第46回世界体操競技選手権レポート3
現地10月21日、男子ポディウム練習(本会場練習)が行われた.
<1班>
1班には,開催国イギリスチームとブラジルチームが登場した.前回オリンピックの開催国と次回オリンピック開催国が揃った格好である.ロンドンオリンピックで銅メダルを獲得し,近年の競技力向上を証明したイギリスチームは,今大会も上位争いに加わることが期待される練習を披露した.個人総合でも上位入賞が期待されるWHITLOCK選手を筆頭に,ロンドンオリンピックあん馬銀メダリストであるSMITH選手等,全日程を通してメダル獲得が期待されるメンバー構成である.WHITLOCK選手は,跳馬にてシライ/キムヒフン(ユルチェンコ3回ひねり)に挑戦し,さらなるDスコアの向上を図っている.
他方,ブラジルチームもロンドンオリンピックつり輪金メダリストのZANETTI選手,前回世界選手権ゆかにおいて銅メダルを獲得したHYPOLITO選手がチームをけん引し,来年のリオオリンピックの団体出場権獲得を何とか達成したいところだ.ただ残念なことに、チームのポイントゲッターであるSASAKI選手が腕のけがで今大会を棄権。苦手とするあん馬からのスタートとなるが、この種目を乗り切り,つり輪,跳馬を通して,良い流れに乗れるかどうかが鍵となるだろう.
<2班>
この班にはロシア,ドイツ,スイスが登場した.この班では,前回大会でゆか金メダル,つり輪銅メダルを獲得したABLIAZIN選手を擁するロシアの演技が印象的であった.全種目で高難度技を披露し,その仕上がりの良さがうかがえる.とくに平行棒では前方かかえ込み2回宙返りひねり下りにほとんどが挑戦し、チームとしてのまとまりを感じた。
他方,エースHAMBUECHEN選手,NGUYEN選手らで構成されるドイツチームはミスが目立った.当日に向けた調整が期待される.それに対してスイスは高難度技を頻繁に行うというわけではないものの,堅実な体操で順調な仕上がりを見せていた。後半ミスもあったが強いチーム力を感じた。
<3班>
日本チームが登場.しかも,ライバル中国と同じ班での演技となる.スタート種目の跳馬では,内村選手が気にかけていたリシャオペンを成功させ、白井選手がシライの着地を止めるなど、全員がいい跳躍を披露した.早坂選手も幾度となく跳躍に苦しんだが、ロペスをまとめた。平行棒では加藤選手が着地をまとめるまでに回復した姿を見せた。内村選手はマクーツ、ヒーリーで腕支持になってしまったが、大崩れすることなく演技を通しきった。続く鉄棒では,足首の負傷により出場が危ぶまれた加藤選手が完璧な着地を披露した。その一方で,長谷川選手が伸身イエガーで落下した際にアクシデントが発生.車いすでの退場となった。その怪我の状態が心配される.少し重苦しくなった雰囲気を払しょくしたのは,前々回大会のゆか金メダリスト白井選手の演技である.ゆかにおいて,高難度技の連続をまとめ,演技後には観戦した選手やコーチ,関係者からポディウムトレーニングにもかかわらず歓声が挙がった.選手はその後もあん馬,つり輪とそれぞれ本番の器具を確かめるように調整を行った.
同様に中国チームも各器具の感触を確かめるように練習を行っていた.ZHANG選手を筆頭に,全選手が演技のほとんどを高難度技で構成し,今大会でもDスコアで他国を圧倒していることがわかった.日本が団体で金メダルを獲得するには,演技の美しさや正確さを示すEスコアで有利に立つことが必須である.エース内村選手を擁する日本チームが,王者中国に挑む.
<4班>
この班には韓国,ギリシャ,コロンビアが出場した.韓国は伝統的に得意とする跳馬において,今大会でも高得点獲得をねらう.また,2006年世界選手権平行棒銅メダリストのYOO選手の平行棒の演技にも注目したい.ギリシャのPETROUNIAS選手はつり輪において力強い演技を披露した.コロンビアのCALVO選手は,平行棒において新技(棒端での懸垂から後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり)を発表した.ポディウムトレーニングでは着地で手をついたが,試合本番ではその成功を期待したい.