第49回NHK杯男子1日目レポート
5月に行われた全日本個人総合選手権大会の得点の1/2を持ち点として、まず1日目の競技が行われた。
持ち点に従って組分けが行われたため、上位6選手はゆかからのスタートとなった。
一番手の森赳人選手(KONAMI)は、無難に演技をまとめまずまずのスタートを切ったが、続く中瀬卓也選手(徳洲会体操クラブ)は最初の宙返り連続(後方伸身宙返り1回半ひねり~前方伸身宙返り1回半ひねり:予定では2回ひねり?)で場外への大転倒となってしまい、得意のゆかで得点を大きく落とすスタートとなってしまった。
以下、山室光史選手(日本体育大学)、植松鉱治選手(KONAMI)はともに大きなミスなく無難に演技を終えたが、両選手とも着地減点が重なり15点台に乗せることはできなかった。
内村選手は、第3節で両足で前に大きく1歩動いたが、終末の3回ひねりの着地も含め他の着地はほぼ止める素晴らしい実施で15.600を獲得。2位以下との点差をさらに広げる結果となった。
・内村選手の演技構成
後方伸身宙返り1回半ひねり~前方かかえこみ宙返り1回ひねり転(バンローン)、前方かかえこみ宙返り1回ひねり~前方伸身宙返り2回ひねり、後ろとびひねり前方屈身2回宙返りひねり、後方伸身宙返り2回半ひねり~前方伸身宙返り1回半ひねり、フェドルチェンコ、トーマス転、後方伸身宙返り3回ひねり
これまでにあん馬で2回トップの得点をとっている出口諒財選手(日本体育大学)は、そのあん馬からのスタート。
・出口選手の演技構成
逆交差一把手上倒立、Eコンバイン、後ろ移動2/3、マジャール移動、ウーグォニアン、フェドルチェンコ、シバド移動、Eフロップ、ユーリーフェン、逆リヤ倒立3/4ひねり3/3移動下りの演技構成をこの日もミスなく演じきったが惜しくも15点台にはとどかなかった。
第2ローテーションでまたも大きな動きがあった。持ち点上位6選手はあん馬、一番手の中瀬選手はゆかでの失敗を引きずることなく無難に演じきった。
続く山室選手も予定通りの演技構成を大きなミス無く実施。しかし3番手植松選手が前半のトンフェイはうまく実施したものの続くフロップでバランスを崩し落下、その後コンバイン、ウーグォニアンなどなんとか落下せずに乗り切った。ただ、落下以外にも旋回や移動の向きなど実施面でかなり不明確さ・不安定さが感じられた。得点は思いのほか高く、12点台後半を獲得。
内村選手は、前回取り入れたマジャールシュピンデルを抜いた演技構成だった。演技実施は良好で、14.900の高得点を獲得。
2種目を終了し、1位:内村(121.600)、2位:山室(118.112)、3位:植松(117.562)、4位には田中和仁選手が117.125で上がってきた。
第3ローテーション、持ち点上位選手はつり輪、田中選手は平行棒。
このローテーションでは大きな動きはなかった。
つり輪では各選手とも大きな過失はなかったがなかなか15点台に乗せることが出来ない中、山室選手が15.425、中瀬選手が15.150と15点台を獲得。内村選手はわずかに届かず14.925だった。
・山室選手の演技構成は次のとおり
伸腕伸身逆上がり中水平~ナカヤマ~十字倒立、後ろ振りあがり十字倒立、後ろ振りあがり倒立、屈身ヤマワキ~後ろ振りあがり中水平~アザリアン、ほんてん倒立、後方伸身2回宙返り1回ひねり下り(止める)
跳馬の馬場選手は、ラインオーバーはあったもののローチェひねりを成功(今日の実施は後方宙返りの局面が見られなかった。→ドラギュレスク?)
第4ローテーション、持ち点上位選手は跳馬。田中選手は鉄棒。
植松選手はドリッグス、ラインオーバー(-0.10)もあり、得点は15.425。
田中選手はすばらしい実施で後方伸身2回宙返り2回ひねりの着地も見事に止め、上位をキープ。
内村選手は、伸身ユルチェンコ2回半ひねりで着地はわずかに動いたが素晴らしい実施で15.950。
水鳥寿思選手(徳洲会体操クラブ)はドリッグスで着地を見事に止めて15.80。
森選手もドリッグスを跳んだが、着地で前に大きく動き15.350。
中瀬選手はローチェ。高さのある実施だったが、着地動作が少し遅れて前に1歩。膝がマットに着きそうになる着地になったが15.875を獲得。
山室選手はロペスを後ろに1歩の着地にまとめる。観客席から見た印象ではかなり軸ぶれした実施だったが16.425の高得点を獲得。
4種目を終わって、1位:内村(152.475)、2位:山室(150.562)、3位:田中(148.475)、4位:植松(147.212)、5位:中瀬(146.775)、6位:馬場(146.550)
第5ローテーション、持ち点上位選手は平行棒。田中選手はゆか。
平行棒1番手の内村選手は、後方屈身2回宙返り下りの着地は両足で後ろに1歩動いたが、内容は素晴らしく15.375。
他の選手も良好な実施が続き、中瀬選手、山室選手、植松選手が15点台を獲得。特に植松選手は、次のような演技構成で着地も止め、内村選手を上回る15.400を獲得。
・植松選手の演技構成
ホンマ、棒下宙返りひねり倒立、棒下宙返り倒立、屈身ベーレ、チッペルト、ヒーリー支持、ツイスト倒立、Dツイスト、閉脚浮き腰上がり倒立、後方屈身2回宙返り下り
1位:内村(167.850)、2位:山室(165.637)、3位:田中(162.650)、4位:植松(162.612)、5位:中瀬(162.075)、6位:森(161.537)
最終ローテーション、持ち点上位選手は鉄棒。田中選手はあん馬。
水鳥選手は4つの手放し技(アドラー1回ひねり~伸身コスミック、伸身コバチ、コールマン、コバチ)を成功させたが、後方伸身2回宙返り2回ひねり下りで前に大きく1歩。
森選手は、伸身トカチェフ~トカチェフひねり片大逆手の連続を成功させたが、コバチで落下。
中瀬選手は伸身コールマン、コールマン、アドラー1回ひねり~伸身コスミックを成功させ、後方伸身2回宙返り2回ひねり下りの着地も止め15.625を獲得。
4番手山室選手は、アドラー1回ひねり~伸身コスミックを成功、後方伸身2回宙返り2回ひねり下りの着地もまとめたが、得点は伸ばせず14.300。しかし、ここで暫定トップに立つ。
田中選手はあん馬で、順調な演技を続けていたがマジャール移動の最終局面でまさかの落下。結局一時は3位まで上げた順位を6位まで下げて今日の演技を終了。
植松選手は、次のような中身の濃い演技構成を無難にまとめ16.100の高得点を獲得。これで鉄棒では全日本から3連続1位。明日も1位をとれば自動的に世界選手権代表が決定となる。
・植松選手の演技構成
伸身コールマン、リバルコ、アドラーひねり~コバチ、コールマン、アドラー1回ひねり~伸身コスミック、エンドー1回ひねり大逆手、アドラー、後方伸身2回宙返り1回ひねり下り(止める)
最終演技者は、5種目終了時点で2位以下に2点以上の大差をつけている内村選手。
着地こそ惜しくも止まらなかったが、屈伸コバチ、コールマン、アドラー1回ひねり~伸身コスミックなどを大きなミス無くまとめ、15.450を獲得。
1位:内村(183.300)、2位:山室(179.937)、3位:植松(178.712)、4位:中瀬(177.700)、5位:水鳥(176.012)、6位:田中(175.975)
結局、内村選手が圧倒的な強さを発揮し、2位以下に3点以上の大差をつけて、最終日に臨むこととなった。