第5回フューチャーカップ報告

報告者:

■期日:2008年11月25日~12月1日(11月25日国内合宿)
■場所:オーストリア(リンツ)
■監督・コーチ
<監督>山崎隆之(普及部副部長・池谷幸雄体操倶楽部)
<コーチ>
松本忠親(普及部部員・中京ジムナスチッククラブ)、武者真司(三菱養和体操スクール)、小倉雅昭(四天王寺スポーツクラブ)
■参加選手
神本雄也(池谷幸雄体操倶楽部)、井口大輔(中京ジムナスチッククラブ)、神津源一郎(三菱養和体操スクール)、千葉健太(四天王寺スポーツクラブ)
■レポート
<11月25日(火)>
 25日の成田空港での集合が早朝であると言う事もあり、関係者のご配慮により出発前日にナショナルトレーニングセンター(NTC)にて1日調整練習を行う事ができた。NTCでの練習では現地での試合を想定しスピースに近いヤンセンの器具を使用した。選手全員が特に反発力の弱いゆかの調整に苦労していた。
<11月26日(水)>
 朝7時30分にNTCを出発しリンツへは現地時間で夕方6時に到着した。移動時間が約18時間の長旅でこの日は練習を行わなかった。
<11月27日(木)・28日(金)>
 練習は27日がサブ会場、28日は本会場で行われた。選手達は各所属のコーチに従い通し練習を中心に行っていた。神本選手は鉄棒のトカチェフ、井口選手はあん馬の後ろ移動、神津選手はつり輪の伸身2回宙返り下りと、ゆかの前方伸身2回ひねり、千葉選手は跳馬の伸身ツカハラ、鉄棒の伸身2回宙返りに特に時間をかけ調整を行っていた。全体的には、やはり跳ねないスピースのゆかと跳馬の調整に特に苦労していた様に感じた。
 神本選手は海外の試合を何度か経験しており自分のペースで調整を行っていたが、実は腹筋を痛めておりNTCの練習では動きが重く感じられた。だが日を追うごとに調子が上がってきた。他の3人の選手達は外国での試合が初めてで、当初表情に硬さが見られたが徐々に現地の雰囲気や器具にも慣れ、最終的には全員が良い調整練習が出来ていたと思われる。その要因としては神本、井口、両選手のリーダーシップにあり4人全員が打ち解けリラックス出来る環境があったと考えられる。
<11月29日(土)>
 試合当日、午前中はサブ会場練習、午後から2時間程度の本会場練習の後、試合に臨む。
●第1ローテ=あん馬
 1番バッターの千葉選手はリアーから旋回に持ち込む事が出来なかったが、なんとか大きなミス無く通す事が出来た。神津選手もダイナミックな旋回を見せつけ前移動を成功させ通す事が出来た。井口選手は前移動からの後ろ移動で少し馬端に脚をぶつけるも力でねじ伏せ姿勢欠点無く通す事が出来14.000の高得点をマークした。神本選手は前移動~後ろ移動は無難に成功するがセアーひねりでバランスを崩し少し停滞してしまうが通す事が出来た。日本チームは多少のミスはあったものの、全員がまずまずの出来で最高のスタートが切れた。
●第2ローテ=つり輪
 千葉選手は後ろ振りあがり~開脚上水平、ジョナサンなど中技に大きなミスは無かったが下りのかかえ込み2回宙返りで後ろに転んでしまう。神津選手はヤマワキ、後ろ振りあがり~開脚上水平などの出来も良く、伸身2回宙返りも着地を止める完璧な出来であった。井口選手は入りの後ろ振りあがり~上水平でミスを犯し点数が伸びなかった。神本選手はジョナサン~ヤマワキ~振り上がり倒立を完璧に決め、ラストの前方屈身2回宙返りひねりの着地も見事に決め、会場を沸かす出来であった。
●第3ローテ=跳馬
 千葉選手はツカハラ伸身に挑戦したが前に手を付いてしまう。神津選手はツカハラ伸身を雄大に実施し着地を1歩でまとめる。井口選手は伸身カサマツに果敢に挑戦し着地1歩でまとめる。神本選手は伸身ユリチェンコ1回ひねりを着地1歩で抑えた。
●第4ローテ=平行棒
 千葉選手はチッペルトと棒下振出し腕支持で失敗してしまう。神津選手は雄大なチッペルトを決め、ほぼ完璧な演技を行う。井口選手はチッペルト~棒下宙返り~デアミと決めるが車輪で少し前に歩いてしまう。だがラストの後方2回宙返りを1歩でまとめ、まずまずの出来であった。神本選手は棒下宙返り~車輪デアミ~車輪~チッペルト~移行~モイ~ツイスト~デアミと淡々と捌き、ラストのかかえ込み2回宙返りも着地1歩で抑えほぼ完璧な演技を見せた。
●第5ローテ=鉄棒
 千葉選手は初めて使うアドラー~背面車輪を成功させるがラストの伸身2回宙返りで大きく後ろに二歩あるいてしまう。神津選手は無難に演技をこなしラストに抱え込み2回宙返りの着地も決め完璧な演技を行った。井口選手は前方車輪1回ひねり大逆手、エンドー1回ひねり片逆手、シュタルダーひねり大逆手などの中技を決めるがラストの伸身サルトで大きく前に跳び出してしまう。神本選手は離れ技のトカチェフを決めるがリバルコで落下してしまう。だがラストの伸身サルトは1歩でふんばった。
●第6ローテ=ゆか
 千葉選手は後方宙返り1回ひねり、前方宙返り1回ひねりと淡々とこなすがラストの後方宙返り2回ひねりで手を付いてしまう。神津選手はラストの後方2回ひねりでラインオーバーしてしまうが、調整に苦労していた前方伸身宙返り2回ひねりに果敢に挑戦し見事成功させた。井口選手は前方宙返り1回ひねり~前方宙返り1回半ひねり、後方宙返り1回半ひねり~前方宙返りなどの技をこなしラストの後方2回半ひねりも1歩で抑えた。神本選手は後方宙返り2回半ひねり~前方宙返りひねり、後方1回半ひねり~前方宙返り1回ひねりと無難に捌きラストの後方宙返り2回ひねりも1歩で抑えた。
■全体の感想
 今回、日本チームの成績は団体で優勝。また各クラスでの個人総合も優勝もしくは準優勝と素晴しい結果であった。団体で優勝できた要因はU-18クラスで優勝の神本選手、U-16クラスで優勝の井口選手の頑張りは言うまでもないが、全種目2番手を務めた神津選手が、1番手の千葉選手の失敗を絶えず素晴しい演技で払拭し、日本チームを良い雰囲気に導いたことも大きかった。数多く失敗した千葉選手にとっては、ほろ苦い初の海外試合になったが、短い期間でよくぞここまでの自由演技が組めるようになったと、その努力を認めたい。そして彼の無限の可能性を感じられた試合でもあった。今後、選手達にはこの試合で経験し、感じ、学んだことを様々なことに活かしてもらいたいと考える。
 最後になりましたが日本体操協会の皆様、また各所属の先生ならびに関係者の皆様に心から感謝の意を表し報告とさせて頂きます。