北京オリンピック種目別決勝1日目レポ
男子ゆか
トップバッターのゴロツコフ選手(ロシア)が、F難度の後方伸身2回宙返り2回ひねりの着地をピタリときめるなどすばらしい演技で15.725(Aスコア6.50)を獲得。レベルの高いメダル争いが期待される出だしとなった。
しかし、2番手のドラギュレスク選手(ルーマニア)が入り技の後方伸身2回宙返り1回ひねり~前方かかえこみ宙返り転で回転しすぎて背中から落ちるような実施となってしまい、次のテンポ宙返り~後方伸身宙返り2回半ひねり~前方かかえこみ宙返りでしりもち。
さらに、続くヒポリト選手(ブラジル)も、前半は高難度の宙返り連続を次々ときめていったが、終末技の後ろとびひねり前方かかえこみ2回宙返りで痛恨のしりもち。
この種目のスペシャリストが立て続けにメダル圏外に脱落。
4番手のハンビューヘン選手(ドイツ)は、入り技の後方伸身2回宙返り2回ひねり、終末技の後方かかえこみ2回宙返り1回ひねりの着地を止めることができなかったが、無難にまとめ15.650(6.50)。ゴロツコフ選手には及ばず暫定2位。
5番手は中国の期待を背負う、この種目のスペシャリスト雛凱(チョウカイ)選手、宙返り連続を次々ときめ、終末技の後方かかえこみ2回宙返り1回ひねりこそ少し動いてしまったが、すばらしい実施で16.050(6.70)を獲得。トップに立つ。
続いて自身3個目のメダルをねらう内村選手が登場。第1節の宙返り3連続を見事にきめ好調な出だしに見えたが、第2節で一つ目の宙返りが少し流れてしまい、予定の3連続が2連続になってしまった。その後は予定の演技をすばらしい実施でまとめたが、演技価値点を下げてしまったことが致命傷となり、得点は15.575(6.30)。暫定4位で、残念ながらメダル獲得はならなかった。
7番手シャピロフ選手(イスラエル)は、入り技で後方伸身2回ひねり後方屈身2回宙返り(コリヴァノフ)の着地をきめるなど、演技中盤まで長身をいかした雄大で正確な演技で観衆を魅了したが、フェドルチェンコで大きくくずれ、さらに終末技の後ろとびひねり前方かかえこみ2回宙返りでしりもちをついてしまった。
最終演技者は、スペインのデファー選手。後方伸身2回宙返り1回ひねり~前方かかえこみ宙返り転を見事にきめると、宙返り連続を次々ときめ、終末技の後方伸身2回宙返りの着地も止め、15.775(6.50)を獲得。
1位:雛凱(中国)、2位:デファー(スペイン)、3位:ゴロツコフ(ロシア)、内村選手は5位という結果となった。
女子跳馬
日本国内ではまだ実施されていない価値点6.00以上のとび方を6選手が実施した。そのうち3選手は価値点6.00以上の技を2つ揃えていた。
サクラモネ選手(アメリカ)は、1本目に前転とび前方伸身宙返り1回半ひねり(6.30)を実施、若干屈身気味の姿勢が見え、両足を少し後ろにずらす着地となり15.750。2本目は、伸身ユルチェンコ2回ひねり(5.80)で両足でわずかに動く着地となったものの非常に美しい姿勢で高さのある雄大な実施を見せ、15.325。平均15.537で後続の得点を待つ。
続いて、この種目優勝候補筆頭の中国の程菲(チェンフェイ)選手は、1本目に伸身ユルチェンコ2回半ひねり(6.50)を非常に高い位置でほぼ着地を止めて16.075の高得点を獲得。しかし2本目のオリジナル技、後ろとびひねり前方伸身宙返り1回半ひねり(6.50)で明らかな失速。膝をついてしまい得点は15.050。しかし、平均15.562でサクラモネ選手を上回り暫定1位。
続くケスリン選手(カナダ)は、1本目にAスコア6.30の前転とび前方伸身宙返り1回半ひねりを実施したが、着地の先取りが低くおじぎをしたような姿勢の着地となってしまい、得点は15.400。2本目は伸身ユルチェンコ1回半ひねり(5.50)で得点は伸びず、暫定3位。
パブロワ選手(ロシア)は、1本目に伸身ユルチェンコ2回半ひねりを実施、少し腰砕けの着地となってしまい、右足を後ろに大きく1歩。さらにラインオーバーもあり15.625。2本目には、後ろとびひねり前転とび前方伸身宙返りひねり。まずまずの実施に見えたが、なんと0.00の判定。
33歳のチュソビチナ選手(ドイツ)。1本目は前転とび前方伸身宙返り1回半ひねり(6.30)、脚のばらつきが目立ったが雄大な実施で15.725。2本目は伸身カサマツとび1回ひねり(6.00)、第1空中局面の脚割れ、着地の両足でのはずみは見えたが、やはり雄大な実施で15.425を獲得。平均15.575で、程菲選手をかわして暫定1位。
つづくホン・ウンジョン選手(北朝鮮)は、程菲選手と同じくAスコア6.50のとび方を2本実施。1本目:伸身ユルチェンコ2回半ひねり、少しひねり不足で前に大きく1歩、さらにラインオーバーがあり、15.550。2本目:後ろとびひねり前転とび前方伸身宙返り1回半ひねり、右に小さく2歩動いたがまずまずまとめる。15.725が出ればチュゾビチナにならぶところ、得点は15.750。平均15.650でトップ。
その後、バルボサ選手(ブラジル)、ジョヴァンニーニ選手(イタリア)は、いずれも平均点を15点台にのせることができず、メダル獲得はできなかった。
結局、ホン・ウンジョン選手が優勝し北朝鮮に女子体操競技史上初の金メダルをもたらした。
余談ではあるが、横浜文化体育館でおこなわれていた全日本ジュニア体操競技選手権では、種目別跳馬の上位5選手が実施したのが伸身ユルチェンコ2回ひねり(Aスコア5.80)だった。近い将来には、日本国内の競技会でもAスコア6.00を超えるとび方が当たり前のようにみられるようになることを期待したい。
男子あん馬
トップバッターは個人総合金メダルの楊威(ヤン・ウェイ)選手。落下こそなく無難に演技を続行したが、Eフロップ、フェドルチェンコで明らかな脚割れが見られ、さらに終末技の倒立で明らかな停滞。かなり厳しいBスコアが予想されたが、得点は15.450(6.20)。
2番手:冨田選手。個人総合でのつり輪のアクシデントの影響が心配されたが、演技全体を通してほとんどふらつきもない非常に安定した美し演技を披露してくれた。高いBスコアが期待されたが、得点は15.375(6.10)。
3番手:キム・ジフン(韓国)。落下などの大きな過失はなかったものの、終始リズムに乗り切れない堅い動きで、15.175(6.10)。
4番手:優勝候補筆頭の肖欽(シャオ・チン)選手。肖選手にしては珍しくフェドルチェンコでバランスをくずし、明らかな脚割れが見られるなど完璧な実施ではなかったが、質の高い旋回が評価され得点は15.875(6.40)。16点台に乗せることはできなかったが、高得点を獲得、トップに立つ。
5番手:アーティモフ選手(アメリカ)。演技後半に開脚旋回倒立を多用する独特な演技構成だったが、見せ場の開脚旋回倒立から旋回におろすところで落下。
6番手:ルイス・スミス(イギリス)。長身を生かした雄大な演技だったが、Eコンバイン、Eフロップで明らかな脚割れ、さらにウー・グォニアンではあわや落下という大きなバランスのくずれを大きく脚を開いて立て直すなど、終始バタバタした印象の演技でBスコアは相当低いだろうと思われた。しかし、表示された得点は15.725(6.70)。この演技に9点台のBスコア、これを高すぎると思ったのは私だけだろうか。
7番手:フェンテスブスタマンテ選手(ベネズエラ)。予選2位で決勝進出。上位入賞の可能性があったが、ウー・グォニアンでバランスをくずし、フェドルチェンコで落下。
最終演技者:ウーデ(クロアチア)。各選手が細かなミスを出していた中で、冨田選手同様安定した実施だった。両把手間でフェドルチェンコを実施するなど、アピールする部分もあり、得点は15.725(6.40)。スミス選手と同点2位となったが、タイブレーク制度が適用され、Aスコアが低いウーデ選手が2位、スミス選手が3位となった。冨田選手は5位、最終日の鉄棒にメダル獲得を期待したい。
女子ゆか
トップバッターは、昨年の世界選手権この種目のチャンピオン、ジョンソン選手(アメリカ)、第2節のテンポ~後方伸身宙返りで動いた以外は、入りの後方かかえこみ2回宙返り2回ひねり、宙返り連続、終末の後方かかえこみ2回宙返り1回ひねりなどすべての着地をきめるほぼ完璧な出来。実施も非常にパワフルだった。得点は15.500(6.40)
2番手:カラマネンコ選手(ロシア)。非常に優雅な演技だったが、ターン系統でふらつき、終末技の後方屈身2回宙返りで後ろに体重がかかってしまい大きく1歩。得点は15.025(6.10)でジョンソン選手に及ばず。
3番手:チャン・ユヤン選手(中国)。非常に表情豊かな演技で観客を魅了したが、第1節の後方伸身宙返り3回ひねりでラインオーバーがあり、得点は15.350(6.30)。ジョンソン選手に次いで暫定2位。
4番手:ドス・サントス選手(ブラジル)。非常に高さのある宙返りで観客を魅了したが、ありあまるバネを制御しきれず、着地でことごとく大きく弾んでしまい、終盤に2回のラインオーバー。得点は14.975(6.4)この時点でメダル獲得ならず。
5番手:パブロワ選手(ロシア)。先に行われた跳馬の2本目で痛恨の0点。雪辱をかけてのゆかだったが、終末技の後方屈身2回宙返りでつまってしまい、お手つき。得点は14.125(5.80)。
6番手:程菲(チェン・フェイ)選手(中国)。跳馬で逃した金メダル獲得をめざして非常に気合いの入った演技だった。前半の後方かかえこみ2回宙返り2回ひねり、後方屈身2回宙返り1回ひねり、テンポ~後方伸身宙返り3回ひねりとつぎつぎに大技の着地をきめていったが、力が入りすぎたのか宙返り連続で痛恨のしりもち。得点は14.550(6.30)でこの種目のメダル獲得はならず。
7番手:個人総合チャピオンのリューキン選手(アメリカ)。第1節に前方伸身宙返り1回ひねり~前方伸身宙返り2回ひねり、第2節に前方かかえこみ2回宙返りを取り入れた独特の構成で、体操系の運動も非常に優雅にこなし、終末技の後方伸身宙返り2回半ひねりで前に1歩動いた以外はほぼ完璧な実施だった。得点は15.425(6.20)でチャン・ユヤン選手を抜いて暫定2位。
最終演技者:イズバシャ選手(ルーマニア)。後方屈身2回宙返り1回ひねり、後方かかえこみ2回宙返り1回ひねり、2本の宙返り連続、終末技の後方伸身宙返り3回ひねり、すべての着地をほぼまとめた。途中の3回ターンで少しふらついたが、ほぼ完璧な実施で得点は15.650(6.50)。動きの美しさ、タンブリングの実施も正確で余裕があり、ゆかのチャンピオンとなるにふさわしい演技だった。
1位:イズバシャ選手、2位:ジョンソン選手、3位:リューキン選手