2016ヒューストン国際ジュニア大会報告
2016ヒューストン国際ジュニア大会(リッキーカップ)報告 大会情報・結果へ
■派遣者
<監督>藤原佳市
<コーチ>山崎隆之、大竹秀一、冨岡知之、田野辺満
<トレーナー>小林直行
<選手>前田航輝、谷川翔、鈴木茂斗、石澤大翔、岩川秀磨
■派遣国
アメリカ ヒューストン
■成果
<参加選手>日本5名 イギリス5名 コロンビア4名 カナダ5名 アメリカ10名
14歳~17歳までのジュニア選手が対象で、29名の参加(アメリカは2チーム)。団体総合、個人総合、種目別で競技が行われた
<大会の概要、現地での生活について>
アメリカ体操協会およびFIGの公認大会として国際ジュニアチームカップ(リッキーカップ)が初開催となった。日本、アメリカ、イギリス、コロンビア、カナダの5か国が参加となった。有力な選手としては、2014ユース五輪チャンピオンのGIARNNI(イギリス)、全米ジュニアチャンピオンのDAVISおよび同2位のMATTHEWをはじめ、各国のジュニアナショナル選手が参加した。
大会会場のMerrell Center Areanaは、ホテルのから車で10分程度の場所で、アメリカのスポーツアリーナらしい雰囲気の良い会場であった。器具はAAI製の新品が使用された。練習会場は大会主催者である溝口氏が所有するFun Fitness Clubで行われた。1年半前に新設された体操専用体育館であり、ピット設備、タントラ、各種目2セット以上の器具など設備が充実していて十分な練習が可能であった。
ホテルのCoutyard Marrottは比較的新しいい中規模ビジネスホテルで、アメリカ以外の4か国が配宿された。近隣にはレストランや大型ショッピングモールがあり、過ごしやすい立地であったが、ホテル内には食事施設がなかったため、主催者に依頼をして特別に準備して頂いた。食事時間やメニューなど日本のリクエストに快く対応して頂くなど、主催者側によるおもてなしを随所で感じることができた。
期間中は、晴天の日が多く、朝晩は多少冷え込むものの日中には15度以上の日もあり過ごしやすい気候であった。競技はFIGユースルールが適用された。
1/15 団体決勝 5-4-3制(5番手はオープン参加で演技可能)個人総合 各国上位2名が表彰対象
1/16 種目別決勝 各種目8名、各国上位2名
<事前練習、コンディションについて>
*1/11 16:00-18:00練習会場/調整練習
ヒューストン国際空港より主催者の送迎で40~50分程度でホテルに到着した。選手は長時間の移動や時差の影響で疲れた様子であったが、大会に向けたコンディション面を考え、ストレッチ、トレーニング、器具合わせを中心に2時間程度の練習を実施した。
*1/12 10:00-14:00 練習会場/続行練習
各自での1本通しを実施した。時差や器具の影響も見せずに、目的を持った練習を冷静に行うことができたため、試合に向けて第一段階をクリアできたと感じた。
*1/13 10:00-14:00 練習会場/続行練習
平行棒から練習に入り、15分フリーUP→50秒UP→試合の試技順で1本通しを実施した。幅合わせ、タンマのセットなどコーチを含めて試合を想定した練習を行った。概ね良い通しが出来ていた。他の種目は各自のペースで続行練習を中心に行った。海外の選手も全員練習に参加していたため、国際大会ならではの緊張感のある雰囲気となった。また、選手たちは海外の選手と積極的にコミュニケーションを図っていた。
*1/14 14:00-17:00 本会場練習
13:30分に体育館に到着したが、会場内の気温が低く肌寒い状態での練習となった。
平行棒のみ15分ローテーションで他はフリー練習であった。新しい器具に慣れない面も見られたが、じっくりと練習をしながら器具に対応させていた。
イギリスのGIARNNIは、ゆかのリジョンソンや跳馬のロペスを決めるなど会場の注目を浴びていたほか、アメリカの各選手も各種目で大技に挑戦していた。コロンビアの選手は全体的に仕上がっていない面も多いが、筋力や瞬発力など潜在能力が高く伸びしろのある選手が多かった。カナダの選手はあん馬、つり輪においてレベルの高い演技を実施していた。
*1/15 10:30-11:30 練習会場 16:45-18:45 練習 19:00-21:10 競技
午前中に練習会場でストレッチ、トレーニング、基本練習を行い夕方の試合の準備を行った。競技前の練習は、16:45~18:45までの2時間のフリー練習で平行棒のみ開始種目から15分ローテーションであった。18時45分よりオープニングセレモニー、19:00より競技が行われた。
*1/16 10:30-11:30(調整練習) 19:00- 23:00競技(種目別決勝)
昨日は2審制であったが、種目別は4審制で行われた。前半3種目→表彰式→後半3種目で行われたが、終了時間は23時を超える厳しいスケジュールとなった。
<競技会に関する報告>
【1日目:団体決勝・個人総合・種目別予選】
■ローテ1 鉄棒
岩川 アドラ1/2 トカチェフ落下 ホップ1/2 アドラ 大逆手エンド 伸ルドルフ 4.5-7.95-12.45
前田 アドラ1/2 ホップ コスミッコB ヒーリ-C 大逆手エンド ホップ 伸サルト 4.8-9.4-14.2
鈴木 ヤマワキ アドラ1/2 伸トカチェフ ホップ シート大逆手 伸ルドルフ 5.3-9.1-14.4
谷川 コール落下 シートD ヤマワキ アドラ 大逆手エンド ホップ 伸ルドルフ 5.1-8.3-13.4
石澤 ヤマワキ ヒーリC アドラ シート シート1/2 伸サルト 4.7-9.25-13.95
トップの岩川(中2)が緊張からか惜しくも落下。谷川はコールマンを初めて実施したがギリギリで手が入らず落下し悔しいスタートになった。Eスコアは全体的に甘かった。イギリスDAVISがゆかでリジョンソンを実施するが両手をついてしまう(D6.0)
■ローテ2 ゆか
岩川 ルドルフ手つき 前1/1-前3/2 後2/1 側5/4 後3/2-前2/1 後3/1 5.3-7.05-12.35
石澤 前1/1-前2/1 後3/2-前3/2 後2/1 側5/4 マンナ-力倒立 後5/2 5.3-8.15-13.35(ライン0.1)
鈴木 前2/1-前1/2 後5/2-前1/1 側5/4 脚上脚 後3/1 5.2-8.7-13.9
谷川 前1/1-前5/2 後3/2-前2/1 側5/4 ゴゴラーゼ 後5/2-前1/2 後3/1 5.7-8.35-14.05
着地に対する減点が大きい印象であった。岩川は練習では常に成功していたルドルフで両手をゆかに付いてしまう。鈴木はまとまった着地。谷川は前方2回ひねりで回転不足になるが踏ん張る。イギリスがあん馬でDスコア5.8以上を2名が成功させて高得点を出した。
■ローテ3 あん馬
石澤 セア倒立 Eフロ Dコンバ 開シュピ1/1 C前 D後 E倒立下り 5.6-8.85-14.45
前田 ブスナリ セア倒立 Eフロ C前 D後 C倒立下 5.4-8.65-14.05
鈴木 セア倒立 Eフロ Dコンバ ロス D前 D後 C倒立下 5.5-8.9-14.40
谷川 セア倒立 Dフロ ブスナリ B後 D前 D後 D倒立下 5.6-8.9-14.5
岩川 セア B後 C前 Bシュテ落下 フクガ C倒立下 4.0-7.35-11.35
2種目の悪い流れをトップの石澤(中3)が高得点を出してチームに勢いをつける。前田と谷川がG難度のブスナリを成功。鈴木も完璧な演技で高いチーム得点を稼ぐ。
■ローテ4 つり輪
石澤 振上水平C 後方倒立 前方倒立 ジョナサン ヤマワキ 力倒立 サルト 4.8-8.9-13.7
鈴木 振上水平C 後方倒立 ジョナサン ヤマワキ 力倒立 サルト 4.6-8.65-13.25
前田 振上水平C 後方倒立 前方倒立 ジョナサン ヤマワキ ホンマ十字 サルト 5.0-8.05-13.05
谷川 け中水平 ジョナサン ヤマワキ 振上水平C 後方倒立 前方倒立 伸サルト 5.1-7.85-13.8
岩川 デルチェフB 振開脚前挙 力倒立 前車輪 ヤマワキ サルト 3,8-7.85-11.65
アメリカ、イギリスはつり輪でEスコア9点以上を連発していたが、日本は静止技の秒数や手首の落としで差がついたのか得点が伸びなかった。イギリスは跳馬で2名がドリックスを完ぺきに決めて日本を逆転した。
■ローテ5 跳馬
石澤 伸身カサマツ 前に片足1歩 4.4-9.15-13.55
岩川 ユルチェンコ2回ひねり 僅かに両足はねる 5.2-9.5-14.7
鈴木 アカピアン 後ろ1歩 5.2-9.55-14.75
谷川 アカピアン 小さく両足1歩 5.2-9.55-14.75
跳馬は全員が素晴らしい実施を行い高いEスコアをマークした。イギリスのJoe Fraser 選手が平行棒でシャルロ,棒下1/2,棒下,車輪単棒などを決めて14.95をマーク。5種目を終えて、イギリスに-0.75、アメリカに+4.85の点差であった。最終は日本が平行棒、イギリスは鉄棒。
■ローテ6 平行棒
岩川 バブサー チッペ 棒下倒立 車輪 ツイスト ダブル 4.9-8.6-13.5
鈴木 後振倒立 ヒーリー 棒下倒立 車輪 ツイスト ディアミ 屈ダブル 4.9-8.65-13.55
前田 アーム開脚倒立 棒下倒立 ディアミ 車輪 ツイスト ダブル 5.0-9.25-14.25
谷川 ホンマ ヒーリー 棒下倒立 車輪 モイ バブサー チッペ 屈ダブル 5.6-9.25
石澤 閉エンドーC 後振倒立 モイ チッペ ツイスト ダブル
鉄棒でイギリスが次々と着地を止めて14点台をマークしていた。日本も3人目までミスなく演技を行い、優勝の行方は両国のエース対決となった。4番手のイギリス選手が先にコールマン、コバチ、着地をぴたりと止めて演技を終えた。谷川選手はかなり高い点数が求められる場面であったが、バブサーやチッペルトなど完ぺきな演技で14.85をマーク。しかし、0.1及ばず悔しい団体銀メダルとなった。
0.1の大切さを教えられた1日目の結果であったが、選手は素晴らしいチーム戦を行ってくれた。また、ライバル国が16-17歳のチーム構成のなか、中学生2名を含めた若いTEAM JAPANには大変良い経験であったと考えている。明日の種目別では、多くのメダルを期待したい。
【2日目:種目別決勝】
●ゆか
1 鈴木 JPN 前2/1-前1/2,後5/2-前1/2,側5/4,後2/1,脚上挙,後3/1 5.2-8.9-14.0 LINE-0.1
4 谷川 JPN 前1/1-前5/2,後3/2-前3/2,側5/4,ゴゴラ,後5/2-前1/2,後3/1 5.5-9.3-14.8②
6 Girmi GBR リジョンソン,前5/2,後5/2-前1/1,側5/4,前2/1-前1/2,後3/1 6.0-9.25-15.25①
谷川は着地を意識した良い実勢であったが、イギリスのGIRMIがリジョンソンを着地1歩でまとめ高いDスコアで優勝。鈴木は1コース目のラインオーバーが悔やまれた。
●あん馬
3 Joe GBR セア倒立 Dフロ Dコンバ シュピ1/1 D前 D後 プロペラ E倒立下 5.8-8.3-14.1②
4 谷川 JPN セア倒立 Dフロ ブスナリ B後 D前 D後 Bシュテ E倒立下 5.7-9.15-14.85①
6 石澤 JPN セア倒立 Eフロ Dコンバ落下 開シュピ1/1 C前 D後 C倒立下 5.1-7.55-12.65
7 Joshua GBR セア倒立 Eフロ Dコンバ シュピ1/1 ウ-ゴニ D前 D後 E倒下 6.0-8.55-14.55②
谷川は予選より素晴らしい実施で会場を沸かせる。イギリスのJoshuaは6.0のDスコアを通すが、足の開きや倒立下りで力を使ったため谷川には及ばなかった。イギリスの2選手は、旋回の支持力が強く将来性のある演技内容であった。カナダの選手は落下してしまったが質の高い演技であった。
●つり輪
3 William CAN 振上水平C 後車輪 前車輪 ジョナサン ヤマワキ サルト 4.9.25-14.05
4 Cameron USA 振上水平C ジョナサン ヤマワキ 振開脚B 力倒立 サルト1/2 4.9-9.3-14.2③
6 Joe GBR 振上水平C 力倒立 ジョナサン ヤマワキ 前車輪 後車輪 ルドルフ 5.0-9.3-14.3①
7 谷川 JPN け中水平 ジョナサン ヤマワキ 振上水平C 後倒立 前倒立 伸サルト 5.1-9.2-14.3①
谷川は予選より静止時間や技のキメも良く着地もピタリと止めたが、イギリスのJoeと同点となりタイブレークで2位となった。海外の選手はDスコアが高くないが、倒立のベルトタッチや手首の落とし、静止技の時間など実施面を正確に行っているのが印象的であった。
●跳馬
1 Matthew USA ①ドリックス 横1歩 5.6-9.20-14.70 LINE-0.1 ②伸クエルボ 後1歩 4.4-9.45-13.85 TOTAL 14.275②
2 Dilan COL ①ドリックス 後3歩 5.6-8.65-14.25 ②ローユン前転倒5.2-8.25-13.45 TOTAL 13.825
3 谷川 JPN ①アカピアン 後小さく1歩 5.2-9.25-14.45 ② 前屈1/2後小さく1歩 3.6-9.40-13.00 TOTAL 13.725
4 Giami GBR ①ドリックス 前1歩 5.6-9.55-15.15 ②ユル2 止める 5.2-9.55-14.75 TOTAL 14.95①
5 Cameron USA ①ドリックス 尻もち 5.6-8.15-13.45 LINE-0.1 ②伸クエルボ 後1歩 4.4-9.2-13.60 TOTAL 13.525
6 David COL ①アカピアン 後1歩 5.2-9.2-14.4 ②伸クエルボ 後1歩 4.4-9.2-13.60 TOTAL 14.00③
●平行棒
1 前田 JPN アーム開倒立B 棒下倒立 ディアミ 車輪 モイ チッペ ツイスト ダブル 5.0-9.1-14.1
2 谷川 JPN ホンマ ヒーリー 棒下倒立 車輪 モイ バブサー チッペ 屈ダブル 5.6-9.8.6-14.2③
3 Giami GBR 前振り 棒下倒立 車輪 チッペ モイ ツイスト 屈ダブル 5.1-9.2-14.3②
4 Samuel CAN 棒下倒立 車輪ディアミ 車輪 バブサー チッペ ツイスト 屈ダブル 5.4-8.2-13.6
5 Dilan COL シャルロ 棒下1/2 棒下倒立 バブサー落下 屈ダブル 5.5-7.35-12.85
6 Joe GBR ヒーリー 棒下1/2 シャルロ横出 棒下倒立 車輪単棒倒立 屈ダブル 5.4-8.2-13.6
7 Cameron USA ホンマ 棒下倒立 車輪 ディアミ モイ バブサー チッペ 屈ダブル 5.5-9.05-14.55①
前田は堅実な実施であったが惜しくもメダルには届かなかった。谷川はチッペルトで肘の緩みがあった以外は完璧だった。イギリスのJoe、コロンビアのDilanの棒下技の技術が素晴らしく、身体能力の高さを感じた。カナダの選手も実施の質がすばらしく、平行棒は全員が高いレベルであった。
●鉄棒
3 Hamish GBR ヤマワキ ホップ 伸トカ トカチェフ アドラ1/2 シート 伸サルト 5.0-8.75-13.75①
5 鈴木 JPN ヤマワキ エンド アドラ1/2流れる 伸トカ ホップ シート1/2 伸サルト 5.3-7.85-13.15
6 Shane USA ヤマワキ エンド コバチ ホップ アドラ 大逆手エンド 伸サルト 4.9-8.5-13.40
7 前田 JPN アドラ1/2 ホップ1/2 コシミックB ヒーリC 大逆手エンド 伸ダブル 4.8-8.45-13.25
8 Dilan COL ヤマワキ エンド アドラ1/2 ホップ ホップ1/2 エンド1/2 伸サルト 4.9-8.55-13.45②
鉄棒は、Dスコアの高い選手が予選でミスをして決勝に残らなかったため、全体的に演技レベルが下がった。予選と採点傾向が変わったのか、ひねり技の減点が厳しく日本選手はEスコアーが伸びなかった。大会全体を見て、他国も含め鉄棒のレベルが低いと感じたため、日本のジュニア強化としては今後最も強化すべき種目であると思う。
■その他、反省、要望
初開催であったため、現地での生活や大会運営に関する情報が少なく心配な面もあったが、主催者の熱心な運営やおもてなしのお陰で素晴らしい大会となった。海外の参加者との交流や情報交換も積極的に行われたほか、アメリカの強化システムや体操クラブ運営の現状などを視察することもできた。次年度は、今回の参加国に加えてブラジル、中国、ウクライナ、フランス、ロシアなどの強豪国に参加の意向があると伺っているため、さらにハイレベルな大会となるであろう。今回は僅かに団体2位となったが、次年度も参加できれば多くの金メダルが獲得できるよう精進し、東京オリンピックに向けたジュニア強化を進めて行きたい。