世界体操男子個人決勝レポート

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 和仁頑張れ!航平頑張れ!の声が時折観客席から送られる。ゆか、最初の演技者HORTON(USA)が、後方宙1回半ひねり~前方2回宙でいきなり尻もちをつく。その瞬間、持ち点なしの決勝おける緊張感が高まる。続く地元KEATINGS(GBR)も2度のライン減点。そしてあん馬では、田中和仁がフロップの途中で落下。シュテクリB連続から一把手上旋回の段階で落下したため、D難度が認定されるか心配したが、認定され、失敗のマイナスを最低限で食い止める。予選2位のDEVYATOVSKIY(RUS)は、後方宙2回半ひねり~前宙ひねりの後の宙返りが前宙になり、A難度がカウントされ、予選より0.1Dスコアを下げる。内村もまた後方宙1回半ひねり~前宙2回ひねりの後の宙返りが前宙ひねり(B)となり、予選よりDスコアを0.1下げる。あん馬RYAZANOV(RUS)は下りで停滞しそうになり、終末技なしと判定される。しかし、予選よりも明らかにいい調子。非常に緊迫した試合展開を予想させる第1ローテは、内村3位、田中は最下位の24位スタートとなった。
 あん馬KEATINGS(GBR)が予選の失敗を払しょくする演技で15.500を獲得し、後続にプレッシャーをかける。続くMCNEILL(USA)もメリーゴーランドなど安定した実施で15.000。内村も予選より落ち着いた演技を披露し14.900。しかしHORTON(USAは前半のポメル旋回で落下。さらに下りで力を使い認定されず11.100とメダル争いから早くも脱落した。田中のつり輪は、グチョギーからの振動倒立、ヤマワキからの振動倒立など予選よりも落ち着いて決め15.075を獲得。内村トップ、田中19位に浮上。
 内村のつり輪、わずかに着地が動いただけで、予選と同様に丁寧な演技。KEATINGS(GBR)もDスコアを5.5を可能な限り正確に行う。跳馬RYAZANOV(RUS)シューフェルトをまとめる。田中はアカピアンを着地1歩にまとめる。
 跳馬、DEVYATOVSKIYはローチェの着地で尻もちをつく。しかし、すぐに立ち上がって着地姿勢をとり、メダルへの執念を感じさせる。内村は予選後のインタビューでコメントしたように、すでに自分がなぜ予選で失敗したのかしっかり理解しており、いつもどおりのシューフェルトを成功させる。この段階で、独走の様相に。KUKSENKOV(UKR)はアカピアンの着地で膝をつきライン減点あり。3種目を堅実な演技をしてきたがここで後退。KEATINGSは危なげなくアカピアンを成功。RYAZANOVの平行棒、棒下系、ベーレ、モリスエ、最後の屈身2回宙の着地をとめる。田中は、棒下宙1回ひねりで左右にゆがみバランスを崩すが持ちこたえる。内村1位をキープ。田中は5位に浮上。メダル射程圏内へ。
 内村の平行棒。予選時に受けたタイム減点を克服して演技開始。しかし、ベーレの後の前振り上がりでうまく支持しきれず中間振動のミスを出す。客席からもため息が漏れる。KEATINGSは、Dスコアの低さを補うEスコアを意識した実施で着実に得点を重ねていく。同じくイギリスのTHOMASも同じようにEスコアを意識し、得意種目でDスコアを上げていく方法で上位をキープ。MCNEILLは正倒立ひねりでゆがみ、着地も決められず。追い上げの勢いがなくなる。田中の鉄棒、少し倒立を外して実施し、最後の伸身新月面の着地を決めて会場から歓声が響き渡る。RYAZANOVの鉄棒、アドラーひねり~トカチェフひねり、アドラー1回ひねり~ヤマワキ、順手背面、と順調に続けていたが、最後の伸身新月面の着地で大きく前に踏み出し手をつくミス。内村トップを維持、田中は3位に浮上。2位はKEATINGS。
 最終種目の最後の演技者は、その組でもっとも予選得点の高かった選手が務める。予選トップの内村は男子体操の華「鉄棒」の締めくくりを任された。鉄棒最初の演技者KUKSENKOVがコールマンで落下。続くHORTONもコールマンで落下する。それをしり目に、ゆかでは田中が演技を始める。淡々と演技をこなすが、着地を止めきれない。予選のときのような失敗はなく得点14.650、合計88.300で演技を終える。落下の続く中、地元KEATINGSが鉄棒に登場し、大きな歓声に包まれる。ヤマワキを懸垂すると、あとは屈身回転系の技で危なげなく演技し、伸身月面をまとめる。14.475。田中を抜いて88.925を獲得した。RYAZANOVのゆか。この得点によって田中のメダルが決まる。予選でミスの出た最初の伸身前宙~前宙2回ひねりを決める。それぞれ丁寧な演技で得点は14.825に。合計88.400。最終演技者の内村の演技を前に3位。伸身コバチ、コバチ、コールマンなど豪快な技を実施する度に歓声がこだまする。それほど軽やかに豪快に美しい手放し技をいい位置で懸垂する。着地こそ動いたが14.975を獲得し、2位以下を2.575放す91.500を獲得した。
 中国のYANG Wei、日本の冨田が引退した今、新しいキング・オブ・ジムナスティックスの誕生だ。試合後の記者会見で外国人記者から、3歳から17年間も同じ体操に向き合っていることについて尋ねられて一言、「今回、世界チャンピオンになってすごく新鮮な気持ちになりました。」と答え、周囲の感嘆の笑いを誘った。