2012チェコ国際報告
1.派遣期日:2012年11月20日(火)~11月26日(月)
2.開催場所:チェコ・オストラバ
3.参加者:
<コーチ>原田睦巳(大学生強化部長・順大)/畠田好章(大学生強化部員・日体大)/大川和行(アンチドーピング医科学委員会委員)
<選手>久永将太(順大)/垣谷拓斗(順大)/瀬島龍三(日体大)/武田一志(日体大)
<審判>大谷一司(審判委員会男子体操競技部員)/三富洋昭(審判委員会男子体操競技部員)
4.報告
1)現地での調整
11月20日正午過ぎに成田を出発し、プラハまでは順調な移動であったが、プラハからオストラバまでのフライトがオストラバの天候不良によりフライトがキャンセルとなってしまった。代替輸送のシャトルバスでプラハ空港を日付が変わった21日0時30分ごろに出発し、開催地であるチェコ・オストラバのホテルに到着したのは、現地時間で21日の6時前であった。2008年に今大会に参加した時にも同じ状況になり、大変な苦労を経験した記憶があるが、今回はそれにも増して多大な時間を要しての移動となった。今後、今大会に参加する際は移動方法の再検討が必要であると考えられる。現地は事前の情報通り気温が低く、0℃前後の気温であった。
組織委員会の準備した大会期間は翌日の11月22日からとなっており、事前に乗り込んだ日本を含む諸外国チームが練習出来ない状況であった。近隣クラブにての練習が可能とのメモがあったが、昨年度行ったジュニアクラブであり、そこではフロアのみしかなく、ストレッチのみの実施であったため、あえてその場への移動は行わず、ホテル内のミーティングルームを借用し、何とか軽く体を動かすことができた。選手たちは軽くストレッチ・トレーニングを行い、明日の本会場練習に万全を期す準備を整えていた。
翌日、11月22日(木)は本会場練習を行った。会場は昨年度とは異なり、2008年時に開催されたCEZARENAで行われた。この地域のメインアリーナのようで大きなアリーナで、普段はアイスアリーナとして使用している場所であった。器具はポディウムに設置されており、立派な雰囲気を持っていた。練習自体は男女同時に練習を行っていたが、練習時間が10:00~19:00までと非常に多く時間が設けてあることから混雑はなかった。選手たちは前日に練習が行えていないこともあり、実際に競技を行う器械・器具に慣れるために積極的に練習を行った。
2)競技初日(予選)
<ゆか>
■瀬島龍三
せノーのゆかとは異なり、反発性が乏しいことから、演技価値点を下げての実施であった。しかし、ひとつひとつの着地を非常に丁寧にまとめ、非常に良い実施であった。
結果、14.600で6位となり、無事予選を通過することができた。
D得点5.8E得点8.800決定点14.600
■久永将太
1節目の屈身ダイビング前宙ダブルで尻もちを着く。その後も前方2/1ひねり~前方かかえ込み宙返り1回ひねりが実施できず尻もちをついてしまい、予選を通過することができなかった。
D得点5.3E得点7.100決定点12.400
<あん馬>
■垣谷拓斗
第1グループの1番目の演技者ということもあり、プレッシャーのかかる状況であったが、非常に良い実施であった。旋回のスピードもあり、スムーズな実施であった。
結果、14.750で6位となり、予選通過を果たした。
D得点6.0E得点8.750決定点14.750
■武田一志
演技前半は良かったが、Dコンバインの実施後旋回が不安定になり落下。その後はスムーズな演技であったが、結果的に13.000で、予選を通過することができなかった。
D得点5.7E得点7.300決定点13.000
<つり輪>
■久永将太
力技の収めが若干中途半端な面もあったが、スイング系の技を丁寧に実施し非常に良い実施であった。
結果、14.700で、6位となり、無事予選を通過することができた。
D得点6.1E得点8.600決定点14.700
■武田一志
全体的に非常に良い実施であった。着地も止めて、15.300で3位となり、予選を通過した。
D得点6.3E得点9.000決定点15.300
<平行棒>
■武田一志
ドミトリェンコの腕支持への受けが窮屈な態勢となったが、その後の演技をしっかりまとめ、全体的には良い実施であった。
結果、14.700で5位となり無事予選を通過することができた。
D得点5.9E得点8.800決定点14.700
<鉄棒>
■武田一志
コバチが近くなり、窮屈な印象を与えたがその後の演技は非常に良かった。終末技の伸身サルトも着地を止め、全体的に非常に良い実施だった。
結果、15,150で同点1位となり無事予選を通過することができた。
D得点6.5E得点8.650決定点15.150
3)決勝競技
ここでは日本選手が出場した種目のみの報告とする。
<ゆか>
■瀬島龍三
予選と同様に非常に丁寧な演技を実施した。予選とは異なり、側方系の技をC難度に上げて演技を行った。最後の後方宙返り3回ひねりの着地が動いてしまったのが悔やまれるが、他の選手との接戦を制し、見事優勝を飾った。D得点5.9E得点8.950決定点14.850
<あん馬>
■垣谷拓斗
予選時と同様に非常にスムーズでスピード感のある演技を実施した。予選とは異なり、ウ・グゥオニャンを実施し、演技価値点を挙げて演技を実施した。結果、15.150で見事に銅メダルに輝いた。D得点6.3E得点8.850決定点15.150
優勝は、LIKHOVITSKIYAndrey(BLR)であった。Dスコアは6.4と決して突出して高いわけではないが、安定感のある美しい演技でEスコア9.000の高評価を得ての優勝であった。
D得点6.4E得点9.000決定点15.400
<つり輪>
■久永将太
昨日の予選時とは異なり、演技価値点を上げて望み、内容もほぼ完璧な演技を実施した。終末技の着地で小さく動いたが、他はほぼ完璧であった。結果、15.025で5位という結果であった。やはりDスコアの差が如実に表れた結果であった。
■武田一志
予選時と同じ演技内容であったが、屈身ヤマワキで輪の抑えがうまく抑えられず、ヤマワキが窮屈な状態で、ホンマ十字懸垂がかなり低く我慢の演技となった。着地も手を着いてしまい残念な結果であった。
D得点6.3E得点7.650決定点13.950
優勝はPETROUNIASELEFTHERIOS(GRE)、ロンドンオリンピック金メダリストのZANETTIArtur(BRA)を抑えての優勝であった。力技の静止時間・姿勢ともに文句ない実施であった。
D得点6.8E得点9.050決定点15.850
<平行棒>
■武田一志
演技順は1番で決して良い演技順ではなかった。演技の前半、予選と同様にドミトリェンコでの腕支持の受けが窮屈な状態となってしまった。その後は無難に演技をこなし、屈身ダブルの着地も小さく1歩にまとめた。結果、14.600で5位となった。D得点5.9E得点8.700決定点14.600
優勝はVERNIAIEVOleg(UKR)、演技価値点が高く、内容も若干粗い部分もあったが、終末技の前方かかえ込み2回宙返りひねりを決め、優勝をもぎ取った。D得点6.7E得点8.750決定点15.450
<鉄棒>
■武田一志
今大会最終の種目となった鉄棒、武田は4番目に演技を行った。アドラー1回ひねり倒立~伸身コスミックの連続技時にアドラー1回ひねりで戻ってしまい、組み合わせ加点得られない結果となった。終末技の着地も大きく前に出てしまい、14.500で銀メダルを獲得した。予選トップで通過しており、しかも点差が0.050、着地が悔やまれる結果であった。D得点6.3E得点8.200決定点14.500
優勝はDEURLOOBart(NED)、同点トップの通過者が優勝を飾った。武田の演技を見て、急遽予選では行っていたカッシーナを実施せず、安全策での優勝であった。D得点6.0E得点8.550決定点14.550
5.総評
今大会は、通常ナショナル強化選手の中から派遣される大会を23年度からの協会組織改編により、一貫制強化の一環として大学生強化から派遣を行い、より実践的な経験を積ませ、今後の成長を促すことを目的の一つとして派遣を行った。全日本選手権が終了し、1年間のサイクルが終了した中での競技会であり、通常、来年度に向けて演技構成再構築や、様々な面での強化期間にあたる中での競技会であった。
今大会は全体を通じて3個のメダルを獲得することができ、日本の競技力の高さを改めて見せ付ける結果となった。また実施においてやはり諸外国と比較すると群を抜いて高い実施であることが顕著であった。ロンドンオリンピックが終了し、すべての国が次回のリオ・オリンピックに向けて新たな強化に着手しており、今大会も積極的に若手の強化に各国が着手している印象を受けた。今大会はワールドカップへの登竜門として、今後活躍が期待される選手が多数参加しており、中には高いDスコア、Eスコアを有した選手も存在した。今大会に参加した日本の若手選手に関しても、今大会を通じてより高い競技力を有することができるように貴重な経験を得て帰国してもらいたい。
毎回のことではあるが、運営について不十分な中、どんな状況下においても実力を発揮できる「タフさ」の必要性を選手自身が再認識することができた大会であろう。このような貴重な経験を更なる競技力向上に活かしてもらうことを切に期待して今大会の報告とする。