第30回DTBチームカップ男子体操競技報告
【期日】2012年11月26日~12月4日
【場所】ドイツ・シュツットガルト
【競技会場】Porshe-Arena Stuttgart (POA)
【選手団】
コーチ:立花泰則(男子ロンドン強化本部長/徳洲会体操クラブ)、佐藤寿治(コーチ育成委員会委員/KONAMI)
審判員:冨田洋之(JOC専任コーチ/男子ロンドン強化本部員/順天堂大学)、辻哲夫(審判委員会男子審判部員)
トレーナー:今井聖晃(アンチ・ドーピング医科学委員会委員/KONAMI)
選手小林研也(KONAMI)、植松鉱治(KONAMI)、斉藤優佑(徳洲会体操クラブ)、亀山耕平(徳洲会体操クラブ)
【報告】
○予選班編成
ゆか:プエルトリコ・ドイツ・オランダ
あん馬:ミックスG・イギリス・スイス
つり輪:ブラジル・カナダ・日本・ロシア
※アップおよび試技は、2か国ずつ。ローテーションごとに国が繰り上がり試技。
■11月30日(金)団体予選 雪のち晴れ
試合会場での練習は、この日が初めてとなり、試合前のウォーミングアップで器具の感触を確かめながら、2時間の本会場練習を行った。
試合会場の器具は、ゆかと跳馬以外は、練習会場にあったスピース社製の器具とは違って、旧ヤンセン社製のタイプがセットされていた。また、会場には、パン、水、ジュース、コーヒー、果物などの軽食も用意されていた。
○第1ローテーションつり輪
1番斎藤:入り技、伸身ヤマワキで回転がうまく入らず、伸身ホンマ支持前回りとなってしまい、演技価値点下げるも、その後は落ち着いて演技を実施しまとめる。Dスコア6.1得点13.950
2番小林:現在のコンディション状態から、普段行っている演技価値点より難易度を下げ実施。正確な力技と落ち着いた捌きで、終末技の着地も決めた。Dスコア6.1得点15.000
3番亀山:演技実施の内容は良かったものの、終末技で回転不足となり、しりもちを着くミス。Dスコア5.8得点13.250
○第2ローテーション跳馬
1番小林:アカピアン。着地後ろに小さく1歩。余裕のある跳躍で演技をまとめる。Dスコア6.2得点15.400
2番斎藤:練習での感触から、予定していた伸身クエルボ2回ひねりから、伸身クエルボ1回ひねりに変更。難度を下げ実施。小林に続き、余裕のある跳躍でまとめる。Dスコア6.2得点15.600
○第3ローテーション平行棒
1番斎藤:大きさのある1つ1つ正確な演技を実施。着地もうまくまとめる。Dスコア6.1得点14.900
2番植松:斎藤に続いて、1つ1つ丁寧な捌きでリズムよく技を実施。Dスコア6.5得点15.100
3番小林:じっくりと1つ1つ正確な演技実施。流れもよく、終末技の着地も決め、素晴らしい出来栄えを見せる。Eスコア9.150と高得点の評価を受けた。Dスコア6.3得点15.450
○第4ローテーション鉄棒
1番亀山:手放し技コールマンを決め、演技中盤にややスピードが落ち詰まり、アドラーひねりでは握り手が外れるもうまく乗り切り、終末技まで慎重にまとめる。Dスコア6.2得点14.400
2番斎藤:練習の段階で不安であった、アドラーひねりからコールマンの連続技をしっかりと決め、雄大な手放し技カッシーナも成功。流れに乗るかと思いきや、エンドー1回ひねり大逆手に入るエンドーで足をバーに引っかけてしまい演技価値点を下げるも終末技までまとめる。Dスコア6.7得点15.050
3番植松:雄大な手放し技、屈伸コバチ、コバチ、コールマンを決め、会場を沸かせたが、シュタルダーとび3/2ひねり大逆手の技で、バーを持ち損ね落下。その後、演技再開するもリバルコで2回目の落下。この時、少し首を痛めるも終末技まで演技を続ける。Dスコア6.8得点12.600
○第5ローテーションゆか
1番斎藤:第1タンブリング、後方伸身宙返りひねりから、前方伸身宙返り2回ひねりの着地が乱れる。他のタンブリングでも着地が決まらず得点を伸ばすことが出来なかったが、予定していた演技を実施出来た。Dスコア5.5得点13.900
2番亀山:第1タンブリング、前方伸身宙返り2回ひねりから前方宙返りひねりの予定が、かかえ込み前方宙返りとなり尻もちをつくミス。この失敗が響き得点を伸ばせず。Dスコア5.5得点13.000
○第6ローテーションあん馬
1番小林:スピードのある旋回で淡々と演技するも、終末技の倒立でややリズムを崩し、倒立から3部分の移動後ひねりが多く入り、終末技の難度が上がったと思われたが、バランスを崩していたため、認められず。しかしながらこの種目の1番手として役割を果たしてくれた。Dスコア6.2得点14.700
2番亀山:スタートから難度の高い技を成功させ、流れに乗るも、終末技で倒立から3部分の移動が出来ず。演技価値点を下げたが、上手くまとめた。Dスコア6.3得点14.800
3番斎藤:淡々と演技を実施し、予選の最終演技を終えた。Dスコア5.8得点14.400
予選を終え、2位ブラジルと0.15の得点差と詰められたが、1位で通過。決勝へ駒を進める。2位は、若手の成長が見受けられるブラジルが入り、着実に得点を伸ばしていたロシアは、最終種目あん馬の得点が伸びず、4位。3位には、今夏オリンピック開催地であったイギリスが入り、この4か国で決勝が行われる。
■12月1日(土)団体決勝 晴れ
昨日の予選結果により、通過順位1位の日本と3位イギリスがゆか、2位ブラジルと4位ロシアがあん馬からのスタート。ウォーミングアップは、2か国の出場選手が行い、その後2か国続けて試技。ローテーションごとに国の順番が入れ替わり進めていく、日本は、ゆかの先方スタート。
○第1ローテーションゆか(前半)
1番斎藤:第1タンブリング、後方伸身宙返りひねりから前方伸身宙返り2回ひねりの着地で、大きく乱れたが踏ん張り演技を続ける。その後は落ち着きを取り戻したが、最終タンブリング後方伸身宙返り5/2ひねりで片手を着くミスに終わる。Dスコア5.5得点13.333
2番亀山:昨日大過失を出してしまった、第1タンブリングの前方伸身宙返り2回ひねりから、前方宙返りひねりを落ち着いて捌き、流れに乗る。終始落ち着いた演技でまとめた。Dスコア5.7得点14.466
3番植松:1つ1つの技の捌きに余裕があり、他国の選手と比較しても演技実施の違いが明らかにわかる良い実施で、最終タンブリングまできっちりと決める。Dスコア5.8得点14.900
チーム得点29.366
○第2ローテーションあん馬(後半)
1番小林:入り交差技でやや硬さがみられたが、安定した演技を披露し、上手くまとめる。Dスコア6.2得点14.733
2番亀山:出場選手中、あん馬のDスコアでは最高点の演技。途中、旋回のスピードが落ちるも、落ち着いて立て直し、終末技まで落ち着いて決める。Dスコア6.6得点15.366
3番斎藤:入りの交差技が倒立に上がらず。B難度の認定で演技価値点下げる。Dスコア5.6得点14.733
チーム得点30.099
○第3ローテーションつり輪(前半)
1番亀山:予選でミスの出た、終末技後方かかえ込み2回宙返り3/2ひねりを取りやめ、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり下りに変更し、無難にまとめた。力技の静止時間が短く、減点対象となった。Dスコア5.5得点13.933
2番小林:正確な力技、十分な静止時間で演技を実施。終末技後方かかえ込み2回宙返り2回ひねりの着地を止めに行くも、惜しくも止まらず。Dスコア6.1得点14.800
3番斎藤:予選でミスのあった、伸身ヤマワキも成功させ続く力技をしっかりと止め、まずまずの出来栄え。終末技後方伸身2回宙返り1回ひねり下りの着地を決めた。Dスコア6.4得点15.033
チーム得点29.833
○第4ローテーション跳馬(後半)
1番小林:アカピアンを実施。雄大な跳躍で、着地を止めに行くも後ろへ2歩動く。Dスコア6.2得点15.333
2番斎藤:ローウンを実施。普段実施しているヨー2から、難易度を落としての実施で余裕のある雄大な跳躍を決める。Dスコア6.2得点15.666
チーム得点30.999
○第5ローテーション平行棒(前半)
1番斎藤:高さの感じられる棒上での技、1つ1つの技を丁寧にこなし、着地をまとめる。Dスコア6.1得点14.960
2番植松:テンポよく流れのある演技実施。見せどころの屈伸ベーレ、バブサーもスムーズにこなし、着地までまとめる。Dスコア6.5得点15.166
3番小林:1つ1つの技を正確かつ丁寧さを印象付ける素晴らしい実施。着地は惜しくも動いてしまったが演技内容は素晴らしい出来栄えで、得点を伸ばす。Dスコア6.3得点15.233
チーム得点30.399
○第6ローテーション鉄棒(後半)
最終種目に入る時点で、他国3チームとは、4点以上の得点差があり、ゆとりを持って最終種目に臨めた。
1番亀山:つま先までしっかりと伸びた美しい演技で、手放し技コールマン、アドラーひねりからのヤマワキを決め、着地もまとめる。Dスコア6.3得点14.833
2番斎藤:やや不安のあった、アドラーひねりからコールマンの連続技を着実に決め、続く大技カッシーナでは、足の乱れがあったが雄大な実施。着地までまとめる。Dスコア6.9得点15.533
3番植松:テンポの速いダイナミックな演技を展開。屈伸コバチ、コバチ、コールマンと立て続けに手放し技を成功させ、4つ目の手放し技、アドラーひねりからのヤマワキもよどみなく実施。終末技後方伸身2回宙返り1回ひねり下りの着地も見事に決める。この大会最終演技者となり、着地を止めた後は大歓声に包まれた。Dスコア6.9得点15.400
チーム得点30.933 団体総合得点181.629
すべての演技を終え、目標としていたチーム得点180.000を上回り、結果181.629を獲得でき、優勝。日本チームのミスは、ゆか1演技、あん馬1演技の2つにとどめることが出来、決勝に進出した他国チームでは、大きなミスがそれぞれに出ており、得点を伸ばすことが出来なかったように思う。
日本チームは、小林・植松選手のベテランが、国際大会新人となる斎藤・亀山選手を引っ張り、チームとして雰囲気良く試合を進める事が出来た。予選から決勝と試合が続く日程、コンディション面では厳しい中、選手はしっかりとした試合を実施することが出来た。コンディション管理において、帯同いただいたチームトレーナー今井氏の存在は、選手にとってもスタッフにとっても大きく、陰ながら最大のチーム勝利貢献者に思う。
試合形式が4-3-2という変則的ながら、チーム戦を戦う上、今回のメンバーについては、それぞれに弱点種目はあるものの、すべての種目をこなせるオールラウンダーが揃い、どの選手がどの種目に出場しても、チームとして成り立つ強みを感じた。また、オールラウンダーの1つの特徴として、後半種目の強さがあり、決勝では終盤となる種目の平行棒・鉄棒で、自信を持って、安心して選手を送り出し、期待することが出来た。改めて、体操競技は6種目を一通り熟せることが必要であり、その中で得意な種目が強みとなり選手の特徴になると再認識することが出来た。
■12月2日(日)WC男子個人総合およびDTBチームカップ女子決勝応援 雪のち晴れ
この日は、WC男子個人総合が行われ、日本から出場の田中和仁選手の応援と、DTBチームカップ女子決勝が行われ応援を行った。
WC男子個人総合の試合後、ドイツ代表選手であった、フィリップ・ボイ選手の引退セレモニーが行われ、多くのファンから見守られ引退を飾った。
すべてのスケジュールが終わり、サブ会場であったKTFに隣接するレストランにおいて、さよならパーティーが開かれ、食事と大会終了の挨拶があった。
【総評】
今大会DTBチームカップは、一昨年より新設されたチーム戦の大会であり、試合形式については、4選手3演技ベスト2の形式。シーズン終盤に行われる大会で、世界選手権やオリンピック競技大会と違い、チーム選手数が少人数で行なわれる為、参加しやすい面があるように思う。各国の選手団は、若手を中心に派遣。実績のあるベテランも交え、国際競技会を経験することにおいては、良い大会に感じた。
男子日本選手については、経験豊富で、今年のオリンピックリザーブ選手であった2名のベテラン選手、新人選手2名と、バランスの取れたチーム編成を組んで臨むことが出来た。特に若手選手にとっては、学ぶべきことを、ベテラン選手より直接吸収することが出来、大会を通して多くのこと学べたのではなかろうか。また、団体戦で優勝することが出来た要因として、まず、ミスを最小限に抑えられたこと。今回のメンバーで比較的得点を伸ばしにくかった跳馬では、しっかりとチーム得点を確保。終盤の種目、平行棒・鉄棒では、チーム得点全体でも1位をキープ出来たことで、他のチームに隙を見せずに最後までこのチームの力を出し切れたことにあると思われる。
現地では、地元クラブKTFのコーチで、大会責任者のワレリー・ベレンキーに、非公式練習の手配また、大会関係の情報等、様々な面でお世話になり、この場を借りて感謝申し上げたい。