体操W杯決勝前半、男子レポート
【男子ゆか】
SHATILOV(イスラエル)
3本目のシリーズであるテンポ宙返り~かかえ込みトーマス以外はひねり系でそろえてきた。各着地が一歩ずつ動いてしまう。しかし、身長の高い選手で雄大さを感じる演技であった。
内村航平(日本)
日本からかけつけてくれた多くの声援を受けての登場。北京五輪種目別決勝で思うような演技構成を実施できずに不本意な成績であったが、1本目の後方宙返り2回半ひねり~前方宙返り2回ひねりを決めて波に乗った。後ろとびひねり前方屈身2回宙返りひねり、そして後方宙返り3回ひねりの着地を見事に止め、素晴らしい実施を見せ、観客を魅了した。
HYPOILTO(ブラジル)
1本目の後ろとびひねり前方伸身2回宙返り一回ひねりは圧巻であった。北京五輪でまさかの失敗をした最後の後ろとびひねり前方かかえ込み2回宙返りの着地もまとめて見事に北京の借りを返した。
KOSNIDIS(ギリシャ)
伸身新月面宙返りで入り、終末技はかかえ込み新月面宙返りという後方系の強い選手であったが、その終末技で前に崩れてしまう。
THOMAS(イギリス)
2本目の組み合わせのシリーズで、3つ目の技が予定していたものでなくなってしまい、価値点を下げてしまった。終末技の後ろとびひねり前方かかえ込み2回宙返りは見事に着地を止めた。
BOUALLEGUE(チュニジア)
今大会唯一のアフリカ勢の選手。2本目の後方2回半~前方伸身宙返りひねり~後方2回ひねりで手を着いてしまう大過失を犯してしまい、得点を伸ばせず。
FAHRIG(ドイツ)
チリの選手が棄権したため、繰り上がりで出場。1本目は昨日決めていた前方伸身宙返り2回ひねり~前方かかえ込み2回宙返りのはずであったが、高さがあり過ぎたのか蹴りが合わず、2回宙返りにならずにしりもちをつき、ラインオーバーもしてしまう。他にもミスが出てしまい、残念な結果に終わった。
WAMMES(オランダ)
1本目をかかえ込み新月面宙返りにした構成であったが、2本目の後ろとびひねり前方屈身2回宙返りで手を着いてしまう。全体的に着地が不安定でBスコアも落としてしまい、上位に食い込めず。
HYPOLITO選手が北京で獲得できなかった金メダルを獲得。2位には見事に内村選手が入り、世界大会の二つ目の個人メダルを手にした。3位には一番目の演技者だったSHATLOV選手が入った。ミスが目立ち、ミスをしなければメダル獲得というやや残念な印象もあったが、優勝したHYPOLITO選手の演技はやはり世界のトップクラスの構成と安定感を誇り、十分賞賛に値する。また、内村選手は今回最高のBスコア(9.4)をマークし、美しい体操をアピールしたい日本チームの目標を達成したといえよう。
■内村選手インタビュー
特に優勝を狙っていたのではないのですが、まずは自分の満足できる演技が目標だったので、それができてよかったです。国内の練習からひねりの着地は安定していたので、今日はいつもどおりの演技ができたと思います。出場は日本を出発する4日前に決まり、最近の練習はすでに新ルールの構成にしていたので、いきなり構成を今のルールに戻し、通し練習は1回しかしてない状況でスペインに来たので、その中での今日の出来というのは嬉しいです。自分の中では、やはり北京五輪の後に自信がついてきたのが大きいのではないかと思います。(北京の種目別で自分の演技ができずにゆかのメダルを逃したので、この大会で雪辱を果たす気持ちがあったのかの問いに対して)そいういう気持ちはないです。北京では個人総合で銀メダルを取っていますし、やはり個人総合の銀メダルの方が嬉しいですから。
【あん馬】
SMITH(イギリス)
北京五輪銅メダリストが最初に登場。しかし、北京の種目別決勝と同じく、一把手上の下向き転向でひざを曲げてしまう。それでも高難度を連続した構成を何とかまとめた。
SELATHURAI(オーストラリア)
オーフス世界選手権銀メダリスト。北京五輪出場こそならなかったが、今回も素晴らしい演技を見せた。馬背での下向き転向720度は非常に特徴的であり、またシュピンデルの捌きも素早く、アピールポイントを多く持った構成であった。
BERTONCLJ(スロベニア)
一腕上の上向き全転向と下向き全転向を構成に入れており、かなりユニークな構成。しかし、その下向き転向技で落下。
SELIGMAN(クロアチア)
交差から倒立に上げるところで勢い余って倒れてしまい落下。この選手の見せ場の一つであるだけに残念であった。旋回はかなりスピーディーで大いにアピールした。
TRUYENS(ベルギー)
手足が長い選手で捌きは大きさを感じるものの、この選手も交差から倒立に上げた後に前に倒れてしまい、前に動いて粘ったものの結果的に落下。また、モギリニーでも落下。一気に点数を下げてしまった。
BERKI(ハンガリー)
北京五輪出場はならなかったものの、豊田国際2年連続出場で日本には馴染みのある選手。二人連続で交差からの倒立で落下しており、いやなムードではあったがきれいに決めて、後半の下向き転向720度から終末技のシュテクリA倒立2回ひねり3/3までの連続でもミスのない演技。この段階でSELATHURAYを抜いてトップに立った。
ZHANG(中国)
北京五輪金メダルメンバーではないが見事な演技を見せた。交差からの倒立技は正交差からと逆交差からの二つ入っており、振りの大きさを感じさせた。そして、その後は旋回の大きさ、スピードが素晴らしく、北京五輪優勝者のXIAO QIN選手と十分対抗できる質であった。途中、馬端での下向き転向720度でややバランスを崩したように見えたものの、その圧倒的なスピードですぐに修正した。そして得点はAスコア、Bスコア共にBERKI選手を上回った。
KEATING(イギリス)
SMITH選手同様にイギリス躍進の象徴となっている選手で、前半はスピードのある旋回で美しくこなしたものの、シュピンデルで落下。価値点としては高いものを持つ選手だけに残念であった。
ゆか同様、ノーミスの3選手がメダルを獲得する結果となった。しかし、16点台による優勝争いであり、上位選手はレベルの高い演技を見せた。特筆すべきはこの3選手は北京五輪に出ていないことである。この選手たちの活躍により、ワールドカップ大会での価値は非常に高まった。
【つり輪】
TAMPAKOS(ギリシャ)
大会直前に出場が決まり、調整不足も十分理解できる中、ほん転逆あがり十字倒立が止まらず、そして伸身月面宙返りも大きく後ろに動いてしまった。それでも、自身の名前のついたオリジナル技は決めてきた。
PLUZHINKOV(ロシア)
終末技で伸身月面を狙ったと思われるが、屈身に近く、しりもちをつく大過失をおかしてしまう。
VOROBYOV(ウクライナ)
屈身ヤマワキ~ホンマ中水平~押し上げて上水平~ナカヤマといった構成でAスコアは7.2まで上げて合計16.275。この時点でトップに立つ。
GEORGALLAS(キプロス)
後ろふり上がり十字倒立で大きく乱れてしまい、終末技の3回宙返りも着地がまとまらず。Aスコアは7.2で高かったが、Bスコアが8点近くにまで下がってしまった。
VAN GELDER(オランダ)
アザリアン~中水平~十字倒立~振り上がり上水平から始まり、かなり好調と思えたが、終末技が腰が曲がり屈身月面にかなり近くなってしまった。この終末技がどれだけ影響したかわからないが、Aスコアが7.0となり、VOROBYOV選手にAスコアで及ばず2位。
つり輪に関しては世界選手権などでも名前を聞く選手ばかりで、構成のレベルは高かったが、タンパコス選手をはじめ、力技が決まらなかったり、終末技でミスを出すなど、準備不足の失敗が目立った。