第26回ユニバーシアード体操男子個人総合現地レポート

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団体戦において個人総合上位24名の選手が4名ずつ6班に分かれて行われた男子決勝。日本の瀬島、山本(翔)の他に、中国のLIU、カナダのGAFUIK、更に団体戦でミスがあり第1班に入れなかった昨年の世界選手権個人総合4位のウクライナのKUKSENKOVなど、実力の拮抗した争いが予想された。
第1ローテーション、第1班はゆかで、まず瀬島が着地で細かく動いていたものの減点を最小限に抑えて15.000をマーク。LIUは最後の後方2回半ひねりで弾かれてしまい、得点を伸ばせず、そして山本も後方1回半~前方1回半のシリーズの着地がやや前のめりの低い着地で同じく得点を伸ばせなかった。第2班のあん馬では、団体戦で落下したKUKSENKOVが好調な演技を見せて14.900をマークした。しかしトップに立ったのは第4班の跳馬で順当に点を出したカザフスタンのGORBACHEV。瀬島は2位につけた。
第2ローテーション、第1班はあん馬で、最初のLIUはやや足が緩むシーンもあったがうまくまとめ、まずまずの出来であった。GAFUIKは苦手種目であり、ノーミスであったが得点を伸ばせず。そして山本は滞りの全く無いクリーンな演技で14.550とまずまずの得点を挙げた。そして最後の瀬島。最初に入れていたDコンバインがうまくいかず落下。再度試したがそれも落下してしまい、11点台に留まった。予選3位ではあるがここで優勝争いからは脱落してしまった。そして、この時点の順位ではGORBACHEVがまだトップをキープし、跳馬を演技したフランスのAUGIS、ウクライナのPAKHNYUKが2位、3位につけた。山本は4位、瀬島は19位。
第3ローテーション、第1班はつり輪に回り、山本は無難にまとめて14点台をキープ。瀬島は振動系をきれいに決めて、更に最後のかかえ込み新月面の着地を止め、今日のつり輪の最高得点となる14.750を出してあん馬のミスから挽回を開始した。LIUは中水平、上水平で足の位置が十分に上がらず実施減点を出して思うようには点を伸ばせなかった。そしてここで第2班のKUKSENKOVが跳馬で得点を伸ばし、この時点でトップに立った。引き続き跳馬を終えた選手が上位に来る中、山本は6位につけ、瀬島は一つ順位を上げて18位となった。
第4ローテーションは第1班が跳馬に回り、ここでようやく優勝争いの行方がはっきりしだす。山本はドリッグスを予定していたがアカピアンとなってしまい、更にライン減点も出してしまい、予定通りの追い上げにはならなかった。瀬島は更に挽回したいところであったが、ドリッグスでしりもち。二人とも稼ぎどころの跳馬で点を落としてしまった。そして、LIUは対照的にアカピアンをきれいに決めて得点を稼ぎ、GAFUIKはシューフェルトを豪快な捌きで決めて16.050と高得点を出して一気に追い上げた。トップのKUKSENKOVは平行棒で高得点まではいかなかったが、何とかLIUの追い上げをかわしてトップをキープした。GORBACHEVはゆかで14.600を出してLIUに続き3位につけ、上位に留まった。山本はGORBACHEVに続いて4位、そして瀬島はミスがあったものの16位に順位を上げた。
第5ローテーション、予選トップの瀬島は平行棒に回った第1班最初の演技者となった。団体戦は倒立で動くなどして僅かながらミスがあったが今日は目立ったミスも出さず、まずまずの出来であった。そして得点も15.350とここでまた高得点を出した。続いてLIUは得意種目ではあるが、途中で倒立移行で乱れ、更に終末技の屈身ダブルでしりもちをついてしまう大過失。女子に続く個人総合優勝も見えていただけに観客も大きく落胆の声を出していた。GAFUIKは対照的に同じく得意種目であるこの種目できれいにまとめてLIUとの差を一気に縮めた。そして、鉄棒のKUKSENKOVはコバチ、ヤマワキと決めて、最後の新伸身月面も見事に着地を止めて、引き続きトップをキープした。そしてその後に山本の演技。この演技がすごかった。非常に落ち着いて、決めるべきところをしっかりと決め、各倒立のはめ方も非常に丁寧でほとんどミスを見せなかった。そして得点は15.550。得点が表示されると観客席からもどよめきが起こり、順位表示を見るとKUKSENKOVとは0.05差の2位となっており、緊迫した優勝争いに観客席の雰囲気も盛り上がっていた。その山本に続くのが地元のLIU。そして僅差でGAFIUKと続き、あん馬のGORBACHEVが点数を落とした為、KUKSENKOV、山本、LIU、GAFIUKと予選上位者がここで激しい優勝争いを繰り広げる形となった。瀬島は平行棒の追い上げで12位とまた順位を上げた。
いよいよ最終ローテーション、まずLIUが第1班のトップバッターで鉄棒の演技。モズニックで会場を沸かし、終末技に向けて会場も盛り上がったが、伸身新月面の着地は回転不足で大きく前に飛んで手を着いてしまうミス。観客席の大きなため息と共に優勝争いから脱落。そして、GAFUIKは背面系で高難度を入れた構成をきれいに決めた。そして、GAFUIKの演技が終わった直後にKUKSENKOVの演技が始まった。ひねり系のシリーズで始まり、その後は後ろとびひねり伸身前宙転などで高難度を入れ、終末技の出来に注目が集まる。そして・・・後方3回ひねりを実施し、着地は右後ろに弾かれるような状態となり、2歩ほど動いてしまう。GAFUIK、KUKSENKOV共にしばらく採点に時間がかかったが、先にGAFUIKがLIUを上回りトップに立ったものの、数秒後にKUKSENKOVの得点が表示され、14.800でGAFUIKを上回り、トップに立った。そしてその後に山本の演技。得点表示のタイミングが実に見事で、山本はKUKSENKOVの得点を上回ることが出来るか?という会場全体の注目を浴びての演技となった。その演技自体は丁寧に見えたが堅さも感じ取られ、そしてアドラーひねりで流れてしまい、その後の伸身トカチェフが実施できなかった。その後はアドラー1回ひねりからヤマワキを決め、終末技の伸身新月面は着地もふんばって小さな減点に留めた。大過失のない演技にKUKSENKOVの得点を上回るか、点差を知っている観客からも大きな注目を浴びる。そして得点は14.700。Dスコアが6.3となってしまっていた。この得点ではKUKSENKOVに及ばず、KUKSENKOVの優勝が決まった。山本は0.15差という悔しい僅差の2位、そしてGAFIUKが3位となった。上位の順位が確定する中、最終演技者となったのが瀬島。しかし瀬島もコールマンの出来などは団体戦よりよかったものの、構成を落としてしまいDスコアが5.70となって14.400に留まった。瀬島は13位と残念な結果となった。
KUKSENKOVは昨年の世界選手権で見せたその実力を発揮し、団体戦で本来の出来ではなかったものの、見事に挽回を果たして優勝を成し遂げた。山本はギリギリまでKUKSENKOVに迫り、初の世界の舞台で実力をいかんなく発揮した。演技の質とすればKUKSENKOVよりも上であったと思えるくらい美しい体操を見せて、日本の体操のよさをしっかりと見せ付けてくれた。瀬島は残念な結果ではあったが、まだ大学2年生と伸び盛りの選手。今回の経験で更に成長するに違いない。そしてこの二人はこういった国際舞台よりも国内の選考会の方がより厳しい戦いとなる。今回得たものを確実に次のチャンスに生かしてもらい、来年、更に大きな舞台となるロンドン五輪での活躍の姿が見れるように期待したい。