ロッテルダム世界選手権・男子ポディウム練習2日目レポート&フォト
男子ポディウム練習2日目。ポディウム練習の最終日となった。今日でほぼ会場の準備も整い、関係者の動きもかなり慣れ、いよいよ本番が始まるという雰囲気が出てきた。
第6班に入ったのは日本の最大のライバルである中国。今回の陣容は北京五輪団体メンバーの陳一氷、アテネ五輪金メダリストの滕海浜、昨年の世界選手権の代表である馮吉吉、巌明勇、昨年のジャパンカップで来日した呂博、そして新人の張成龍というメンバー。スペシャリストと総合選手を配慮した面々で、その種目はうまく分散している印象だ。
跳馬からスタートした中国は、陳が助走をなかなか合わせられずにいたが、最後には減点の少ないきれいなドリッグスを決めた。張選手もドリッグスで高さのある捌きであった。そして、馮選手、呂選手が挑んだのはヨーII。両名ともにやや着地姿勢は低いものの、ひねりの軸に関しては安定している印象を受けた。2人が安定してDスコア7.0の技を見せてくるのはかなり手強い印象である。
平行棒では滕選手がオリジナル技「テンハイビン」を行わなかったものの、非常にスムーズな捌きで高難度技のシリーズをこなしていた。また、馮選手も得意種目で豊富な高難度技のバリエーションを見せて、豪快な捌きを見せていた。この2人が平行棒をリードしていた。
鉄棒では今回出場しない北京五輪金メダリストの鄒凱選手の代わりに活躍が期待される張選手の演技が目立った。伸身トカチェフ~リバルコ、シュタルダーとび1回ひねり大逆手といったところではきれいな捌きを見せていた。体型が中国選手の中では長身で、手足が長い為、捌きの大きさが際立つといえよう。相変わらずコバチなどの宙返り系の手放し技を行う選手が少なく、今回も陳選手のみ。その代わり伸身トカチェフをほとんどの選手が行った。
ゆかに関しては、これまでと違い、圧倒的に強いという印象はなかった。構成としても際立ったものはなかった。張選手がこの種目でも活躍が期待されているのであるが、ひねり技が得意で、切れのいい実施をすると思われた。今日の実施を見る限りは着地をいかにまとめるかが張選手の課題になるであろう。
あん馬はアテネ五輪でこの種目で金メダルを取った滕選手以外は得意としている選手は少ない。あん馬を行う印象の少ない陳選手、巌選手も演技を行った。呂選手、そして陳選手が滕選手の後に続く実力があると思われる。
つり輪に関しては巌選手、そして陳選手が2人で世界選手権、五輪、ワールドカップファイナルとこの種目の連勝を続けている。その2人がチームとして一緒になるのは今回が初めて。北京五輪でも陳選手と楊威選手の2人が驚異的な得点で一気に日本をリードしたが、今回でもこの種目で一気にリードを広げる、あるいは逆転する可能性がある。陳選手は伸身月面宙返り下りの着地の確認をその前の力技を実施してから数回行っていた。巌選手は力技部分の確認を行っていたが、何度行っても減点の少ない力強い実施であった。
こうして全体的に見ると、北京五輪同様に得意種目で日本との差を広げ、優位に立つことを戦略としているようだ。日本は塚原団長、立花監督を始め、コーチ陣がしっかりと偵察しており、決勝に向けてその対策が練られていることであろう。
その後の第七班にメダル争いの中にあるロシアが練習を行った。デビアトフスキ、バルカロフ、ホロホルディン、ゴロツツコフのベテラン4名に加えて、若手3名が加わった陣容。しかし、その若手は得意種目以外は難度として劣る構成であり、また、ゴロツツコフ選手はゆか、跳馬のみの演技であった為、予選では若手選手の活躍が鍵となるであろう。決勝になればベテランをメインに、若手の得意種目で稼いでくるであろうが、今日の印象としてはアメリカ、韓国の勢いには劣ると思われた。
最終班に登場したのはドイツ。観客席にはアメリカと韓国のコーチが偵察に来て、前回3位のチームとしての注目度を感じさせた。しかし、内村選手の個人総合争いのライバルと見られていたハンビューヘン選手はアキレス腱の調子が思わしくなく、ゆかと跳馬の演技をせず、また、前回のメンバーでもあるニューエン選手も欠場。厳しい戦いを強いられることになった。しかし、今日の調子では鉄棒以外はよかったように思える。偵察に来ていたアメリカ、韓国と上位争いに加わるか注目される。
※情報
今大会から新たに「リファレンスジャッジ」という制度が設けられ、E審判の得点の指標のような存在になる。その為、E審判の数が6名から5名に変わり、上下カットの中間3名の平均が得点となる。得点は小数点第三位までの切捨てとなる為、中間三名が9.7、9.8、9.8となった場合にはEスコアは9.766という得点になる。あまり馴染みのない数字なので、実際に成績の中で数字を見られる際にはこの点をお知り置き願いたい。
最後に、下の画像は会場「Ahoy」の外観。入り口を入り、アリーナに入る手前には年代ごとのオランダの体操の歴史が紹介されている。その中には今大会出場のゾンダーランド選手と、2001年、2002年と大活躍し、2002年の世界選手権ではゆかで銀メダルを獲得した女子のファン・デ・ルールさんと並んで、ファン・ゲルダー選手の金メダル獲得の写真もあり、彼の不参加がいかに大きなニュースであったのかが伺える。そして、最後の写真は大会を影で支えているボランティアの方々。フレンドリーで且つ我々の質問・依頼には愛想よく応じてくれ、ホスピタリティ精神を感じさせて、大会の大事な存在となっている。