2011チェコ国際報告

報告者:

1.派遣期日 2011年11月29日(火)~12月5日(月)
2.場所 チェコ・オストラバ
3.参加者
コーチ:原田睦巳(大学生強化部長・順天堂大学)、畠田好章(大学生強化部員・日本体育大学)、中島啓(アンチドーピング医科学委員会委員)
選手:今井裕之(順天堂大学)、若林裕樹(日本体育大学)、小林亮介(日本大学)
審判:大谷一司(審判委員会男子体操競技部員)、笠松昭宏(審判委員会男子体操競技部員)
JISSマルチサポート:熊谷慎太郎、山崎将幸、大坂則之
4.競技会場 WINTER STADIUM SAREAZA(ZIMNI STADION SAREZA)
5.練習会場:同上
6.宿 泊 先:Clarion Congress Hotel Ostrava
7.日程:
11月29日(火)日本出発、チェコ到着
11月30日(水)練習(地方クラブ練習)
12月1日(木)本会場練習
12月1日(木)オリエンテーションミーティング
12月2日(金)予選競技
12月3日(土)決勝競技
12月4日(日)チェコ出発
12月5日(月)日本着
8.現地での調整
 11月29日正午過ぎに成田を出発し、開催地であるチェコ・オストラバのホテルに到着したのは、現地時間で29日の23時過ぎであった。事前の情報通り気温が低く、0℃前後の気温であった。オストラバ空港到着時に今井選手のスーツケースが届かないアクシデントに見舞われた。
翌日(30日(水))の練習において早速トラブルに見舞われた。組織委員会の準備した大会期間は翌日の12月1日からとなっており、事前に乗り込んだ日本を含む諸外国チームが練習出来ない状況となった。朝食時にアルゼンチンチームと一緒になり種々方策を話し、近くの体操クラブにて「ストレッチくらいなら」という了承を頂き、何とか軽く体を動かすことができた。事前に入るチームがあることについて組織委員会は把握出来ているはずであり、その対応の杜撰さが顕著であった。今後の改善を求めたい。選手たちは軽くストレッチ・トレーニングを行い、明日の本会場練習に万全を期す準備を整えていた。
 12月1日(木)の練習は本会場練習を行った。会場自体はさほど大きくはなく、普段はアイスアリーナとして使用している場所であった。男女同時に練習を行っていたが、練習時間が10:00~19:00までと非常に多く時間が設けてあることから混雑はなく、むしろ日本のみが練習している時間帯が大半であった。選手たちは前日に練習が行えていないこともあり、実際に競技を行う器械・器具に慣れるために積極的に練習を行った。
試合会場(WINTER STADIUM SAREAZA)
9.競技初日(予選)
<ゆか>
■小林亮介
 前半は無難に演技を行ったが、脚上挙支持で支持しきれず後方に落下。その後も側方宙返り1回ひねりにおいて、ひねりが実施できず後方宙返りと認定された。結果、12.050で22位となり、予選を通過することができなかった。D得点4.6E得点7.450決定点12.050
■若林裕樹
 実施は非常に良かったが、ダイビング前宙で尻もちを着く。終末技の後方5/2ひねりでも尻もちをついてしまった。結果、12.450で20位となり、予選を通過することができなかった。D得点5.4E得点7.050決定点12.450
<あん馬>
■小林亮介
 全体的に非常に良い実施であった。旋回のスピードもあり、スムーズな実施であった。結果、14.600で2位となり、予選通過を果たした。予断ではあるが、チャレンジャーカップ・スロベニア大会では、背面とび3部分移動下向き半転向支持(スーパーコニシ)がB+Aという判断がカラチョーニFIG技術委員によってなされたが、今大会では、D難度の認定がなされた。今後どのような統一見解がもたれるか動向を見守りたい。D得点5.8E得点8.800決定点14.600
■若林裕樹
 演技最初の交差倒立で支えきれずに落下。その後、フロップでも落下し、大きく点数を下げてしまった。Dスコアのカウントが曖昧だったため、高いDスコアで認定されたが、結果的に12.750で21位となり、予選を通過することができなかった。D得点5.7E得点7.050決定点12.750
<つり輪>
■若林裕樹
 力技主体の演技が多い中、スイング系の技を丁寧に実施し非常に良い実施であった。結果、14.600で、6位となり、無事予選を通過することができた。D得点5.7E得点8.900決定点14.600
■今井裕之
 全体的に非常に良い実施であった。着地が若干前がかりになったが、審判からの評価も高い非常に良い実施であった。結果、15.400で2位となり、予選を通過した。D得点6.1E得点9.300決定点15.400
<平行棒>
■今井裕之
 全体的に倒立位への収めが甘い実施ではあったが、他の選手と比較すると突出した良い実施であった。結果、15.450で2位となり無事予選を通過することができた。D得点6.2E得点9.250決定点15.450
■若林裕樹
 全体的に非常に良い実施であったが、チッペルトの後で若干姿勢が崩れてしまった。それ以外は良い実施だったが、結果14.700で10位となり、リザーブ2となった。D得点5.7E得点9.00決定点14.700
<鉄棒>
■小林亮介
 コールマン、コバチが非常に近くなり、窮屈な印象を与えたがその後の演技は非常に良かった。しかし終末技の伸身サルトで前に手をついてしまった。全体的に良い実施だったがこの影響が響き、13.450で13位となり予選を通過することができなった。D得点6.0E得点7.450決定点13.450
■今井裕之
 演技自体は非常に良かった。終末技で前に大きく動いてしまった。膝を着く寸前の着地であったが、全体的な評価が高かったためか14.950で2位となり、無事予選を通過することができた。D得点6.4E得点8.550決定点14.950
10.決勝競技
ここでは日本選手が出場した種目のみの報告とする。
<あん馬>
■小林亮介
 予選時と同様に非常にスムーズでスピード感のある演技を実施した。若干、とび交差移動時に詰まった印象はあったが、その他はほぼ完璧の実施であった。結果、14.550で4位と0.250の僅差で見事に銅メダルに輝いた。D得点5.8E得点8.750決定点14.550
 優勝は、BERTONCELI Saso(SLO)であった。本来Dスコア6.5前後の演技を実施する選手であるが、競技の流れを見て、安全に演技を行った。旋回にスピード感の演技を実施し、僅差で優勝した。D得点6.0E得点9.025決定点15.025
<つり輪>
■若林裕樹
 昨日の予選時と変わらない安定した演技を実施した。終末技の着地で小さく動いたが、他はほぼ完璧であった。結果、14.450で6位という結果であった。やはりDスコアの差が如実に表れた結果であった。
■今井裕之
 若林同様に予選時と同じく安定した演技を実施した。若干後ろ振りあがり開脚上水平で足先が動いたのが悔やまれた。着地もかなり意識して止めに行ったが前に小さく動いてしまった。しかし、予選から通じてEスコアを2日間とも9点台に乗せる素晴らしい実施で、15,150という高得点を獲得し、見事銀メダルに輝いた。D得点6.1E得点9.050決定点15.150
 優勝はPETROUNIAS ELEFTHERIOS(GRE)、スロベニア大会と同様に非常に力強い演技で、力技の静止時間・姿勢ともに文句ない実施であった。しかし今回は力技のグリップを大きく減点されている印象を受けた。D得点6.8E得点8.650決定点15.450
<平行棒>
■今井裕之
 予選で2位通過をしており、演技の内容次第では優勝がかかる種目であった。演技順は1番で決して良い演技順ではなかった。演技の前半、棒下ひねり倒立で若干倒立位から外れてしまったが、その後はほぼ完ぺきな演技であった。屈身ダブルの着地も小さく1歩にまとめ、15.325、残りの演技者を待つ形となった。優勝候補筆頭のPetkovsek(SLO)がまさかの屈身ダブルで尻もちを着き、結果安定した演技を行った今井が見事に金メダルを獲得した。D得点6.2E得点9.125決定点15.325
<鉄棒>
■今井裕之
 今大会最終の種目となった鉄棒、今井は7番目に演技を行った。予選では行わなかったアドラーひねり倒立~伸身トカチェフを実施したが、伸身トカチェフで脚をバーにぶつけてしまった。その後は持ち直し何とかこらえながら演技を行ったが、Eスコアを大きく下げ、結果14.500で銅メダルであった。通常通りの演技であれば十分に金メダルを獲得する可能性があったため悔やまれる結果となった。D得点6.6E得点7.900決定点14.500
 優勝はTSARAVICH Aliaksandr(BLR)、旧ソ連の体操を受け継いだような非常に美しい演技で会った。Dスコアも6.7と高く、終末技の後方3回宙返りの着地のみ危なかったがそれ以外はほぼ完ぺきな演技で会った。D得点6.7E得点8.475決定点15.175
12.総評
 今大会は、チャレンジャーカップ・スロベニア大会に続き、通常ナショナル強化選手の中から派遣される大会を23年度からの協会組織改編により、一環制強化の一環として大学生強化から派遣を行い、より実践的な経験を積ませ、今後の成長を促すことを目的の一つとして派遣を行った。
 全日本選手権が終了し、1年間のサイクルが終了した中での競技会であり、通常、来年度に向けて演技構成再構築や、様々な面での強化期間にあたる中での競技会であった。
 今大会は全体を通じて4個のメダルを獲得することができ、日本の競技力の高さを改めて見せ付ける結果となった。また実施においてやはり諸外国と比較すると群を抜いて高い実施であることが顕著であった。
毎回のことではあるが、運営について不十分な中、どんな状況下においても実力を発揮できる「タフさ」の必要性を選手自身が再認識することができた大会であろう。今大会に出場した選手達においては、このような貴重な経験を更なる競技力向上に活かしてもらうことを切に期待して今大会の報告とする。
以上
※この事業は、(独)日本スポーツ振興センター・競技強化支援事業としての助成金交付に基づき活動を行っている。