第64回全日本体操競技選手権大会女子団体レポート
大会5連覇を狙っていた朝日生命体操クラブは、元々の登録が他チームよりも少ない5名であり、更にエース鶴見虹子を欠いて4名だけでの戦いを強いられることになった。そんな中、逆に他のチームはミスなく戦えば優勝のチャンスが出てくるという、かつてない緊張感が生まれることになった。競技開始前からまったく予断を許さない、シビアな争いが予想された。
第一ローテンションでは、まず段違い平行棒で京都ジャンピング体操クラブが段違い平行棒で一番手の石井が落下、レジックスポーツが西野が二度の落下で9点台、更に羽衣体操クラブはゆかで二番手の杉原が最後のかかえ込み2回宙返りでしりもちと大過失を出して、3チームがスタートで躓いてしまった。跳馬スタートの日本体育大学はまったく危なげなくユルチェンコ系の跳躍を見事に決めて波に乗り、トップに立った。同じく跳馬スタートの朝日生命体操クラブは、最後の鈴木がユルチェンコ2回ひねりに挑んだが1本目失敗、2本目もかなりギリギリの着地で得点を伸ばしきれなかったが、何とか2位につけた。平均台で落下がなかった筑波大、四天王寺がそれぞれ3位、4位になった。2005年に優勝した戸田市スポーツセンターは、エース谷口、そして兎澤が怪我などからの復調途中で本来の構成ではなかったが大きなミスなくまとめた。
第2ローテーションでは上位の日本体育大学、朝日生命体操クラブが段違い平行棒に回ったが、大学生らしい雄大性も感じる演技でこの種目でも順調に得点を重ねた日本体育大学に対し、朝日生命体操クラブは着地で大きく動くなどのミスが出てしまい得点を稼げなかった。そこで上がってきたのが跳馬の羽衣体操クラブと戸田市スポーツセンター。羽衣体操クラブは2人目の今西がユルチェンコ1回半ひねりと2回ひねりを見せ、杉原はユルチェンコ2回ひねりを2本まとめ、この日唯一跳馬で14点台をマーク。チームでも跳馬のトータルでは1位となり、一気に2位に上がった。戸田市スポーツセンターはエースの谷口が本来のユルチェンコ2回ひねりではなく、一回ひねりに抑え、3人が同じ技を行ったが、各自きれいにまとめて3位につけた。朝日生命体操クラブは4位に後退した。レジックスポーツ、京都ジャンピング体操クラブは平均台でも得点を伸ばせずに下位に留まってしまう形となった。
第3ローテーション、トップの日本体育大学はさすがに優勝争いの堅さが出てしまうが、それでも大過失はなく、内村が交差輪とびで、竹内が前後開脚ジャンプ半ひねりで、そして杉原が2つの宙返り系の要素でそれぞれバランスを崩す程度のミスに留め、トップの座を守った。何とか追いつきたい羽衣体操クラブは段違い平行棒で、種目別決勝に残った湖山を筆頭にミスを抑えた演技を行ったが得点を伸ばせず。そこで上がってきたのが同じく段違い平行棒の戸田市スポーツセンター。兎澤が着地でやや乱れてしまったが、谷口を始め、何とか大過失を出さず2位に上がった。そして、平均台の朝日生命体操クラブも一人目の野田がほぼ完璧な演技で、最後の後方2回半ひねりの着地も決め14点台を出して波に乗り、大過失を出さずに乗り切って3位に上がった。羽衣体操クラブが4位に下がったが、2位争いは3チームが0.550の差の中にいるという大接戦となった。そして、四天王寺体操クラブも跳馬でミスなく得点を重ねて、上位を伺える位置につけた。一方、その2位争いの3チームと日本体育大学は3.7の大差が付き、日本体育大学の優勝の可能性が大いに高まった。
いよいよ最終ローテーション、まず朝日生命体操クラブは何とか5連覇の望みを繋げたいところ。まず長谷部は最初の3回ひねりこそ前に大きく一歩動いてしまったものの、最後の前方2回ひねり~鹿ジャンプもきれいに繋げるなど大きなミスは他に出さず。野田も3回ひねりで後ろに動いてしまったものの、最後の後方2回半ひねりを見事に止めて今日のゆかの最高点を出した。しかし最後の水永が最初の屈身2回宙返りで手を着く大過失を出してしまい、得点を落としてしまった。一方、戸田市スポーツセンターは平均台でほぼノーミスの演技を見せ、谷口は最後の屈身2回宙返り下りの着地も止めて平均台の今日の最高点を出して朝日生命体操クラブを上回った。さて、いよいよ優勝が目の前に迫った日本体育大学は、キャプテンの竹屋が着地で動くシーンも見られたが大過失なく演技を終え、二番手の田村も前方宙返りから3回ひねりの間接的なシリーズ技もきれいに決めて最後の竹内に繋いだ。10.05以上を出せば優勝という安心できる状態ではあったが、さすがに最初のシリーズは意識してしまったのか、後方1回半~前方1回のシリーズでラインオーバーまでしてしまう中過失を出してしまう。しかし、それで奮い立ったのか、その後は大学のチームメイトからの大声援で波に乗り、後方2回ひねり~左右開脚ジャンプのコンビネーションも雄大に決めなど、好調な演技が続いた。最後こそ屈身2回宙返りで大きく前に動いてしまったが、大きく得点を落とすには至らず、見事に日本体育大学に13年ぶりの優勝をもたらした。追い上げを図った羽衣体操クラブは、一人目の杉本が3度の落下、続く今西も1回落下してしまうなど精細を欠いた演技を続けてしまい大きく得点を落とした。また、レジックスポーツは得意の跳馬で寺本のユルチェンコ2回ひねりを筆頭に、ユルチェンコ1回半も2人ということで高得点が期待されたが、14点を超える得点を出せず、段違い平行棒でノーミスの四天王寺スポーツクラブに及ばなかった。
最終結果は、1位 日本体育大学、2位 戸田市スポーツセンター、3位 朝日生命体操クラブ、4位 四天王寺体操クラブ、5位 レジックスポーツ、6位 京都ジャンピング体操クラブ、7位 羽衣体操クラブと筑波大学となった。
日本で唯一の団体決勝方式での争いで、また、世界選手権、アジア大会のメンバーが一人もいないということで、各チームに精神的な支えとなる経験豊富な選手がいない中、チームとして非常に勢いを感じ、チームワークのよさが目立った日本体育大学がジュニアクラブの各チームを上回る結果となった。同大学の男子チームもこの大会に向けて優勝への意気込みが非常に大きかったが、女子チームにもその雰囲気が伝わったのか、見事なノーミスでの優勝であった。