2016フューチャーカップ報告

報告者:

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<派遣者>
■監督:小倉雅昭
■コーチ:笠松昭宏,大門裕,谷田治樹
■選手:近藤衛,日高大輝,川上翔平,谷田雅治
役員・強化スタッフ(監督・コーチ)等4名、選手4名、合計8名
<派遣先>オーストリア、リンツ                                  
<成果>
【参加選手】17か国29チーム117名
(GroupⅠ:25名 GroupⅡ:40名 GroupⅢ:52名)
日本、ポーランド、ハンガリー、ポルトガル、スコットランド、スイス、オーストラリア、オランダ、ドイツ、イタリア、チェコスロバキア、デンマーク、カナダ、フィンランド、フランス、スウェーデン、オーストリア
【団体総合】日本2位
【個人総合】
GroupⅠ(1998-1999生)
 優勝 近藤衛 (中3)81.500,2位 日高大輝(中2)80.600
GroupⅡ(2000-2001生) 
 9位 川上翔平(中1)75.100
GroupⅢ(2002生~ )
 2位 谷田雅治(小6)76.950
【競技会の概要】
 競技規則:Junior Code Of Point 2013を適用
 使用器具:SPIETH製の器具を使用(跳馬はGroupⅢのみ125cm)
      平行棒についても着地マットの使用が可能
 競技方法:団体総合(4-4-3制)どのグループにエントリーしてもよい。
      エントリーグループの最終決定及びオーダーは、前日の監督会議後に提出した。
       競技会は2班に分かれており、各種目2チームずつ編成された。日本は2班休憩スタート。オーストリアと同組で日本が全種目前半に演技をした。
【現地でのトレーニング、コンディショニング】
<11/22(火)>事前練習
 今大会に出場する全員が、初めての海外での試合ということもあり、事前練習を行った。会場は清風高校体育館をお借りした。11月に完成したばかりの新しい体育館であり、充実した環境でトレーニングできた。各自でウォーミングアップを行い、種目練習を行った。全員が続行練習や技の確認を行い、約4時間の練習を終えた。その後、出発する関西国際空港近くのホテルへ移動し宿泊した。
<11/23(水)>移動
 出発前日の夜遅くに予定していたフライト便がストライキのために変更になったことを聞いた。乗り継ぎが増えて長時間の移動になることが予想された。北京、コペンハーゲン、ウィーンで乗り継ぎ、リンツに到着したころには現地時間の0:00を過ぎており、合計22時間以上の長時間の移動で選手も疲労した様子であった。更に追い打ちをかけるように、全員の荷物が届かないという事態に陥ってしまった。選手はユニフォームやプロテクターなどは手荷物に入れていたため、最悪の事態は免れたが、海外での移動の際の注意点を改めて学ぶことができた。
<11/24(木)>練習会場練習
 午前中のうちに、しばらく荷物が届かないことを想定し、現地で当面必要な衣服や日用品を調達した。午後は、今年新しく完成したTGW体操クラブの体育館にてトレーニングを行った。前日の移動の疲れもあり、各自体調を整えるよう積極的に動けていた。競技会で使用する器具もセットされており、十分な調整ができた。選手は、動き出すと次第に体の動きも良くなり、調整力の高さを感じることができた。
<11/25(金)>競技会場練習
 この日は、午後から競技会場で練習を行った。各自、器具への対応をしながら、積極的に続行練習や確認練習ができた。時間が経つにつれて多くの参加選手が練習を始め、一時は各種目15名を超えるような長蛇の列ができる状態であった。日本国内と違い、並んでいても順番を守らない選手もいて、選手は海外独特の雰囲気を感じながら練習に取り組んだ。
【競技会の報告】
<11/26(土)>
 13:15-14:45競技前練習(フリー。跳馬のみ高さ調整のため時間配分あり。)
 14:50-15:00オープニングセレモニー
 15:00-競技開始(2回の休憩を含め8ローテー)
 ※前後半に分かれて演技し、日本チームは全て前半のグループであった。
◆第1種目:ゆか
 最初の演技者の谷田選手が最終タンブリングで惜しくも転倒。それまではほぼ完璧な実施だっただけに悔やまれる。その後、川上選手、日高選手、近藤選手の順で演技を行い、各選手ともミスを取り返そうと何とかこらえた演技で、チームとしての失敗を最小限に抑えることができた。
◆第2種目:あん馬
 最初の演技者の谷田選手は、今度はゆかの失敗を取り返すようなスピーディーな旋回で高いEスコアを獲得した。川上選手も安定した転向技を見せ、日高選手は腰の伸びた質の高い旋回で通しきることができた。最終演技者の近藤選手は、序盤の転向技で多少力は使ったが、抜群の安定力で通し、団体戦として良い流れをつかむことができた。
◆第3種目:つり輪
 競技会全体を見ても、Eスコアがシビアな種目であった。特に力静止技や倒立における静止時間を重点的に見ている感じがした。日本チームの選手も予定していた構成をそつなくこなしたが、全体的に秒数減点があったように思われ、Eスコアを伸ばすことができなかった。
◆第4種目:跳馬
 各選手、ロイター板の弾み方や跳馬の感触が違うため、調整に手こずっていた種目であった。トップバッターの谷田選手は、伸身カサマツを実施したが、空中局面での腰曲がりを屈身姿勢として見られ、Dスコアを下げる結果となってしまった。2番手の川上選手は伸身ツカハラにチャレンジし成功。日高選手は腰の伸びた回転力のある伸身カサマツを成功。近藤選手は非常に高さのあるアカピアンを成功、着地が決まったように思われたがバランスを少し崩し、惜しい跳躍であった。
◆第5種目:平行棒
 谷田選手はキレのある演技で一つ一つの技を丁寧にこなし、着地も見事まとめEスコア9.5という高得点を出す。川上選手は、演技中盤のツイスト~ディアミドフを連続する際にバランスを崩し落下。3番手の日高選手は、川上選手のミスを払拭するような会心の演技を見せる。伸びのある車輪や高さのあるバブサーで会場の視線を集めていた。近藤選手は、大きさのある棒下倒立から安定した流れを見せ、終末の屈身ダブルもほぼ止めて、Eスコアを9点台に乗せた。
◆第6種目:鉄棒
 谷田選手、日高選手、近藤選手は予定していた演技を行い、支持回転系の倒立のおさめや姿勢の乱れの少ない実施でEスコアを8点台後半に乗せた。川上選手は得意種目であり、持ち味のエンドー1回ひねり大逆手持ちで倒立にはめることができ、会場からどよめきを起こした。各国の選手コーチたちが注目しており、Eスコア9.6という素晴らしい得点を出すことができた。
【成果と課題】
 今大会は、例年に比べると参加チーム・人数が多数であり、更に高いDスコアを持っている選手が参加していた。団体戦としてどのカテゴリーからエントリーしてもよいという競技方法であったため、団体戦上位チームの多くは年齢の高いカテゴリーにエントリーした選手たちで構成していた。日本チームは実際の年齢カテゴリーより上のグループにエントリーし、国際経験を積むことをねらいとした。そのような中で、日本チームは目標としていた団体優勝をつかむことができなかったが、全演技中大過失が2つという安定した実施をし、上位争いができたことは、今後の国際経験へとつながることであろうと考える。また、日本選手の美しい倒立やゆかのタンブリングでの正確なジャンプ姿勢など各国のコーチからも讃えられるものであった。しかしながら、つり輪における力静止技のアピールの仕方や跳馬の助走のスピード、高さのある跳躍などヨーロッパのジュニア選手から学ぶことも多く、今後世界と戦う選手たちにとっては身に付けなければならない点であった。
 また、急なフライト変更や長時間の移動、荷物が届かなくなるといった海外特有のトラブルにも動じることもなく、競技会を迎えることができたことは何よりの経験であったのではないかと考える。このように若い世代の選手が海外での経験を積むことで、将来の体操ニッポンの底上げにつながることと確信している。
 最後に本遠征にあたり、日本体操協会をはじめ、日本スポーツ振興センター、JOCといった関係者の皆様に心より感謝を申し上げたい。