男子ジュニア強化合宿コーチ研修会報告
■期日 平成23年2月26日~2月28日(強化合宿:~3月2日)
■主催 (財)日本体操協会
■目的 体操コーチの指導技術習得及び向上により、全国的な選手強化を図る。最新の情報伝達とプレジュニアトップ層の強化。
■参加者
・強化合宿参加者:強化スタッフ13名、帯同コーチ7名、強化選手20名
・研修会参加者:指導者32名、選手53名
・参加所属名(強化スタッフ・強化選手帯同所属を含む)
JGC、VICスポーツクラブ、おかやまジュニア体操クラブ、グンゼスポーツクラブ、サンスポーツクラブ竜城体操、サンフルトスポーツクラブ、トミオカ体操クラブ、ならわ体操クラブ、レインボージムナスティックス大潟、刈谷豊明体操クラブ、京都スイトピア体操クラブ、玉川体操クラブ、健伸スポーツクラブ、高島平体操教室、四天王寺スポーツクラブ、水沢南ジュニア体操クラブ、水鳥体操館ヒカリ、清水ペガサス体操クラブ、大阪体操クラブ、大泉スワロー体育クラブ、池谷幸雄体操倶楽部、中京ジムナスティッククラブ、姫商ジュニア体操クラブ、鯖江高校、関西高校、朝日生命体操クラブ、中京高校、伊奈学園総合高校、山口県立豊浦高校、ソニアスポーツクラブ、日体スワロークラブ、大宮東体操クラブ、慶応義塾高校、桐朋中学・高校、大社クラブ、沼津市ジュニア体操教室、開星中学校、山口県体操協会
■レポート
[一日目]
○開講式
合宿・研修会参加者にジュニア強化指針等の内容、今後の日本国内のジュニア強化の必要性、また指導者における共通意識を持つことにより指導レベルの向上を目的としていることを説明した。同時に、味の素NTC施設利用についての説明も行った。
○講習
・ウォーミングアップ
はじめに強化選手は練習、研修参加者は講習に分かれ開始した。ここ数年、継続し改良を加えながら、強化合宿で一貫したウォーミングアップ方法の確立に取り組んできた。これは、ストレッチ、柔軟、簡単なトレーニングまでを含んだものであり、細かい部分での身体の動き、関節可動域の幅をひろげ、美しい雄大な体操を目的として行っているものであり、怪我の予防にもつながる内容となっている。所属の環境や様々な理由で、こうしたウォーミングアップの時間が十分に取れなかったりすることもあるのだが、現状の体操競技を考えると、ウォーミングアップは非常に大切なものであり、ジュニア期のうちから、アップの大切さをしっかりと学び、自身で行えるようになってもらいたい。講習できなかった部分もあるが、現在、強化合宿で行っているものを、ひとつひとつ細かな説明を入れながら時間をかけて講習をおこなった。
参加の先生方も熱心にビデオやメモをとりながら、緊張感のある講習が始まった。
・トレーニング(体幹トレーニングを中心に講習)
この体幹トレーニングは、強化合宿の朝練の段階で取り入れているものである。各種目、各技の基本となる非常に重要な部分であり、どの技を考えてもたどりつくところはこの体幹であるといっても過言ではない。そのため、さまざまな種類のものを行ってしっかり強化し、講習では形だけにならず細かな身体の部分まで意識して動かせるよう、時間をかけて一人一人行った。
・技術練習
指導者間で意見交換を交えながら、強化選手とともに約2時間の技術練習を行った。
・ビデオ講習(18:00~20:00)
本日のウォーミングアップのビデオをもとに個々の動きの確認と質疑応答。また、体操におけるバイオメカニクスについて講義を実施した。これは、二日目に実施予定の、「ひねりと蹴り方の講習」の導入となっているため、共通言語としてしっかりと理解してもらいたい部分でもあり時間を十分にとった。
[二日目(8:00集合)]
○講習
ウォーミングアップの前に柔軟講習を行った。肩、股関節、胸等各部位を色々な方法で行った。やはり、高校生になり柔軟性が欠けてきている選手が多くみられた。しかし、年齢に関係なくしっかり取り組み、競技力向上のためだけではなく、怪我の予防も含めあきらめず毎日行ってもらいたい。
・前方、後方系のひねりの技術とけり方の講習
昨日行った全体トレーニング後、強化選手は基本技練習へ、研修参加者はタンブリング・トランポリン等を使い、ひねり技術の講習をおこなった。このひねり技術は、昨日ビデオ講習で行った、体操競技におけるバイオメカニクスの考えを利用した技術である。非常に難しい部分もあり、選手はかなりの本数をかけて練習をおこなった。指導者も自身理解するまで、身振り手振り体を動かし考え、たくさんの質問もとびかった。前方、後方系で、午前中約2時間の講習となった。
・技術練習
午後からは強化選手、研修参加者合同で、年齢別に分けた班で、それぞれの年代に応じた課題に取り組む練習を40分ローテーで行った。小学生から高校生まで選手70数名という大人数ではあったが、ナショナルトレーニングセンターという素晴らしい施設の全ての器具を使い、不自由なく練習を行うことができ、充実した講習となった。
また、この時間帯、ドイツインターナショナルチームカップに派遣する4選手の試技会を実施した。全国代表審判研修会を終えたばかりの審判部の先生にご協力頂き、有意義な試技会となり、選手それぞれに細かなアドバイスを頂いた、
・ビデオ講習(指導者)
ゆか・跳馬における段階練習
昨日の体操におけるバイオメカニクスの理論にそった段階練習のビデオ講習をおこなった。
[三日目(8:00集合)]
○講習
この日は最初から強化選手・研修参加選手合同で班編成を行い、ウォーミングアップから合同練習による講習を開始した。各班に強化スタッフを振り分け、研修会受講の指導者とともに選手の補助をしながら、アップからトレーニングまでをこなした。その後10:00~12:00まで、毎回強化合宿で行っている各種目の基本技練習を、先ほどの班で行った。この講習会ではじめてこのようなトレーニングを行った参加選手にとってはかなりハードなものになったと思うが、強化選手とともに行うことにより次の強化課題がしっかりと見つけられたのではと考える。強化選手はこの後、昼食をとり午後の合宿練習に備えた、また研修参加者は引き続き14:00まで練習を行った。
○閉講式(14:00)
強化部を代表して松本副部長より挨拶。
強化合宿練習(~3月2日まで)
午後からは、強化選手の合宿トレーニングメニューを開始した。強化合宿では午後の練習開始時に全体でのW-UPをおこない、全体でゆかのタンブリングと、跳馬の技術確認をおこなう事を統一したメニューとしている。ひねり技術の確認とあわせ、ゆかのビックタンブリング習得と、跳馬跳躍の雄大性を身につけるため全員でとり組んでいる。終了後各自の課題練習とした。また3月1日午後の練習において、ドイツ派遣者のチェックをおこなった。
今回は、強化選手は高校2年生以下の年代で実施した。合宿の前半部分で、研修会が開催され、強化選手はテストパイロットとして受講者に見られているという緊張感をもっていた。これにより、受講者とともに、これまで強化合宿等で実施してきた内容を、再認識する良い機会となったと感じる。残り1ヶ月で高校選抜大会が開催されるなど、2011シーズンが始まるが、合宿で提起された課題の克服を含め、十分にコンディショニングをおこなって、競技会シーズンに望んでほしい。
■総括
今回の研修会は、今まで行ってきた東西指導者講習会とは違い、強化合宿にあわせ、強化選手との合同でのコーチ研修会の実施であり、強化部にとってもはじめてのこころみであった。
我々、強化スタッフも、研修会参加者は自費参加ということもあり、どれだけの参加者が集まるのか未知数のところであった。しかし、全国から本当に多数の受講希望があり、残念ながら希望者全員の参加というわけにはいかなかったが、参加者だけでなく、全国の先生方の体操に対する熱意を感じることができた。講習自体も研修参加の先生方の真剣な取り組みのおかげで、受講選手のみならず、強化スタッフ・強化選手にも緊張感のある、良い研修会となった。また、一方的な伝達講習にならず、参加された先生方が所属で行っている練習方法も紹介してもらい、それを強化合宿に組み入れるなど、有意義な相乗効果となって3日間の講習を終えることができたと感じる。このように、常に現状に満足せず、よりよいものをもとめ続けるこの姿勢が、現在の日本のジュニア強化の姿であり、それがジュニアの発展さらには日本体操界の発展につながると強く信じている。今後も、引き続きこの研修会を継続させ、よりよい講習にしていきたいと考える。
今回の講習内容においてウォーミングアップ・柔軟・トレーニング・基本練習・ひねりの技術・ゆか、跳馬の導入と講習を行ってきたが、もちろんこれが100%のものでもなく、もっともっと進化していけると考える。こういった合同のコーチ研修・合宿を行うことによって選手のみならず指導者も新たな刺激をうけ、また所属においてさらなる飛躍のため持ちかえったものをよりよいものに進化させていただきたい。
また、二日目にはロンドン強化本部より立花泰則本部長、コナミスポーツ加藤裕之コーチ佐藤寿治コーチ、JOC専任冨田洋之コーチ、徳洲会体操クラブ水鳥寿思選手が視察に訪れ、直接指導や講話をして頂いた。
最後になりましたが、今回の講習開催にあたり、ご協力いただきました日本体操協会をはじめ、関係各位に感謝申し上げ報告といたします。