全日本選手権 個人総合 女子決勝総括

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優勝した笹田夏実選手(日本体育大学)。強かった!
昨年とは違い、通し込みをしっかりして、狙って掴んだ勝利。2日間を通して身体の反応も良く、キレよく思い切りのある演技を見せてくれた。まだ来週行なわれる東日本インカレをこなし、NHK杯、種目別選手権と、さらなる飛躍を見せてくれると期待したい。
「4月はすごく大変だったけど・・・今、すごく調子がいいんです!」と応えてくれる笑顔がとてもキラキラしていた。この全日本選手権は笹田選手の笑顔がたくさん見られた2日間だった。
「悔しい」2位に、寺本明日香選手(中京大学)。
怪我が続いた足首も、体調も決して悪くはなかったはず。「しっかり練習してきた」と、気合十分で臨んだ2日間だったが、段違い平行棒のシュタルダー系で肘を曲げる実施が目立ったり、ゆかではいまひとつ着地が決まりきらなかったりと、「良い時」の寺本選手のキレがなかったように見えた。我慢の試合が続いてきただけに、調子が良い状態での試合運びに苦戦してしまったのだろうか。
ただ、寺本選手の素晴らしいところは「ここ!」という時にしっかりと合わせて、結果を出せるところ。NHK杯ではきっとリベンジしてくれるだろう。
関係者も体操ファンの皆さんもびっくりだったのが平岩優奈選手(三菱養和体操スクール)の3位。幼い頃は笹田選手と共にロシア人のコーチに基礎をしっかりと叩き込まれ、現在のコーチと共にそれを生かした技術で技の発展をさせ、ここ数年でメキメキと上達してきている選手。
4月に高校に入学したばかりの頃は、生活のリズムの変化に苦労したようだが、ゆかの曲・振付けを新しいものに変え気分一新、気合を入れてチャレンジャーとして臨んだ全日本だった。平均台を得意としており、全種目においてまだまだ伸びしろのある選手。NHK杯でも今日と同じように伸び伸びと演技してくれることを期待したい。
同点4位に昨日のリベンジでベテランの意地を見せた美濃部ゆう選手(朝日生命)と2日間コンスタントに演技をまとめてきた井上和佳奈選手(筑波大学)。腰の痛みに悩まされ、いつもより低いDスコアだが、大過失なく戦った村上茉愛選手(池谷幸雄体操倶楽部)が6位に。世界選手権代表を十分に狙える実力のある3人だけに、今後の調整次第でどう代表争いに絡むかが見所である。
7位には今日も美しく雄大な段違い平行棒の演技を見せた河崎真理奈選手(とらい体操クラブ)。ユースオリンピックへの代表対象者。まだそんなに若いとは思わせない堂々とした試合を2日とも見せてくれた。
加えて、今回メディアからの注目も厚かった宮川紗江選手(セインツ体操クラブ)。河崎選手と同じくユースオリンピック資格対象者。得意なゆかと跳馬は十分武器となるが、平均台の安定性と段違い平行棒のDスコアのアップが必要。今後とても楽しみな選手である。
今回、2日間を通して全体的に言えるのが、今まで日本人が苦手とされてきた「表現力」・・・「芸術性」への多大な取り組みが各所属でしっかりと行なわれてきたという事。女子体操【Artistic Gymnastics】の本来の姿である、「芸術性」を見直すために、ロンドンオリンピック後、昨年の世界選手権を経てFIGによりゆか、平均台での芸術性の減点項目が多く追加され、演技を一つの「作品」として、審判や観客と一体化できるような、かつ、その振付けや伴奏曲はその選手の個性やスタイルを引き出すものであるべきだとの通達があった。
それに伴い、社会人や大学生の選手はもちろん、ジュニアの若手選手まで身体を大きく使い、表情や目線にまでこだわった演技がたくさん見られた。高難度の技をやりながら、ターンやジャンプ等のダンス系要素でもDスコアを稼ぎつつ、指先1本までこだわった動きをするのは本当に大変なことだが、ひと冬かけて行なわれてきた各選手の取り組みは十分に評価されて良いと思うし、NHK杯、世界選手権へ向けて、さらなる発展を期待している。