(日本体操協会審判部)
<トレーナー>
森岡望
<選手>
橘汐芽、上山廉太郎、安達太一、木下渚、末次耕太郎
■派遣国
アメリカ ヒューストン
■成果
<参加選手>日本4名 イギリス5名 ドイツ4名 カナダ5名 アメリカ 5名 オーストラリア 5名 フランス5名
14歳~17歳までのジュニア選手が対象で、33名の参加。団体総合、個人総合、種目別で競技が行われた。
<大会の概要、現地での生活について>
昨年に引き続き、アメリカ体操協会およびFIGの公認大会である国際ジュニアチームカップ(リッキーカップ)に参加した。第3回目の開催となる今大会は、日本,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,オーストラリア,カナダの7か国の参加となった。
大会会場のMerrell Center Arenaは、ホテルのから車で20分程度の場所で、アメリカのスポーツアリーナらしい雰囲気の良い会場であった。器具はAAI製の新品が使用された。練習会場は大会主催者である溝口氏が所有するFun Fitness Clubで行われた。今大会より練習会場での練習時間も各国3時間で3班に分けられていた。
ホテルはHilton Garden Inn Houstonという比較的新しい中規模ビジネスホテルを配宿された。近隣にはレストランやショッピングモールがあり過ごしやすい立地であったが、ホテル内には食事施設がなかったため(朝食はあり)、外で昼食と夕食をとることとなった。
また、今年は30年ぶりの大寒波の影響で到着日から3日間ほどは気温マイナス7℃、その後は20℃を超えるという気温差となり、体調管理に非常に気を使った。
尚、大会ルールは2017年からの新ルール(FIGユースルール 8技)が適用された。
□1/19 団体決勝 4-4-3制(各国の5番手の選手はチーム得点にはならないが演技可能で個人総合にも参加)
兼 個人総合 各国上位2 名が表彰対象
兼 種目別予選 各国上位2名までが決勝進出
□1/20 種目別決勝 各種目8名、各国上位2名
<事前練習、コンディションについて>
□1/16 17:00-18:00練習会場/調整練習
ヒューストン国際空港より大会関係者の送迎により練習会場に向かった。本来60分程度で到着するところ大寒波の影響によりハイウェイが凍結し地道で2時間半かかり練習会場に到着した。選手は長時間の移動や時差の影響もあり、大会に向けてストレッチ、基礎トレーニングを中心に、1時間程度の練習を実施した。
□1/17 12:00-15:00 練習会場/続行練習
この日はそれぞれの器具を確認しながら種目に入り、通し練習を行った。普段と違う器具での練習ということもあり、苦戦する種目もあったが各自のペースで課題の修正をしながら分習を行った。また、翌日の本会場練習に向けての課題をしっかり確認できた。
本来、12時よりこの会場でテクニカルミーティングが予定されていたが雪のため到着が遅れた国があり中止。
□1/18 14:00-17:00 本会場練習
13:00に体育館に到着したが、会場内の気温が低く肌寒い状態での練習となった。
内容はフリー練習であった。器具はすべて新品のものが用意されており、全ての器具が非常に滑る状態であった。日本選手はここから30分ほど鉄棒を磨いたり、各種目にタンマをぬったりと準備に時間をとられた。
各選手ともに昨日AAI製の器具で練習しているということもあり、いい状態で練習を終えれた。他国で目立ったのはやはりイギリスであった。少し荒々しい体操であったがチーム力では今大会日本の脅威になると感じた。
□1/19 15:00-17:45 練習 18:00-20:30競技
競技前の練習は15:30~17:45までの2時間15分のフリー練習で、平行棒のみネクスト種目からの15分ローテーションであった。17時45分よりオープニングセレモニー、18:00より競技が行われた。
□1/20 15:00-17:45 練習 18:00-21:00競技(種目別決勝)
昨日は2審制であったが、種目別は4審制で行われた。前半3種目→後半3種目で行われたが、終了時間は21時を超えるスケジュールとなった。
尚、アメリカのカテゴリー10が国際試合と同時に試合を行う珍しい試合形式であった。
<競技会に関する報告>
【1日目:団体決勝・個人総合・種目別予選】
■ローテ1 跳馬
安達 アカピアン 小さく後ろに一歩。
上山 助走が合わず、少し危険な跳躍になった。
木下 ドリックス 小さく後ろに一歩。
橘 シューフェルト 前に一歩。
アカピアン 着地小さく一歩。
末次 伸身カサマツ 後ろに二歩。
少し危ない跳躍もあったが、スタート種目としてチームでは残った選手がしっかりと決め、まずまずの出来。Eスコアは国内と比較すると同じような採点であったと感じた。
■ローテ2 平行棒
上山 大きい失敗なく着地をまとめる。前半詰まった場面もあったが、しっかりと堪えた。
安達 ホンマで腰を曲げてしまう場面もあったが、大過失なくまとめる。着地後ろに一歩。
木下 棒下ハーフで失敗があったがそこから立て直し着地小さく一歩。
橘 ミスなくしっかりとまとめる。着地後ろに一歩。
末次 丁寧な演技で着地までしっかりまとめる。
平行棒は全体的に大きなミスなくまとまった演技で、流れを作ることができた。
■ローテ3 鉄棒
安達 コスミック、伸トカ、トカチェフをしっかり決め、着地までまとめる。
橘 コバチで落下があったが、立て直し着地までしっかり決める。
木下 カッシーナ、コールマンを決め、着地1歩。
末次 コバチをしっかり決め、演技の流れは良かったが、着地で手をついてしまう。
上山 トカチェフで落下。その後をしっかりまとめる。
鉄棒ではいくつかミスが出てベスト3を揃えれなかった。
■ローテ4 ゆか
木下 後方2回半ひねり?ハーフでラインオーバーがあったが、全体的に良い実施であった。
橘 前方抱え込みダブルハーフ、抱え込みルドルフの着地を決め、最後までしっかりまとめる。
上山 高い姿勢での着地で大きなミスなくしっかりまとめ高得点をマーク。
安達 丁寧な演技で着地もしっかりまとめ、終末技後方3回ひねりの着地を止める。
末次 全体的に着地が大きく乱れ、ラインオーバーもあったが丁寧に最後まで実施。
ゆかでは、チームとしては着地まで意識した良い実施で高得点をマークでき、良い流れを作れた。安達のDスコアが予定より0,1低く表示され審判に質問し、認められた。
■ローテ5 あん馬
上山 Dフロップと下り技で2回の落下。
橘 ロスで詰まる場面もあったが、こらえてしっかりまとめる。
安達 丁寧な旋回で最後まで安定した演技を見せた。
末次 終末技はC難度になったが、丁寧な演技で最後までしっかりまとめる。
木下 丁寧で、一つ一つ確実に実施を行った演技でまとめる。
ミスの出やすいあん馬であるが、チーム一丸となりまとまった良い演技を実施したように感じた。ここをベスト3を揃え乗り切れ、優勝にだいぶ近づいた。
■ローテ6 つり輪
安達 倒立で若干乱れがあったが、大きなミスなく着地までしっかりまとめる。
橘 中水平が若干高かった。着地後ろ一歩。
木下 力技、倒立等のキメをしっかり行い丁寧にまとめる。
上山 力技や倒立の静止時間をしっかり意識し最後まで丁寧な演技を実施。
末次 丁寧な演技で着地までしっかりまとめる。着地後ろ一歩。
つり輪は力技の角度、倒立姿勢がしっかり見られていたように感じる。
大会規定により表彰対象は各国上位2名となり、個人総合では1位(安達),2位(橘)と日本選手がワンツーフィニッシュをきめた。
昨年、優勝を果たした日本チームだが、今大会もミスはあったもののチームとしての流れを崩さずに6種目を終え団体2連覇を成し遂げた。今大会の1番の目標を、団体優勝と強く意識していた選手たちであったが、プレッシャーをはねのけ素晴らしいチーム戦を行ってくれた。
【2日目:種目別決勝】
●ゆか
上山 全体的に着地をしっかりまとめ、丁寧な演技を行った。
安達 2箇所でラインオーバーがあったが、着地をしっかり決め、まとまった演技。
ゆかでは安達が優勝、上山が2位という結果で終わった。
●あん馬
橘 前半、Dコンバインで旋回が詰まってしまい落下。その後はしっかりまとめ実施。
安達 全体的にスピードがあり、足のスリも少なく良い実施であった。
あん馬は安達がゆかに続き優勝。失敗する選手が多くいる中、自信を持った演技を行っていた。
●つり輪
上山 予選同様、力技、倒立をしっかり決め丁寧な演技。着地は後ろ一歩。
安達 一つ一つのキメを丁寧に行い安定した演技を実施。着地は後ろ一歩。
つり輪は上山が2位、安達は安定した演技を実施したが、4位という結果に終わった。イギリスの選手が倒立のキメや着地も完璧に決めて優勝した。
●跳馬
橘 1本目 シューフェルト 着地前に一歩。 ラインオーバー0,1
2本目 アカピアン 着地後ろに小さく一歩。着地姿勢の高い良い跳躍であった。
跳馬の種目別では橘のみの出場であった。イギリスの選手はロペスを実施し素晴らしい跳躍であったが0,025の僅差で橘が優勝した。
●平行棒
橘 前半の動きは良く良い実施であったが、バブサーで手が滑ってしまいティッペルトになってしまい繰り返しに。その後倒立で少し乱れたが着地まで決める。
安達 一つ一つ丁寧にしっかり決め、大きなミスのない演技。着地後ろに一歩。
平行棒では予選1位の橘にミスが出てしまった。結果、安達が優勝。
●鉄棒
木下 カッシーナでバーに近づいたがその後け上がりで冷静に立て直し、コールマンも決め着地は後ろ一歩。
安達 予選同様、コスミック、伸トカ、トカチェフを決め最後まで丁寧な演技を実施。着地は小さく前に一歩。
今大会日本は種目別で安達がゆか、あん馬、平行棒、鉄棒で金メダル4個、橘が跳馬の金メダルを獲得し6種目中5種目の金メダルを獲得した。つり輪では惜しくも上山が銀メダルに終わったが日本の強さをアピールできたと感じた。
■その他、反省、要望
今大会、一番の目標としていた団体2連覇は達成でき、個人総合、種目別5種目制覇と結果としては非常に満足できるものであった。しかしながら、海外遠征初出場の選手も多くミスも目立った。器具への対応ができていたものの試合でミスが出てしまった事。また力技や技一つ一つのダイナミックさなど観客を魅了するような演技についてはまだまだ学ぶべきところが多かった事など取り組むべき課題も見つかった。
今回の会場となっていたKATYという町は、昨年のハリケーンにより大洪水の被害を受けた地域であった。主催者の話によると3週間前まで体育館が復旧できておらず大会の開催自体が危ぶまれていた。このような状況の中、主催者の溝口氏をはじめ大会関係者の多大なご尽力により何とか間に合わせた。しかし大会受け入れ日になって、30年ぶりの大寒波で選手団の到着が遅れたりし本当に大変な運営になったと想像できる。その中、細部まで気の行き届いた運営や受け入れ態勢を整え、大会は成功裏に終わった。本当に大会関係者の熱意に頭の下がる思いであった。
最後に本遠征に携わっていただいた主催者の溝口氏をはじめ、大会関係者および日本体操協会関係各位に心より感謝申し上げ報告とします。