2014リューキン国際招待報告
■期間 平成26年12月10日(水)~12月15日(月) 大会情報・結果へ
■場所 アメリカ テキサス州・フリスコ/WOGA GYMNASTICS
■競技会場 WOGA‐Frisco GYM
■宿泊 EMBASSY SUITES HOTELS FRISCO
■選手団
監督 田野辺満(鯖江高校/強化部員)
コーチ 梅本英貴(清風高校/強化部員)、福田道大(中京高校/帯同コーチ)
トレーナー 小林直行(マルチサポート)
選手 千葉健太(清風高校)、田中 樹(清風高校)、荒屋敷響貴(鯖江高校)、髙橋一矢(中京高校)
■スケジュール
12月10日(水) 成田空港発ダラス到着 本会場練習/12月11日(木) 本会場練習/12月12日(金) 練習会場練習/12月13日(土) 競技/12月14日(日) ダラス空港発/12月15日(月) 成田空港着
■大会概要
ジュニアナショナル強化選手より9年連続派遣となった今大会は、格レベル・年代別で競技クラスが分けられ、3日間の競技日程で開催された。今年のエリートクラス(シニアの部)には開催国となるアメリカに加え、日本、ウクライナ、ロシアからの4カ国28名が出場した。エリートクラスには、各国のナショナル選手やジュニアナショナル選手が参加しているため、毎年レベルの高い大会となっている。今年は、ウクライナのOleg Verniaiev(2014ワールドカップ個人総合ドイツ大会、イギリス大会2連勝中、2014世界選手権平行棒金メダリスト)、アメリカのDanell Leyva(ロンドンオリンピック個人総合銅メダリスト)らも出場した。
日本チームは、2014コロンビア国際に出場した千葉、2014アジアジュニアに出場した田中、荒屋敷に加え、国際大会初出場の髙橋を含めた高校上位選手でチームを構成し、団体総合優勝を目標とした。競技は、団体総合(4-4-2制)、個人総合、種目別を1日で競う大会である。
■ 大会レポート
□12月10日(水)【1日目 本会場練習】
大阪、福井、岐阜の各地より9:30に成田空港に合流し(福井は前泊)、11時間の移動を経て予定通り8:30(現地時刻) にダラス・フォートワース空港へ到着。空港にはリューキンカップ関係者の出迎えがあり、フリスコ市内のホテルまで車で送迎していただいた。ホテル近くで朝食を済ませ、休憩を取った後、12:00に試合会場となる“WOGA-Frisco”に移動した。
この日の練習内容は、長時間の移動や時差による疲労、競技器具(AAI)・環境を考慮し、3時間程度のフリー練習を行った。会場練習は比較的ゆとりをもった練習を行うことができた。選手たちはそれぞれ入念に動きを確認していたが移動や時差が影響して、やや動きにキレがなかったように思われる。
□12月11日(木) 【2日目 本会場練習】
この日は、練習を午前と午後に分けた2部練習を行った。午前練習は合同での体操、ストレッチや体幹トレーニングを行い、その後各自のトレーニングという2時間程度の内容で行った。
午後はスタート種目のあん馬から試合形式の練習を行った。股関節の故障により千葉選手のみあん馬、つり輪の2種目。他の選手は6種目を実施した。WOGAのスクール授業と時間が重なり、跳馬を除いた5種目の試合形式の練習を行い、その後跳馬のみアップ時間をとってからのオーダー練習を行った。数えるほどのミスはあったものの、前日の動きとは違い調子も良く、まずまずの仕上がりをみせた。別に時間をとった跳馬はやや調整に時間がかかったところもあるが、身体的・精神的にも試合に向けてのコンディショニング向上を図ることができた。
□12月12日(金) 【3日目 練習会場練習】
滞在3日目となるこの日は、翌日に試合を控え、練習会場WOGA‐Planoにて3時間程度のフリー練習を行った。試合に向けて、各自不安箇所の最終確認の練習を中心に行った。女性選手が多く所属するWOGA‐Planoでは、男子の競技用器具が使用しにくい面があり、基本的な技術の確認を行った選手が多かった。
□12月13日(土) 【4日目 競技】
19:00からの試合に備えて、朝8:30からホテル前の野球場「ドクターペッパーボールパーク」の周りをランニング、体操、ストレッチを行い、その後朝食を取った。午前中はホテル近くのショッピングセンターで買い物をする選手もおり、比較的時間にゆとりをもって過ごした。ホテルを16:00に出発して“WOGA-Frisco”に移動した。1時間のフリー練習であったが、平行棒のみ各班10分ずつの割り当て練習で行われた。
【第1ローテーション あん馬】
1.髙橋;Eフロップ、Dコンバイン、ループ、マジャール、シバド、1/2前移動、伏臥、Aシュテクリ、交差ひねり 移動、逆リア倒立ひねり下り(Dスコア5.7) 得点14.55 ラストの倒立降りでやや停滞があったが一番手としてまずまずの出来。
2.荒屋敷;シュピンデル、Eフロップ、Dコンバイン、ロス、マジャール、シバド、1/2前移動、伏臥、交差ひねり移動、Aシュテクリ倒立ひねり下り(Dスコア6.1)得点15.00 予定していた馬端下向き1080°転向を抜き、安定感のある演技で確実に通しきった。
3.田中;Eフロップ、Dコンバイン、シュピンデル、マジャール、シバド、Bシュテクリ、逆交差移動、ループ、Aシュテクリ倒立ひねり下り(Dスコア5.7)得点14.60 雄大な旋回で通しきる。倒立下りで力を使った部分での減点が悔やまれる。
4.千葉;逆交差倒立、Eフロップ、Dコンバイン、ロス、横向き旋回でバランスを崩し落下。ループ、とび前移動、シバド、1/2前移動、伏臥、逆リア倒立ひねり下り(Dスコア6.0)得点13.70 逆交差倒立でやや力を使う実施。ここで痛めている股関節に大きな負担がかかり、その後の旋回に影響し落下。当日の練習では非常に調子が良かっただけに悔しい実施だった。
●チーム得点 ;荒屋敷+田中;29.60
【第2ローテーション つり輪】
1.荒屋敷;アザリアン、振りあがり開脚上水平、翻転倒立、ジョナサン、ヤマワキ、振り上がり十字、け上がり脚前挙、プレス倒立、後方車輪倒立経過、ルドルフ(Dスコア5.6)得点14.80 アザリアンでは手首を返した力強い実施、力技の静止時間も十分。着地も決まり実施もほぼ完璧な演技
2.髙橋;け上がり十字、振りあがり上水平、翻転十字倒立、翻転倒立、前方車輪静止、ジョナサン、ヤマワキ、ホンマ十字、後ろ振り上がり脚前挙、シンピ倒立、後方車輪倒立経過、ルドルフ(Dスコア6.0)得点14.50 後ろ振りあがり上水平がやや高くふらつきがあったがその他の力技は静止時間も十分。着地一歩でまずまずの出来。
3.田中;振り上がり脚上挙十字、前振り上がり脚上挙支持、ジョナサン、ヤマワキ、ホンマ十字、振り上がり、脚上挙支持、支持前方振り出し、後ろ振り上がり倒立、後方車輪静止、後方車輪倒立経過、後方抱え込み2回宙返り11/2ひねり下り(スコア5.7):得点14.55 つま先まで意識の行き届いた美しい実施。着地1歩。
4.千葉;ホンマ十字、翻転十字倒立、後ろ振り上がり十字倒立、翻転倒立、前方車輪静止、ジョナサン、ヤマワキ、後ろ振り上がり十字、後ろ振り上がり脚前挙、シンピ倒立、前方車輪倒立経過、前方屈身2回宙返り下り(Dスコア5.9)得点14.30 静止時間も十分、着地も完璧。高得点が期待されたが予想を裏切り点数が伸びなかった。十字懸垂、十字倒立の高さや深い握りについて厳しい評価を受けた可能性がある。
●チーム得点・・・荒屋敷+田中;29.40
【第3ローテーション 跳馬】
1.荒屋敷;アカピアン(Dスコア5.2)得点14.40 着地は両足で一歩
2.髙橋;ローチェ(Dスコア5.6)得点14.70 やや低い着地、後ろに一歩
3.田中;アカピアン(Dスコア5.2)得点13.75 入りに勢いがなく低い着地で一歩踏み出す。ラインオーバー
4.千葉;演技せず。得点0.00
●チーム得点・・・荒屋敷+髙橋29.10
【第4ローテーション 平行棒】
1.髙橋;け上がり脚前挙、シンピ倒立、棒下倒立、モイ、チッペルト、ディアミドフ、車輪、ツイスト、前振り上がり、屈身2回宙返り下り(Dスコア5.3) 得点14.15 肩の故障の影響でDスコアを下げるも確実な実施で着地1歩。まずまずの出来。
2.荒屋敷;ホンマ、ヒーリー、棒下倒立、ディアミドフ、車輪、モイ、チッペルト、Dツイスト、開脚浮き腰上がり倒立、屈身2回宙返り下り(Dスコア6.0)得点14.45 ほぼノーミスの落ち着いた実施で着地1歩。表示された点数が13.45。コーチ陣も驚きが隠せず、確認したところ単純な計算ミスで14.45に訂正。
3.田中;ホンマ、棒下倒立(不認定。深く屈腕して倒立まで上がらずダブルスイング)、車輪モイ、チッペルト、ツイスト、Dツイスト、閉脚浮き腰上がり倒立、屈身2回宙返り下り(Dスコア5.5)得点13.10 終末技も大きく動く。
4.千葉;演技せず。得点0.00
●チーム得点 ;髙橋+荒屋敷;28.60
【第5ローテーション 鉄棒】
1.髙橋;伸身ヤマワキ、け上がり、トカチェフ、後方車輪ひねり大逆手、大逆手車輪、大逆手エンドー、エンドー、エンドー1/1ひねり片大逆手、ホップターン、伸身ルドルフ(Dスコア5.3) 得点14.70 落ち着いた演技で着地1歩。
2.荒屋敷;エンドーひねり、伸身トカチェフ、開脚トカチェフ、ホップターン、ホップターンひねり、エンドー、1回ひねり大逆手、大逆手車輪、大逆手エンドー、伸身ムーンサルト(Dスコア5.4)得点14.75 着地でほんのわずか1歩踏み出すがほぼノーミス。
3.田中;シュタルダー1回ひねり大逆手、アドラー倒立、大逆手車輪、伸身イエーガー、シュタルダー、シュタルダーひねり大逆手、大逆手エンドー逆手持ち換え、エンドー1回ひねり大逆手、前方車輪1回ひねり大逆手、伸身ムーンサルト(Dスコア5.7)得点15.35 着地も止まり非常に美しい実施。ひねり大逆手の技術は素晴らしく、会場から大逆手持ちの度に歓声が上がるほどだった。
4.千葉;演技せず。得点0.00
●チーム得点 ;荒屋敷+田中;30.10 (全体的に非常にEスコアが甘く、Dスコア勝負の種目であった)
【第6ローテーションゆか】
1.髙橋;後方宙返り2回ひねり、後方宙返り11/2ひねり~前方宙返りひねり、後ろとびひねり前方宙返り、前方抱え込み宙返り1回ひねり~伸身前方宙返り、シュピンデルゴゴラーゼ、ゴゴラーゼ、十字倒立、後方宙返り21/2ひねり(Dスコア5.4) 得点14.90 終末技を含むほぼ全コースの着地を完璧に止めた。
2.荒屋敷;前方宙返り21/2ひねり、前方宙返り2回ひねり~前方宙返り11/2ひねり、側方宙返り1回ひねり、下向き1080°転向、十字倒立、後方宙返り2/1/2ひねり~前方宙返りひねり、後方宙返り2回ひねり、後方宙返り3回ひねり(Dスコア6.1)得点15.45 1コース目とラストで小さく一歩。全種目落ち着いた実施で6種目を締めくくった。
3.田中;前方宙返り21/2ひねり、後方宙返り11/2ひねり~前方宙返り2回ひねり、脚上挙支持から伸腕屈身力倒立、倒立前転から閉脚抜き屈身倒立、側方宙返り1回ひねり、後方宙返り2/1/2ひねり~前方宙返りひねり、後方宙返り2回ひねり、後方宙返り3回ひねり(Dスコア6.1)得点15.40 2コース目の着地が低くなりしゃがみこむような実施だったがそれ以外のタンブリングは正確にこなし、ラスト小さく1歩
4.千葉;演技せず。得点0.00
●チーム得点 ;荒屋敷+田中;30.85
□12月14日(日) 【5日目出国】
8:00にチェックアウトし空港へ移動。現地時間11:30にダラス・フォートワース空港から出国。
□12月15日(月) 【6日目帰国】
13時間の飛行時間を経て日本時間15:30に成田空港へ着陸。解団。
■日本の大会成績
団体総合 2位
個人総合 荒屋敷2位、髙橋4位、田中5位、千葉(2種目のみ出場)
種目別 荒屋敷;ゆか優勝/あん馬2位、田中;ゆか2位/鉄棒2位
■総評
4-4-2制のチーム選手権において、日本チームは昨年と同様ウクライナとわずかの差で目標の団体優勝を逃してしまった。連戦の疲労から4種目も大過失がありながら個人総合並びに3種目で優勝を果たしたOleg Verniaievと、落ち着いた演技を続けた個人総合3位のMaksym Semyankiv(2014年世界選手権メンバー)のチーム構成2名で参加したウクライナに対し、4人構成で臨んだ日本はまさに完敗で悔しい結果となった。
日本チームは、エースの千葉選手が4種目演技できなかったことの影響は大きかったが、試合中の雰囲気もよく、チーム全体での大過失もわずか2つ。ベスト2をしっかり揃え合計得点を重ねることができた。その中で、6種目通して常に安定感を携えていた荒屋敷選手、髙橋選手の活躍や、芸術性を高く評価され多くの観客を味方につけた田中選手、コンディションが万全ではない中、意地で演技しきった千葉選手、そして我々コーチ陣にもそれぞれ得るものと反省すべき点が存在する遠征となった。
ワールドカップ連勝中のOleg VerniaievやオリンピックメダリストのDanell Leyvaが大過失を連発する中、日本は非常にミスが少なく、高いEスコアを誇った。しかし、落下があっても15点を楽に超えるメジャー選手と比べ日本選手のDスコアが低く、これが勝敗を大きく分けることになると実感した。日本の「美しい体操」はジュニアナショナル選手にも確実に浸透おり、高い評価を受けたが、最終的にはDスコアの差で僅差の敗北という現実は選手たちの今後に繋がる貴重な経験になった事は間違いない。
また、我々日本選手団は、大会主催側であるWOGA Gymnasticsの関係者の多くの人々の協力によって、現地での移動の送迎や食事、パーティや文化交流活動などを含め、感謝の言葉では言い表せないほどの配慮と待遇を受けた。
大会終了後、成田空港での選手団の解団式では、日本体操協会の強化事業の一環として本大会に参加させていただいた感謝と誇りを忘れず、指導者および今後の日本体操界を担う立場のジュニアナショナル選手全員が、この経験によって得たものを体操界に寄与していくことの意思統一を図った。
最後になりましたが、本大会への参加にあたり、日本体操協会並びにWOGA STAFFをはじめ、多くの関係各位に心より感謝申し上げ報告とさせていただきます。
(報告者 福田道大)