JAPAN CUP女子団体レポート
女子優勝争いをした中国とロシアの得点差はわずか0.100。結果として優勝と準優勝の順位がつけられたが、どちらがチャンピオンでもおかしくない試合展開で、体操競技の魅力を十分に楽しめる内容となった。また、日本も跳馬で大過失を出したものの、北京オリンピックの勢いをそのままに3位となり銅メダルを獲得した。
<第1ローテ>
ロシア跳馬。クルバトワ、ムスタフィナ、ナビエワの全選手がユルチェンコ2回ひねりに挑戦して見事に成功。中国にプレッシャーを与える。
続く中国。肖莎がユルチェンコ1回ひねり(着地後ろにとぶ)。張チンと黄秋爽はユルチェンコ2回ひねりを成功させる。
オーストラリア段違い平行棒。チーム最年少のグレーリーがほん転ひねりでゆがみ、バーの上で停滞するミス。ミラー、ミッチェルは無難に実施。
対する日本は、最初の演技者である上村がうまくまとめ、大島、鶴見と続いた。
<第2ローテ>
中国の段違い平行棒。肖莎はイエガー懸垂が近づき直接パクにつなげられず。期待の新星黄秋爽もイエガーで非常にバーから離れ、落下はなかったが、その後のけあがりで停滞。下りの伸身月面でも尻もちをつく大過失を出す。しかし何可欣は動ぜず、Dスコア7.40を達成。
ロシアの段違い平行棒。クルバトワ、ムスタフィナ、ナビエワが実力を発揮。クルバトワの「ショポシュニコワ~ほん転1回ひねり~トカチェフ~パク」「ショポシュニコワひねり」、ナビエワの「閉脚シュタルダー1回ひねり~フットショポ~ほん転1回ひねり~パク」「フットシャポひねり」の成功で盛り上がる。そしてナビエワが月面の着地を決めると場内から大歓声が上がる。
日本の平均台。緊張感があり、シリーズの成功できない所などあったが、大過失なく乗り切る。特に、今シーズンもっとも成長した選手として塚原千恵子本部長が口にする美濃部が最初の演技者として大過失を出さなかったことが日本のムードを一気に盛り上げた。
それに対してオーストラリアは最初の演技者コーリーが宙返りで落下。グレーリーは段違い平行棒でのミスをカバーし、「伸身開脚前宙~交差とび~後方宙」のユニークな連続を決めたが、ワールドカップチャンピオンのミッチェルが宙返りで落下。チームとして厳しい状況を余儀なくされた。
<第3ローテ>
ロシアの平均台。クルバトワが不安定ながら大過失なく演技。ムスタフィナは後ろとびひねり前宙(F難度)を決め波に乗る。ナビエワも所々でバランスを崩したがアクロバット系では大過失を出さなかった。練習では高難度のターンを練習していたができず。改めて5-3-3のチーム戦による平均台の難しさを感じる。
中国の平均台。張チンが伸身宙返りで落下し、交差とびでも大過失を受けた。黄秋爽は、リズミカルに演技を行ったが、オノディで落下。肖莎は世界の舞台を経験していることもあり安定した演技を披露し、悪い流れをなんとか食い止めた。
オーストラリアのゆか。最初の演技者コーリーが「伸身前宙~伸身前宙1回ひねり」でしりもち。
日本のゆか。鶴見が最後の後方屈身2回宙で崩れそうになるがこらえる。
<最終ローテ>
日本の跳馬。新竹、上村が立て続けにユルチェンコ1回半ひねりでしりもち。鶴見はユルチェンコ1回ひねりで着地をまとめたが、大過失を出したうえで、オーストラリアの演技を待つことになる。
オーストラリアの跳馬。ユルチェンコ1回半ひねりをコーリー、グレーリー、ミッチェルが成功。しかし、これまでの貯金がものを言い、日本はオーストラリアを上回って銅メダルを獲得した。
中国のゆか。平均台で大過失を出した張チンが辛うじて演技をまとめる。続く黄秋爽はターンなど少しバランスを崩す場面もあったが最後の後方屈身2回宙をまとめる。そして最後の肖莎は安定した演技でロシアにプレッシャーをかける。
ロシアのゆか。デメンティエワがテンポ連続から後方宙3回ひねりを決めると場内が沸く。しかし、最後の後方屈身2回宙で尻もち。最終種目で最初の演技者に大過失が出てしまった。その後、デメンティエワのつけているゼッケン違いが発覚。次の演技者ナビエワがその確認と処理に時間がかかり、ずいぶん待たされることに。結局、ゼッケンを封入した組織委員会の不手際があったことが確認され、チーム減点なしに進行することに。ナビエワは後ろとびひねり前方2回宙をまとめるが、宙返り連続でバランスを崩す。そして最後のミズドリコワは、テンポ~後ろとびひねり前方2回宙、後方宙3回ひねり~後方宙を決めて場内を沸かすが、後方宙2回半ひねり~前宙ひねりの連続で大過失。ゆかで失速したロシアが残念ながら優勝を中国に明け渡す結果となった。
10点満点廃止となったルールにおいては、これという決められた演技構成にできない。そのため、過失が出ることはある程度計算しておかなければならない。その厳しい状況の中、世界のトップを争う中国、ロシアの新しい選手たちは大過失を出しながらも、この大会を通じて大きく成長するはずだ。JAPAN CUP。世界の体操界にとってとても意義ある大会になる予感がする。