体操競技W杯決勝現地レポート
1975年に第1回大会が行われたワールドカップは、一時中断を挟み、種目別の大会として復活したが、ランキングポイント合計による決勝大会という方式はこのマドリード大会で最後となる。スペインでは1977年にオビエドで第2回大会が行われており、31年ぶりの開催となる。
会場の「テレフォニカ・アリーナ・マドリード」は、市内中心部より地下鉄で20分ほど、小高い丘に位置しており、市内よりも温度が低く、会場内は暖房を入れているがひんやりとしている。会場自体はさほど広くなく、男子あん馬、つり輪、女子平均台付近の観客席は2階席以上しかない。よって若干の圧迫感を感じた。その他でいえば、四隅にオーロラビジョンがあり、観客席のどこからでも情報が見れる状態となっていた。
日本選手団は10日に現地到着、11日から練習を開始し、今日で2日目となる。器具はGYMNOVA製で、ここ数年の世界選手権、五輪で使われているものである。
今日のポディウム練習は、午前中に大会2日目の種目、午後に大会1日目の種目で行われた。世界選手権であればローテが組まれて、本番さながらの試技順通りに練習が行われているが、今大会は種目別のみの大会であり、各選手、自由に練習を行っていた。選手からは来て間もない状態で、まだ器具の感触に関してもまだはっきりと掴みきれてないという回答が多かったが、各選手とも、特に乱れることなくいつも通りの練習ができたようだ。今大会で現役最後の競技会参加となる冨田洋之選手も手ごたえのある練習を消化した。
森泉団長は、「順位は二の次で、日本の美しい体操をしっかりとアピールし、各自が自分の演技をしっかり行うことを目標としたい。そうすれば結果はおのずとついてくる」と話し、来年以降の大会に向けて、美しい日本チームの印象づけを重要なポイントとすることを強調した。その意味で、今回参加の4選手は、それをアピールするに十分な選手ばかりであり、その目標達成はもちろんのこと、結果も期待できる。
日本選手以外では中国女子が北京五輪団体金メダルチームのうち、4選手を送りこみ、相変わらず難しい構成で挑んでくる見込み。Cheng Fei選手やHe Kexin選手が実施レベルも含めてトップクラスの演技を見せてくれるであろう。また、男子では五輪には参加できなかったVan Gelder選手(オランダ)、Pegan選手(スロベニア)、Rizzo選手(オーストラリア)ら順調な調整を行っていた。
今大会、有資格者が次々に棄権し、世界ランキングとしては20位近くの選手も出場し、大会の盛り上がりを懸念する声もあがっていた。しかし、ポイント対象競技会への出場回数によってランキングの差も生まれており、単純にランキングがその実力を示しているとは言い難い。実際に、ランキング下位でも、練習において会場内の多くの関係者を沸かせた選手もいた。ある意味、棄権者が続出したにもかかわらず、年内最後のもっとも白熱した争いにしたいという開催地の願いが叶うかもしれない。