リューキンカップ報告
■遠征期間 平成23年12月6~12日
■場所 アメリカ テキサス州・ダラス WOGAジムナスティックアカデミー
■選手団
<監督>梅本英貴(日本体操協会 強化部員、清風高)
<コーチ>谷田治樹(鯖江高)丁琦(KRM体操センター)吉野僚祐(市立船橋高)
<選手>古谷嘉章(清風高)/今林開人(市立船橋高)/岡準平(鯖江高)/鈴木湧(KRM体操センター・栗東高)
■大会概要
リューキンカップは、レベル4~10.エリートと競技クラスが分けられ、3日間の競技日程で開催されている。日本はジュニアナショナル強化選手より6年連続の派遣となった。今年のエリートクラス(シニアの部)は日本、アメリカ、ウクライナ、カナダからの4カ国27名が出場した。参加選手として」はアメリカのJohn Orozco(2011年世界選手権東京大会団体3位メンバー)ウクライナのOleg Verniaev(2011年世界選手権東京大会団体5位メンバー)、各国のナショナル選手やジュニアナショナル選手が参加しているため、毎年レベルの高い大会となっている。日本チームは、昨年にも今大会に出場した岡、国際大会初出場の古谷、今林、鈴木の高校上位選手でチームを構成し2年連続団体総合優勝を目標とした。競技方法は1回の試合で団体総合(4-2制)、個人総合、種目別を競う大会である。しかしながら、今林は、出発2日前に腰を負傷してしまったため、現地で別メニューで試合にむけて調整を行うこととなった。
■競技レポート
12月5日夕方からの試合であるが選手たちの考えで朝8時よりランニングと軽い体操を行い、試合に向けて気持ちを高めた。16:00試合会場到着後、急遽、会場練習の予定が変更され10分間ローテーションでなく、1時間のフリー練習となった。15分間のオープニングセレモニーでは、DJによる各参加選手全員、コーチ等で参加しているオリンピックメダリストを紹介。続いて、歌手によるアメリカの国歌斉唱が行われ、アメリカらしい演出で会場全体が盛り上がり、日本とは違った試合前の雰囲気に包まれた。競技の班編成は、日本人選手3名のみで跳馬からのスタートであった。試技順は、昨年度は全て主催者側で決められていたが、本年度は各チームで決めるよう指示があった為、2年生の鈴木が1番、3年生の古谷が2番、岡がラストという固定演技順で競技を進めていった。なお、今林は、大会出発前に痛めた腰の調子が改善されないため、残念ながら棄権という判断をとった。
【第1ローテーション 跳馬】
(鈴木)アカピアン 15.75
(古谷)アカピアン(1技目) 15.10
ユールチェンコ2/1跳び(2技目) 14.40
( 岡 )ドゥリックス(1技目) 15.60
伸身クエルボ1/1跳び(2技目) 15.45
1番手の鈴木がアカピアンで着地を小さく後ろに1歩と完璧の跳躍をしチームに良い流れをつくった。古谷は1本目のアカピアンを前に1歩でまとめまずまずの出来であった。種目別を狙った2本目のユールチェンコでは惜しくも両手を突いてしまった。岡は1技目のドゥリックスを着地1歩でおさえる実施でチーム得点31.35となかなかのスタートを切ることができた。種目別では2本の跳躍を確実に成功させた岡が見事に優勝することができた。
【第2ローテーション 平行棒】
(鈴木)棒下ひねり、棒下、車輪、ベーレ、チッペルト、ヒーリー、ツイスト、屈身ダブル 14.90
(古谷)棒下ひねり、棒下、車輪、モイ、チッペルト、ツイスト、Dツイスト、屈身ダブル 14.55
( 岡 )棒下、ライヘルト、モイ、チッペルト、モリスエ、ツイスト、開前宙腕、屈身ダブル 14.10
鈴木がチッペルトの後の倒立で若干の肘を曲げる動作があるも大した減点にはならず、高得点。古谷はチッペルトで後ろにかかり少し停滞が見られたが、他はしなやかで流れのあるいい演技で最後まで通しきった。岡は棒下倒立で危ない場面もあったがしっかりと粘り、着地まで止めたが得点を伸ばしきれなかった。
【第3ローテーション 鉄棒】
(鈴木)伸トカチェフ、トカチェフ、ホップ、ホップ1/2、1/1大逆手、アドラー、伸身ルドルフ 14.10
(古谷)カッシーナ、コールマン、ホップ、ホップ1/2、1/1大逆手、大逆手エ、エ1/1片、伸身サルト 15.35
( 岡 )アドラー1/1‐ヤマワキ、シュ1/1大逆手、アドラー1/2、伸トカチェフ、ホップ、コールマン、シュ1/1、ホップ1/2、伸身ルドルフ 15.60
不安種目である鉄棒だが、鈴木が演技を最後まで確実に実施し良い流れをつくった。続く古谷が、カッシーナ、コールマンを見事に成功させると、会場が大きな歓声に包まれ、盛り上がりをみせた。着地も決める見事な実施で高得点を出した。流れに乗った岡も、Dスコア6.7という非常に高い演技を最後の着地まで決める完璧な実施でさらに高得点を出す。チーム得点が31.95と素晴らしい内容で、チームの雰囲気もいい状態で後半種目へ移動することができた。種目別では高難度の技が評価され、岡が優勝、古谷が2位と素晴らしい結果であった。
【第4ローテーション ゆか】
(鈴木)ルドルフ、後5/2-前1/1、ダイブ~前1/2、後3/2‐後3/2、後3/1 15.15
(古谷)前1/1-前2/1、後3/2-前3/2、ダイブ~前1/2、後2/1、後5/2 14.35
( 岡 )ダイブダブル1/2、前1/1-前2/1、後3/2-前3/2、後5/2-前1/2、後2/1、フェドル、後3/1 15.35
鈴木は、終末技で着地が2歩動いてしまうも、他の技では確実に着地を決めて高得点を出した。古谷は、大きな失敗はなかったが、全体的に着地が乱れてしまった。最後の岡は、第1節で着地が乱れラインを出てしまいそうになるが我慢してこらえた。その後の演技は着地を終末技まで決めていく素晴らしい実施であった。種目別では、岡が優勝、鈴木が2位という素晴らしい結果を出すことができた。
【第5ローテーション あん馬】
(鈴木)Eフロップ、Dコンバイン、前移動、シバド、終末技D 11.60
(古谷)セアひねり倒立、Dフロップ、Dコンバイン、トンフェイ、前移動、シバド、終末技D 12.40
( 岡 )シュピンデル、Dコンバイン、Eフロップ、マジャール、シバド、終末技D 13.65
あん馬は練習から失敗が目立っていた1番の不安種目であった。鈴木は、スタートのEフロップで落下、終末技では技が成立しない失敗をしてしまった。続く古谷も失敗ができない状況の中、粘り強く演技を実施していくも、スーパーコニシで落下。終末技も倒立が上がらず、この悪い流れを断ち切れなかった。最後の岡も、まさかのDコンバインで落下。しかし、その後は落ち着いて確実に演技をこなし、なんとか得点を大きく下げずにあん馬を終了することができた。全選手が大過失をだしてしまい、団体総合優勝を争う中での、痛い失敗となってしまった。
【最終ローテーション つり輪】
(鈴木)振開脚上水平、ヤマワキ-ジョナサン、前車輪‐屈前方ダブルハーフ 14.35
(古谷)アザリアン、振十字倒立、ヤマワキ-伸ヤマワキ、ジョナサン‐前車輪‐屈前方ダブル 14.10
( 岡 )アザリアン、振開脚上水平、ジョナサン-ヤマワキ‐ホンマ十字、後車輪、ルドルフ 14.30
最終種目のつり輪では、1番の鈴木が着地を確実に決める減点の少ない実施で好スタートをきれた。古谷は、途中の伸身ヤマワキで回転が若干止まってしまうも着地までしっかりまとめた。最後の演技者である岡は、団体・個人総合と優勝のかかる緊張の中、最後まで安定した演技で着地までしっかり決めた。良い内容で最終種目を終えることができた。
■総評
結果として、2位のアメリカと4点以上の差をつけて目標であった団体総合優勝を見事達成出来た。これはチーム3名という厳しい状況の中で、選手・コーチ全員がひとつになり、スタート種目の跳馬から最終種目のつり輪まで集中を切らさず、いい雰囲気で演技できた結果である。また途中のあん馬では3選手ともに大過失があったものの、諦めることなく、高校生らしく全員でしっかり声を出しあった。今林を含めた選手全員が海外の独特な会場の雰囲気を楽しみながら勝利したことは素晴らしい光景であり、貴重な経験となった。また、日本の美しく正確な体操は年齢に関係なく、世界に通じるものであり高評価を得た。しかし、外国選手の他を圧倒するようなダイナミックな演技は常に観客を魅了し、今後日本人も身につけなければいけないものであると感じた。今大会では、団体・個人・種目別で5つの金、2つの銀を獲得という最高の結果で試合を終えることができた。その中でも個人総合優勝の岡は常に器具の対応や生活、行動、試合運び等すべてにおいて他の日本選手よりもゆとりが見られた。これは、彼のこれまでの海外遠征での経験がなすものであり、改めて経験の大切さを感じた。このような経験は日本体操協会による熱心なジュニア強化のおかげであり、今後、選手たちが将来オリンピック・世界選手権など日本代表として活躍していく時に多いに役立つものであると考える。このジュニア強化体制に大変感謝するとともに今後のさらなる強化を希望し報告とする。
最後になりましたが、本大会参加にあたり日本体操協会、WOGAをはじめ多くの関係各位に心より感謝申し上げます。